乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

58話 ティータイム

「ふう。これぐらいで十分かしらね」

 私達は、大量の薬草を確保することに成功した。

「はい、イザベラ殿。この量があれば、十分な評価を得ることができるでしょう」

「イザベラ様なら、当然の結果です。わたしも微力を尽くした甲斐がありました」

 オスカーとアリシアさんは満足げだ。
 アリシアさんは謙遜しているが、私よりも彼女の方が多くの素材を確保している。
 彼女の才能を実感させられた。

「さあ、そろそろ帰りましょうか?」

 私はそう提案する。

「いえ、時間までは少々早いでしょう。もちろん早めに帰ってもよろしいのですが、実地訓練の評価に時間は関係がなかったはずです」

「そうですが、二人共少し疲れているでしょう? 無理はよくないですわ」

「わたしは平気です。まだまだ動けますよ!」

 アリシアさんが元気よく答える。
 確かに、彼女はまだ余裕がありそうだ。
 やっぱり『ドララ』の主人公だけあって、各種の能力に優れているんだなあ。
 もちろん私も『覇気』の応用で特に疲れてはいない。
 でも、この調子だと卒業までには追い抜かれているかもしれないね。

「ふふふ。こんなこともあろうかと、お嬢様方には疲労回復効果のあるハーブティーを用意させていただきました」

 オスカーは、カバンの中からお茶の入った水筒を取り出した。

「まあっ! さすがはオスカー様ですね!」

「恐れ入ります。さあさ、こちらへどうぞ。日陰になっているところがありますゆえ、そちらで一息つきましょう」

「気が利きますね。行きましょう、イザベラ様!」

 アリシアさんに手を引かれて、私は木陰へと移動する。
 そして、オスカーが用意したお茶を堪能した。

「はあ。美味しかったわ。ありがとうございます、オスカー様」

「……ありがとうございます。とても癒されました」

 私に続いて、アリシアさんもオスカーへお礼を言う。
 少しだけ馴染んできたかな?
 なぜか男性陣に対してぶっきらぼうな彼女だけれど、悪い娘じゃないんだ。
 この調子で打ち解けてくれると私も嬉しい。
 ……バッドエンド回避には、もしかしたら今のままの方がいいのかもしれないけれど。
 そこまでは、計算し切れない。
 なるようになるさ。

「恐縮です。それでは、もうしばらくの間、ゆっくりしましょう」

「ええ」

「はい」

 私とアリシアさんは返事をする。
 やるべきことを終えた状態で、緑豊かな森でティータイム。
 優雅な時間だなぁ。
 ……この時の私は、そう呑気に構えていた。
 まさか、あんなことになるなんて、夢にも思っていなかったのである。

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