婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
王子4
何なのだ?
キャサリンと婚約破棄したら信用問題に発展しただと?
「……そんなバカな話があるものか」
アリスを選んだからといって評判が落ちるはずがないだろう。
僕が誰を婚約者に選ぼうが他国には関係ない事だ!
キャサリンの知り合いだからか?
「そうか!分かったぞ!キャサリンだ!」
全ての元凶は元婚約者だ。
そうに違いない。
「キャサリンが僕たちに嫉妬して他国に悪評をばら撒いているんだ。間違いない!なんて陰湿な女だ!」
「……何処をどう解釈すればそのような考えになるのか分かりません」
「何を言っている!キャサリンはアリスを虐めていたんだぞ?」
「そのような事実はありません」
「学園で虐めにあっていただろう!」
同じクラスでもあったアレックスとヴィクターが知らないはずがない。
「一応、お聞きしますが……一体どのような虐めを受けていたと仰るのですか?」
「アリスを無視したり仲間外れにしたり嫌味を言ってきた!」
「殿下、具体的に仰ってください」
「アリスだけ茶会にもパーティーにも誘われなかった!キャサリンの指示があったはずだ!」
「主催者側が招待客を選ぶのです。各家によって招待する客層が違います。家にとって有益と判断した人物に招待状を送るのは当然の事ではないでしょうか?」
「アリスは公爵令嬢だ!」
「名ばかりの公爵令嬢を招待した処で意味はありません」
「アリスはブロワ家の養子に入っている!」
「養子は実子には敵いません。しかもアリス嬢は普通の養子縁組でしかありません」
はぁ!?
養子に普通も何もないだろう!?
「殿下の御様子からして御存知ないとお見受け致しますので説明させていただきます。我が国では一般的な養子縁組の他に特別養子縁組が存在します。特別養子縁組は実子同様の権利を有するもので、財産分与の権利もその家の責任も受け継ぐ資格があります。特に家の跡取りが途絶えた場合に分家などから養子を貰い正式な後継者にするために使われる事が多いですね。一方で、一般的な養子縁組にはそのような法的権利は有しません。あくまでも家に入っただけの存在です。この場合、養子本人が成人すれば自動的に家から切り離されるシステムになっております。そのため、親を失った子供の後見人が取るケースが多いのです。子供が成長するまで面倒をみる事を国に承認してもらうための法的処置とも取れます」
「……どういうことだ?」
「アリス嬢はこの一般的な養子縁組を受けておりますので成人後は公爵家から離れる事になります」
「それは…つまり……」
「元は男爵令嬢だとお聞きしておりますので、成人後はそれに戻る事になります。アリス嬢の実家であるランカー男爵家は跡継ぎが決まっておりませんので、法的手続きをすればアリス嬢がランカー男爵家の跡継ぎという事になります」
「……女性の爵位継承は認められていないだろう?」
「はい。ですから婿を迎えなければなりません。アリス嬢の夫君になる相手がランカー男爵を名乗る事になりますから。因みに、ランカー男爵家の爵位は国で預かっている状態ですので手続きはお早めになさった方が宜しいかと存じます。そういう訳でして、いずれ男爵家に戻る予定のアリス嬢を高位貴族の令嬢が茶会に招待するメリットは全くありません」
「……そうか」
「殿下は他の令嬢からアリス嬢が茶会にもパーティーにも呼ばれないと訴えられましたが、未成年の令嬢が個人的に招待状を送る事はできません。家の女主人の許可が要りますので勝手な振る舞いは出来ないのです」
確かにアレックスの言う通りだ。
学生でしかない令嬢たちが家に無断でアリスを招待する事など出来る訳がなかったのだ。
「だが……アリスはクラスで孤立していた。挨拶をしても無視されていたのだ。これはどう説明するつもりだ?」
「地位の低い者からの挨拶はマナー違反ですよ、殿下」
「低いといってもアリスはブロワ公爵令嬢だ。そなたも言っていたではないか……成人するまでは家の一員だと」
「家族の一員になったとは申しておりません。家に入った、と申し上げたのです」
「同じ事では無いか!」
「いいえ、全く異なります。特別養子縁組ならば家族の一員と認められますが、一般の養子縁組は庇護してくれる家の居候に他なりません。アリス嬢はブロワ公爵令嬢を名乗っているだけの存在です。貴族社会では男爵家の跡取り候補でしかありません。学園の中とはいえマナー違反は許されません」
知らなかった。
養子縁組に違いがあったなど。
だからなのか?
だからブロワ公爵はアリスに高位貴族の教育を受けさせなかったのか?
「アリス嬢のように何らかの理由で下位貴族が高位貴族の養子に入る例はあります。その者達は自分自身のために、また養子に迎え入れてくれた高位貴族の家に恥を掻かせないように行動する者が殆どです。血のにじむ努力で高位貴族の者達と遜色ない立ち居振る舞いを身につけ、成績も上位に食い込もうと寝る間も惜しんで勉強します。何も身につけない者は稀だとお伝えしておきます」
アレックスの容赦のない言葉が胸を衝く。
アリスの努力不足を真っ向から指摘されたようなものだ。
この分では「嫌味を言われた」と訴えても無駄だろう。貴族らしからぬ振る舞いをするアリスに注意を促しただけ、という言葉が返って来るだけだ。それでも、僕はアリスを愛しているんだ。息の詰まる王宮や学園の中でアリスの傍だけが癒された。深呼吸が出来た。
人は息をしなければ生きられない。
そうだろう?
誰に何と言われようともアリスを手放す事だけは出来ない!
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