魔王と呼ばれる元聖女の祝福はラッキースケベ

参(まいり)

55話 ラッキースケベ盛り沢山


「ふう」

 いけないいけない。濡れ透けまたやっちゃった。
 エフィの部屋がすぐだったから押し込んで、マリッサからタオルを預かってエフィの部屋に急いだ。
 マリッサはえらく不満そうだったけど、私が持ってくことを最後に許してくれる。やっぱりいい子だよなあ。昔友達否定されたけど、優しいしやっぱり好きだ。あの時にお嬢様はずっとお嬢様って回答もらったけど、どういう意味なんだろ。雇用主? 雇用主からお友だち昇格はなし的な?

「エフィ、タオル」

 うっかりしていたのだけど、ノックもせずに扉を開けてしまって後悔した。上半身裸のエフィがいるんだもの。

「ひえ」

 急いで扉を閉める。
 え、と短くエフィの声が漏れた。そりゃノックなしは悪かったと思う。でもこれだけは言わせてほしい。
 扉越しに注文だけ付けた。

「服着て!」
「……拭かないと着られない」

 ああそうだったーもう困るんだってば、上半身裸なんて見た目が凶器でしょ。前は全裸だったけど、一回全裸見た程度じゃ慣れるなんてことない。自分が無駄にいい身体してるって自覚もってよ、ああもう目の毒だわ。
 でもタオル渡さないとなので、仕方なく扉を少し開け腕だけ伸ばしてタオルだけ入れた。

「とって」
「……」
「で、早く服着て」

 エフィから返事がないけど、こちらに向かって来る気配がしたから了承したのだろう。
 すると、がっとタオルを持つ手首を掴まれ、扉が開く。
 待って待って、上半身裸でしょうが! 開けないでよ!

「エフィ!」
「入って」

 連れ込まれた挙げ句、鍵かけてきた。エフィてば、だめなことばっかりやってる。
 タオルを片手に私を部屋の奥のソファに座らせた。

「エフィ、私」
「部屋から出るな」

 ラッキースケベが起きるだろうと私に有無を言わせない。
 マリッサのとこに行って帰ってくるまでなにもなかったから、ラッキースケベはもう起きないと思う。
 そう伝えても無視された。ここでダッシュを決め込んで外に出てもエフィは追いかけてくる。最近は手段選ばずだから転移使ってきそうだしなあ。

「……」

 にしても、部屋から逃走されないように扉と私の間に立つのやめてほしい。

「……」

 やっぱり無駄にえろいだけだよ。直視できるわけないじゃん。
 でもどうやっても視界に入る位置にいるし。両手で目を覆うしかない?

「イリニ」

 でもエフィがこの城から出ていって、私が聖女やめられてなかったら、他の人がこういう目に遭う。そしてハグ係が都度制になるのか。ハグ係がエフィでなくなる。
 それがもう考えられない時点で私の思考が変わりすぎてると言ってよかった。だいぶおかしくなってる。

「イリニ」
「え、なにうええ」

 シャツを羽織ったはいいんだけど、まだ前を閉めてないエフィの片手にびっちびっち跳ね回る活きの良い触手がいた。
 まさか立て続けに?

「ラッキースケベか」

 握る掌から魔法を放ったのか僅かに光り、びくびくっとした触手が天井裏へ引いていく。触手によるラッキースケベを回避してきた。
 あっれ、そしたら普段のラッキースケベも回避できる? そういえば暴力女子キャラモードも防いでた。もしかしなくても全モード対応可能なわけ? じゃあさっきの濡れ透けは?

「イリニ」
「あ、ごめん、私」

 この場にいたくなくてエフィの横を過ぎて出ようとするけど阻止された。
 まあそうなるよねえ。

「せ、せめて着替えが終わるまで外にいさせて!」
「だめだ、逃げるだろう」
「いいじゃん、考えないように走り回ってもさあ」
「だめだ」
「扉! 扉前にいるから!」
「こら待て」
「え」
「なん、」

 諦めの悪い触手が足をとってきた。
 二人して身体を傾ける。ああこれはテンプレのごとく転ぶやつね。

「イリニ」

 ぎゅっと目をつぶったけどあまり痛みはない。目を開ければ鼻と鼻がつくぐらいの近さにエフィの顔があった。

「ひえ」
「イリニ、無事か? 怪我は?」
「な、ないです」

 床ドンときた。今までのラッキースケベなら私がエフィを押し倒してたのに、今日は私が押し倒されている。なんで?
 しかも押し倒されたばかりの事故状況、エフィの身体がほぼのし掛かっている。
 重い。けど重い以前にはだけたとこが直接ひっついていて、その感触が妙に生々しくて恥ずかしいが極まる。

「イリニ?」
「エフィ、離れて」
「痛い所は」
「ないから! は、恥ずかしいから、早く」
「……」

 少し目を開き、ゆっくり離れる。
 あー! それはそれで、はだけた前が見えちゃうじゃん。目線逸らさねば。

「イリニ」

 私の顔の両側に腕を置いて距離が一定のとこから離れてくれなくなった。近すぎから近いになった程度じゃだめなんだって。

「エフィ、早く」

 瞳を蕩けさせてこちらを見てくる。
 私の訴えにぐぐっと身体を動かして離れると思ったら距離はそのままだった。
 私の視界がエフィの顔から、エフィのはだけた鎖骨から胸板あたりで覆われる形になっただけという。なにをしたいのエフィ。

「……」

 頭を撫でられた。
 そして手とは違う感触を旋毛に感じた後、エフィはゆっくり起き上がって、私の望む形で離れてくれた。

「ほら」
「え?」

 手を差しのべられたから素直にとるとするりと起こしてくれる。

「茶をいれるから、ここに」
「う、うん?」

 やっと前をしめてくれて、目の前からいかがわしいがなくなった。

「エフィ、今の?」
「……」

 結局、エフィは応えてくれないままだった。
 でも確かに感触が違ったはずだ。撫でるのとはあきらかに違う何かだった。

「え?」

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