乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

70話 聖女のような慈悲深さ

「イザベラさんがこの魔獣を討伐したらしいぞ!」

「さすが、昨年度の主席合格者だ!」

「二年生になった今も、ずっと成績トップを独走してるだけあるわね」

「カッコイイー!!」

 生徒たちが口々に褒め称える。
 ちょっと待て。
 どうしてそうなった?
 私は慌てて否定しようとする。
 だが、それよりも先に、オスカーが話を続けた。

「私は魔獣の動きを止めるために氷魔法を使いました。ですが、それだけでは討伐には不十分。イザベラ殿は、魔獣を倒すための追加攻撃を行いました。それがこれです」

 そう言って、彼は魔獣の頭部を指し示した。
 いや、正確に言えば頭があった場所か。
 魔獣の首から上には何もない。
 私が切り飛ばしたからだ。

「「うおぉぉぉっ!!!」」

 盛り上がる一同。

「まさか……首を吹き飛ばすほどの剣技をお持ちだとは……」

「あの細腕からは想像できない力だな」

「あんな華奢な身体のどこに、それほどの力が秘められているのかしら……」

 何故そんなにあっさり信じるのか。
 もっと疑ってくれてもいいんだよ?

「イザベラ殿の一撃は見事でした。首を一太刀ではねる。まるで聖女のような慈悲深さを感じさせられました」

 オスカーが爽やかな笑みを浮かべながら、そんなことを言う。
 何だそれは?
 私はただ、無我夢中で剣を振るっていただけだ。
 そこに聖性など欠片もない。
 オスカーは私を持ち上げ過ぎだ。
 やめてくれ。
 恥ずかしくて穴があったら入りたい気分になる。

「イザベラさん、凄いですわね」

「最高です……」

「イザベラ様、抱いてぇ……」

 女子生徒達の黄色い声援が聞こえる。
 おいコラ、最後のヤツ。
 お前は後で説教だからな。
 私を一体なんだと思っているのか。
 もうダメだ。
 早く何とかしないと……。

「オスカー様は大げさですわ。私はトドメを刺しただけ。その前の、オスカー様の氷魔法による拘束が完璧だったので、スムーズにトドメを刺せたんです。それに、アリシアさんの光魔法によるサポートも素晴らしいものでした。お二人がいなければ、魔獣を倒すことはできなかったでしょう」

 私は冷静に分析し、オスカーとアリシアさんに手柄を押し付ける発言をする。

「イザベラ殿……」

「イザベラ様ぁ……」

 オスカーとアリシアは感動に打ち震えている様子である。
 よし、これでどうにかなったはずだ。
 魔獣を率先して討伐したなんて広まったら、淑女としてマズイからね。
 私の名誉は守られた。
 一件落着である。
 ……一件落着だよね?
 オスカーとアリシアさん、頼むからこれ以上余計なこと言わないでくれよ。
 私は心の内で祈るような気持ちになっていたのだった。

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