悪役令嬢にはブラック企業で働いてもらいます
いつもの仕事をしてもらいます
「フゥー、やっと終わったわね」
「はい、二人でやると早く終わりますね。明日もよろしくお願いします」
「...明日もやるのね」
「毎日ですよ」
...ほんとやになるわこのブラック企業。
タイムカードは勿論本来の出勤時間になったら。残業しても残業代が出ないから押しても押さなくても意味ないんだけど。
出勤すると、ニコニコとドS悪魔が笑っていた。
「ちゃんとやってきたようだね」
「仕方ないでしょ?私だってやりたくないわよ」
「まぁまぁ、明日からも6時起床頑張ってくださいね!」
爽やかな笑顔で微笑む総司に眠気で誰でもいいから殴りたいくらいイライラがピークのあたしはうっかり拳が出そうだった。
次の日もけたたましい目覚ましが鳴り、何故か部屋にいる総司に叩き起こされトイレ掃除に向かう。
昨日のようにロッカーに松下がいた。
「おはようございます、溝沼さん」
昨日とは少し違い、今日はおどおどではなく、嬉しそうに挨拶された。
「えぇ、おはよう...ふぁー」
思いっきりあくびをするが、隠そうとも我慢しようともしなかった。それができないくらいあたしは朝が苦手で、朝早く起きることが嫌いだった。
「眠そうですね」
「朝早く起きるのは嫌いなの」
「私も、朝は苦手です...学校に行かなくてはいけないし、会社に行かなくてはいけないし。朝なんて、来なければいいのにって、思います」
来なければいいのに、という言葉に力を込めた松下に見向きもせず、
「何言ってんのよ。朝が来なかったら、明日が来ないじゃない」
地獄行きはごめんなの。
さっさと一年以内に条件っていうのをクリアして、こんな場所からも、地獄からもおさらばしたいわ。
「...溝沼さんは強いですね」
「強いとか関係ないわよ」
「あの...溝沼さん」
松下は、意を決したように私を真っ直ぐ見た。
「私...実は...」
でもすぐに俯いた松下は、下唇を強く噛んだ後私に向き直って、
「やっぱり、なんでもありません」
にっこりと微笑んで、私にくるりと背を向けてさっさと扉から出て行った。
「さっきの何だったのよ」
問いただしても、松下はなんでもないですよ。と微笑むばかり。
変なやつ。
他の奴等が出勤してきた時も、
「何よ!気になるじゃない!」
松下に付いて回って聞いたけれど、松下は曖昧に笑顔を浮かべるばかり。
「まつ」
「松下くん、ちょっといつもの頼みたいんだけど」
ひょろっとしたちょび髭の、男と女で態度が全然違うって嫌われている上司の貝川が松下にひょいひょいと手招きした。
松下は、ほぼ毎日こいつから「いつもの」と言われて仕事をふられている。
新入社員を鍛えるためだと言っていたけれど、私にも何かしら仕事をふってくるようになるのかしら。
松下は私を真っ直ぐ見て、
「行ってきます溝沼さん」
伏せ目がちに早口に、でもなんだか言葉に嫌に違和感を感じた。
行ってきます、なんて今まで言われたことなかったんだけど?
何よ、松下のやつ気味が悪いわね。
「あれ、溝沼さんはお呼びじゃないでしょう」
ドS悪魔がこちらを見ずに言ったが、私は立ち上がっていた。
「ちょっとトイレよトイレ」
「はい、二人でやると早く終わりますね。明日もよろしくお願いします」
「...明日もやるのね」
「毎日ですよ」
...ほんとやになるわこのブラック企業。
タイムカードは勿論本来の出勤時間になったら。残業しても残業代が出ないから押しても押さなくても意味ないんだけど。
出勤すると、ニコニコとドS悪魔が笑っていた。
「ちゃんとやってきたようだね」
「仕方ないでしょ?私だってやりたくないわよ」
「まぁまぁ、明日からも6時起床頑張ってくださいね!」
爽やかな笑顔で微笑む総司に眠気で誰でもいいから殴りたいくらいイライラがピークのあたしはうっかり拳が出そうだった。
次の日もけたたましい目覚ましが鳴り、何故か部屋にいる総司に叩き起こされトイレ掃除に向かう。
昨日のようにロッカーに松下がいた。
「おはようございます、溝沼さん」
昨日とは少し違い、今日はおどおどではなく、嬉しそうに挨拶された。
「えぇ、おはよう...ふぁー」
思いっきりあくびをするが、隠そうとも我慢しようともしなかった。それができないくらいあたしは朝が苦手で、朝早く起きることが嫌いだった。
「眠そうですね」
「朝早く起きるのは嫌いなの」
「私も、朝は苦手です...学校に行かなくてはいけないし、会社に行かなくてはいけないし。朝なんて、来なければいいのにって、思います」
来なければいいのに、という言葉に力を込めた松下に見向きもせず、
「何言ってんのよ。朝が来なかったら、明日が来ないじゃない」
地獄行きはごめんなの。
さっさと一年以内に条件っていうのをクリアして、こんな場所からも、地獄からもおさらばしたいわ。
「...溝沼さんは強いですね」
「強いとか関係ないわよ」
「あの...溝沼さん」
松下は、意を決したように私を真っ直ぐ見た。
「私...実は...」
でもすぐに俯いた松下は、下唇を強く噛んだ後私に向き直って、
「やっぱり、なんでもありません」
にっこりと微笑んで、私にくるりと背を向けてさっさと扉から出て行った。
「さっきの何だったのよ」
問いただしても、松下はなんでもないですよ。と微笑むばかり。
変なやつ。
他の奴等が出勤してきた時も、
「何よ!気になるじゃない!」
松下に付いて回って聞いたけれど、松下は曖昧に笑顔を浮かべるばかり。
「まつ」
「松下くん、ちょっといつもの頼みたいんだけど」
ひょろっとしたちょび髭の、男と女で態度が全然違うって嫌われている上司の貝川が松下にひょいひょいと手招きした。
松下は、ほぼ毎日こいつから「いつもの」と言われて仕事をふられている。
新入社員を鍛えるためだと言っていたけれど、私にも何かしら仕事をふってくるようになるのかしら。
松下は私を真っ直ぐ見て、
「行ってきます溝沼さん」
伏せ目がちに早口に、でもなんだか言葉に嫌に違和感を感じた。
行ってきます、なんて今まで言われたことなかったんだけど?
何よ、松下のやつ気味が悪いわね。
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「ちょっとトイレよトイレ」
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