婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
騎士団長2
バートンの話は長かった。
妻を亡くして茫然自失状態だった折の説教と同じ位に長かった。
長い話を簡潔にまとめると、ヴィエンヌ王国への使節団に選ばれた者達でエドワード殿下と新たな婚約者のフォローをする事が王命で決定したというのだ。
何故だ!
どういう経緯でそんな事態になってしまったのだ!?
それ以前に、息子たちに王子殿下のフォローをせよなど無茶にも程がある。
しかも殿下の婚約者であるアリス・ブロワ嬢のフォローまでするように要請があるとは……これは何かの悪い夢か?
「旦那様、夢でも幻でもなく、現実でございます」
バートンの厳しい言葉が部屋に響く。
落ち着いた抑揚のない声はさほど大きくも無いというのに、何故か、心に突き刺さり、必要以上に大きな声で聞こえるのだ。
「我がベデヴィア伯爵家もこれまでだ……」
妻が命がけで産んでくれた息子が王家の犠牲にされる日がこようとは……。
先代国王のせいで武門の誉れ高かった我がベデヴィア伯爵家は分家を含めて数を減らした。生き残っている一族の者の中で息子を支えられる者もスペアになれる存在さえいない。
「私の代で我が伯爵家が終わりを迎えようとは……」
息子が使節団に選ばれた時は誇らしかった。
昨今の情勢は我が国に対して不利益ばかりが覆いかぶさっている。
それを打破するためにも他国の若者との交流は千載一遇のチャンスでもあったのだ。
我が国の信頼回復は長い年月がかかるだろうが、次の世代が「信頼に値する者である」と思われれば未来は繋がるのだ。
なのに……まさかエドワード殿下たちまで一緒に行かれるとは!
いや、「参加する可能性がある」とは聞いていた。
だが、欠席されるとばかり思っていた。
「旦那様、エドワード殿下方が出席されるのはある意味当然の事でございます。他国同士の交流会など名ばかりの体裁。本当の目的はエドワード殿下と婚約者であるアリス・ブロワ様の人となりと能力を見極めるためのものでございましょう。同行する者に国の未来を担う優秀な子女達が選ばれたのも、恐らくヴィエンヌ王国からの条件の一つかと思われます。国の頂点に立つであろう者達に対する見極めも入っているのでしょう。陛下も『できうる限り』との枕詞を使ったのが良い例です。坊ちゃまたちが殿下方をお諫めすることが出来なかったとしても、王家からの叱責はないでしょう。伯爵家が罰される事はありません」
何時もにも増して的確過ぎる判断だ。
だが、私は不安を口に出してはいないぞ?
「旦那様は分かり易いのです。言葉に出さずとも表情と態度でそれを表しますから大体の事は把握できます」
そんなに分かり易いだろうか?
近衛を預かる身でありながら情けない。
「旦那様は政治家ではないのですから分かり易い人物であっても何の問題もございません。近衛と申されても、団員の中には荒くれた平民出身者も数多くおります。その中で、貴族らしくない物言いと態度の旦那様は、実に親しみを感じられると評判です。だからと言って気安い存在という訳でもありません。なにしろ、どのような状況になっても任務遂行に重きをおいて作戦実行する姿は『武人の鑑』とまで言われておいでなのですから」
「そ、そうだろか?活躍したと言われることはあるのだが……その、私にはその時の記憶が全く無くてな。本当に私が活躍したのかと耳を疑ってしまうのだ」
「旦那様は間違いなく活躍されております。歴史に名を残す英雄の中には、集中し夢中になって行動しているとその時の記憶が曖昧になる場合が多々あるそうです。旦那様もそういった英雄たちと同じケースなのでしょう。気にする事はございません」
「そうだろうか?全く覚えていないのだぞ?」
「それで騎士団の仕事に支障が出た事がございましたか?」
「ないな……」
「ならば、問題視するような事ではございません」
「そうだな……」
「此度の使節団行きは坊ちゃまにとってもいい経験になる事でしょう。旦那様は坊ちゃまを信じてお待ちになっていれば宜しいのです。大丈夫ですよ。ベデヴィア伯爵家の次期当主様は優秀でございます」
「ああ……」
バートンの励ましは有難かった。
私一人では何時までも悪い事ばかり考えて収拾がつかなかった事だろう。
息子を信じて待つ、確かにその通りだ。
妻を亡くして茫然自失状態だった折の説教と同じ位に長かった。
長い話を簡潔にまとめると、ヴィエンヌ王国への使節団に選ばれた者達でエドワード殿下と新たな婚約者のフォローをする事が王命で決定したというのだ。
何故だ!
どういう経緯でそんな事態になってしまったのだ!?
それ以前に、息子たちに王子殿下のフォローをせよなど無茶にも程がある。
しかも殿下の婚約者であるアリス・ブロワ嬢のフォローまでするように要請があるとは……これは何かの悪い夢か?
「旦那様、夢でも幻でもなく、現実でございます」
バートンの厳しい言葉が部屋に響く。
落ち着いた抑揚のない声はさほど大きくも無いというのに、何故か、心に突き刺さり、必要以上に大きな声で聞こえるのだ。
「我がベデヴィア伯爵家もこれまでだ……」
妻が命がけで産んでくれた息子が王家の犠牲にされる日がこようとは……。
先代国王のせいで武門の誉れ高かった我がベデヴィア伯爵家は分家を含めて数を減らした。生き残っている一族の者の中で息子を支えられる者もスペアになれる存在さえいない。
「私の代で我が伯爵家が終わりを迎えようとは……」
息子が使節団に選ばれた時は誇らしかった。
昨今の情勢は我が国に対して不利益ばかりが覆いかぶさっている。
それを打破するためにも他国の若者との交流は千載一遇のチャンスでもあったのだ。
我が国の信頼回復は長い年月がかかるだろうが、次の世代が「信頼に値する者である」と思われれば未来は繋がるのだ。
なのに……まさかエドワード殿下たちまで一緒に行かれるとは!
いや、「参加する可能性がある」とは聞いていた。
だが、欠席されるとばかり思っていた。
「旦那様、エドワード殿下方が出席されるのはある意味当然の事でございます。他国同士の交流会など名ばかりの体裁。本当の目的はエドワード殿下と婚約者であるアリス・ブロワ様の人となりと能力を見極めるためのものでございましょう。同行する者に国の未来を担う優秀な子女達が選ばれたのも、恐らくヴィエンヌ王国からの条件の一つかと思われます。国の頂点に立つであろう者達に対する見極めも入っているのでしょう。陛下も『できうる限り』との枕詞を使ったのが良い例です。坊ちゃまたちが殿下方をお諫めすることが出来なかったとしても、王家からの叱責はないでしょう。伯爵家が罰される事はありません」
何時もにも増して的確過ぎる判断だ。
だが、私は不安を口に出してはいないぞ?
「旦那様は分かり易いのです。言葉に出さずとも表情と態度でそれを表しますから大体の事は把握できます」
そんなに分かり易いだろうか?
近衛を預かる身でありながら情けない。
「旦那様は政治家ではないのですから分かり易い人物であっても何の問題もございません。近衛と申されても、団員の中には荒くれた平民出身者も数多くおります。その中で、貴族らしくない物言いと態度の旦那様は、実に親しみを感じられると評判です。だからと言って気安い存在という訳でもありません。なにしろ、どのような状況になっても任務遂行に重きをおいて作戦実行する姿は『武人の鑑』とまで言われておいでなのですから」
「そ、そうだろか?活躍したと言われることはあるのだが……その、私にはその時の記憶が全く無くてな。本当に私が活躍したのかと耳を疑ってしまうのだ」
「旦那様は間違いなく活躍されております。歴史に名を残す英雄の中には、集中し夢中になって行動しているとその時の記憶が曖昧になる場合が多々あるそうです。旦那様もそういった英雄たちと同じケースなのでしょう。気にする事はございません」
「そうだろうか?全く覚えていないのだぞ?」
「それで騎士団の仕事に支障が出た事がございましたか?」
「ないな……」
「ならば、問題視するような事ではございません」
「そうだな……」
「此度の使節団行きは坊ちゃまにとってもいい経験になる事でしょう。旦那様は坊ちゃまを信じてお待ちになっていれば宜しいのです。大丈夫ですよ。ベデヴィア伯爵家の次期当主様は優秀でございます」
「ああ……」
バートンの励ましは有難かった。
私一人では何時までも悪い事ばかり考えて収拾がつかなかった事だろう。
息子を信じて待つ、確かにその通りだ。
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