乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

122話 同性愛と近親相姦

 アリシアさんとフレッドが罵り合っている。

(冷静に考えて、同性愛と近親相姦なら、どっちの方が受け入れられやすいのかしら?)

 私はつい、そんなことを考えてしまう。
 近世の地球では、どちらも禁忌で受け入れられがたい嗜好だった。
 現代の地球では、同性愛は社会権を確立しつつあったが、近親相姦はご法度だ。

(同性愛者が幸せに暮らす上での最大の障害は、子供ができないことかしら?)

 子供ができないことを受け入れさえできれば、後は特に障害はない気もする。
 養子を迎え入れるという選択肢もあるしね。
 それに対し、近親相姦では一応は子供をつくれる。
 だが、遺伝上のリスクは跳ね上がる。

(私もあまり詳しいわけではないけどね……)

 この世界でそこまで研究が進められているとは思えない。
 ただ、やはり本能的に近親相姦は本能的に避けられているのだと思う。
 ……なんて、私が現実逃避気味に思考を飛ばしている間にも、二人の口論は続いていた。

「……分かりませんか? わたしとイザベラ様の間には、深い絆があるのです」

「ふん。それはせいぜい友情のことだろう? 同性から愛情を向けられるなんて、イザベラさんもいい迷惑だよ」

「いいえ。イザベラ様はわたしのことが好きなんです! あなたこそ、いい年して姉に執着するのはよしなさい! そういうのをシスコンっていうらしいですよ!」

「はぁっ!? ぼ、僕はシスコンなんかじゃない!!」

 アリシアさんとフレッドの言い争いはヒートアップしていた。
 二人とも顔が真っ赤になっている。
 そして、ついに二人は武力行使に出た。

「死ねえええぇっ! 汚らしい男め!!」

「くたばれっ! この変態女が!!」

 アリシアさんとフレッドの攻撃魔法がぶつかり合う。
 バチッ!!

「きゃああっ!?」

「ぐわああぁっ!?」

 二人が同時に吹き飛ばされる。
 アリシアさんは尻もちをついて倒れていた。
 一方、フレッドは壁に叩きつけられている。
 これで終わりなら良かったのだけれど、二人はすぐに立ち上がる。
 私はそんな二人の間に入り、両手を広げた。

「もうやめて!!」

 私の制止の声に、二人は動きを止める。

「……イザベラ様?」

「……イザベラさん?」

 アリシアさんとフレッドは止まってくれた。
 だけど、練り上げた魔力は手放していない。
 本当に、ただ一時停止をしただけだ。
 ここからが本当の説得だ。
 二人は、闇の瘴気に侵されて、感情や魔力が暴走状態にある。
 そんな二人を止めるには、適当な言葉だけではダメなのだ。
 しっかりとした理由が必要だ。
 私は頭を回転させて考え始めるのだった。

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