乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

131話 大爆発

 フレッドとアリシアさんの闇魔法が激突した。
 それは周囲に大きな衝撃と多量の闇の瘴気を振り撒いた。
 二人はダメージを受け倒れ込んだのだが、よろめきながらも再び立ち上がった。

「どうして? 二人共、そんなにボロボロになってまで……」

「……イザベラさんに心配していただくようなことではありません」

「わたしはただ、イザベラ様との未来を掴むために戦っているだけです。だからどうか気にせず、ここから離れて安全なところで見ていてください」

 二人はそう言って、再び睨み合う。
 そして、闇の魔力を練り上げていく。

「あなた達、また……」

 どうしよう?
 これ以上、二人に傷付いてほしくない。
 でも、今さら言葉では止まってくれないだろう。

「くらえっ! これが僕の全力全開の闇魔法だぁーっ!! 【ブラック・インフェルノォッ】!!!」

「わたしの渾身の闇魔法を受けてみなさい! 【ダークネス・ノヴァァッ】!!」

 二人の放った魔法が近づいていく。
 これは、今度こそマズい。
 どうにかしないと。
 私はそんなことを考える前に身体を動かしていた。
 私は二人の間に出る。

「イザベラさん!!??」

「イザベラ様っ!!??」

 二人が驚きに目を見開くが、一度放った闇魔法は引っ込んだりはしない。
 私は左手をフレッドに、右手をアリシアさんへ向けて、光魔法を繰り出す。

「聖なる光の加護よ、我に守れ! 【セイクリッド・ホーリーフィールド】!!」

 私の全身を光が包み込む。
 これで闇属性の魔法は完全に無効化されるはずだ。
 ――無事に発動していれば、だけれど。

「うう……あああぁっ!!!」

 私は思わず悲鳴を上げる。
 やはり、私なんかの付け焼き刃の光魔法では無効化しきれなかった。
 凄まじい痛みが私を襲う。
 まるで心臓を直接握り潰されているかのような、頭の中をスプーンでかき回されているような、そんな感覚。
 あまりの激痛に意識を失いそうになるが、歯を食い縛って耐える。
 それでも、いつまで持つか分からない。

「イザベラさん! なぜそのようなことを!! くっ、すぐに闇魔法を抑えて――」

「い、今助けますから! わたしの光魔法で――」

 二人が焦った様子で、それぞれ対処しようとする。
 だけれど、間に合わない。
 二人から放たれた膨大な闇の魔力は、私の光魔法でほんの少しだけ弱められたものの、そのままぶつかり合う。

「う……あ……」

 マズい。
 思っていた以上にダメージが大きい。
 意識が朦朧としてくる。
 焦り顔の二人、そして――

「イザベラ! ぐっ、一足遅かったか……」

「もう少し持ちこたえてくれ、イザベラ嬢!」

「私の氷魔法で何とかします!」

 いつの間にか駆け付けていたエドワード殿下、カイン、オスカー。
 彼らが視界の片隅に映るが、何を言っているのか聞き取れない。

(このままじゃ、本当にヤバいかも……)

 身を挺して闇魔法の衝突を抑える作戦は無理があったか。
 私は薄れゆく意識の中、自分の無力さを嘆いた。
 そして――
 ドゴオオオオンン!!!!
 激しい轟音が鳴り響く。
 拮抗した多量の闇の魔力が大爆発を起こし、辺り一面を吹き飛ばす。

(みん……な……)

 爆風によって飛ばされた私は、そこで意識を失った。
 その身を闇の瘴気に侵されながら……。



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