オールFでも実は本気出したら無敵なんです!!〜美人女神にお願いされたら記憶が無くても異世界だろうが行くしか無い〜

長縄 蓮花

20話 無適性者と初クエスト③

 しばらく走り、ココモア大洞窟に向けて伸びる街道を見つけた。
 そこで二人を解放し、色々と話を整理する。

「ルークスひどい! あたしのこと紹介してくれなかった!」
「あそこでララのことを説明してたら話が長くなってクエストに行けなくなるだろ! ただでさえお前は有名人なんだぞ」
 全ての原因の男が隣でワナワナしながら居心地が悪そうに立っている。

「で、あんたは冒険者なのか? ギルドであんな高価な剣を持ってる奴は見たことないからうちのギルドメンバーでは無いよな?」
「そうですね……はい。僕は……ただの各国を放浪する冒険者です」
 うつむきながらまたボソボソ話している。


 なんとまあ、個性的なメンバーが集まってしまったんだと、集めた張本人であるルークス・アルフレッドは苦笑いした。

「で、あんたクエストは初めてか?」
「こ、ここの国ではありませんが他の国では多少したことがあります」
 よくこんなナヨナヨのやつが生きて帰ってこれたものだと、無適性者がバカにする。

「名前は……フレアだったか。適性のスレッドを見させて貰えるか?」
 一瞬フレアの表情が固まり、また動き出す。

「あ、ええーと、お財布を落とした時に落としちゃったみたいなんです」
 なんだコイツは。童顔でイケメンでおまけにおっちょこちょいという母性をくすぐるオプションまで付いてやがる。

「ぼ、ぼく暗黒魔導なら少し出来ます……お役に立てるかは分かりませんが」
 それの加えてこの自信なさげな態度がまた母性をくすぐるはずだ。

「ルークスさんは何か適性があるんですか?」
 来たこの質問。
 その時俺の目一杯のプライドが発動してしまった。

「俺もスレッド落としちゃったなー! 確か、剣術士と使役士が、Dだったかなー? 測定が昔の話だから今はもっと成長してるかもなー!」
 そう言い、ギルドを出る際ヴァイスさんに護身用にと貰った安値の剣をまるで歴戦の剣のように見せびらかした。

「ルークス。嘘つき嘘つき」
 うるさい。
 男には初対面の奴に舐められたらいけないと言うルールがあるのだ。第一印象が前代未聞の無適性者なんてお話にならない。
 ましてや相手はイケメンだ。尚更舐められてはいけない。悲しくなるから。

「そんでコイツはララ、こんな見た目だけど腕は一人前だから安心してくれ。適性は……(どうする、ここで適性者をバラすのは少々面倒な気もする)回復魔導と暗黒魔道が適性Bだ」

「へーー! その歳で適性Bだなんて凄いです!」
 ララが『なんで嘘つくんだ! Aって言ったらこの人もっと褒めてくれたのに!』 って顔で俺を睨む。

「じゃー、一通り自己紹介も済んだしココモア大洞窟に向かうか!」
 三人で軽く円陣を組んで街道を歩き出した。

 砂漠を超え、その先にあるココモア大洞窟とはどんな場所なんだろうか。




 ――「たーーすーけてーー!」
 俺は現在、絶賛お魚に襲われている最中だ。
 魚と言っても海を泳ぎ回るのでは無く、砂の海を土煙を上げに泳ぎ回る、人間にとっては大変迷惑な化け物だ。


 出発から二分でローファストフィッシャーと呼ばれる砂漠を泳ぐ魚のようなモンスターの群れに遭遇してしまった。

 次から次へと地面の砂から湧いては消えてを繰り返す。
「ララ! コイツら一撃でやっつけてくれ!」

「だめだよだめだよルークス! こんな時こそ戦う練習しないと!」
 いきなりのスパルタ練習に参加させられる俺。

 安い剣をギュッと握りしめる。
 こちらに時速五十キロ超えのスピードで向かってくる、ローファストフィッシャーの大群の正面に立つ。
 相手の向かってくる勢いを利用して剣でカウンター攻撃する作戦だ。

 落ち着け、キア(おまけにイフラル)を助けた時を思い出せ。
 あの時は出力が出過ぎていた。それは扉の開け方が大き過ぎたからに他ならない。
 あの時より少しだけ出力を落とすんだ。

 ……よし、いい感じだ。体内の扉の場所が以前より明確に分かるようになってる。


「――イケる!!」
『かきん』と虚しく情けない音が剣の刃先から聞こえた。


「ふぇ?」
「ふぇぇ?」
 
開く扉の面積が狭すぎて出力が出なかったのだ。
 そのことに気づいてもう一度扉の解放を試みる。
 が、時すでに遅し

 ――ドドドドドドドド
「あぎゃやゃーー! 助けてぇぇぇ!」
 大量のローファストフィッシャーが鱗を逆立て俺の体を切り刻みながら容赦なく通過する。

「痛―――い! マジでララ! マジで助けて!」
 女の子を助けるべく勇者を目指したのに、死因が魚との交通事故なんて、女神様になんて説明したらいいんだ。

「悪辣の彼方の深淵を覗く者、亡骸となりて死を欲しろ 暗黒魔導 虚空殺こくうさつ

 地面が暗黒に染まり、モンスター達が次々と奈落へと沈んでいく。
「ララ! マジで助かった!」
「え? あたし何も何もしてないよ?」

 それなら……


「あっ、ぼ、僕が暗黒魔導放っちゃいました。よ、余計なお世話でしたでしょうか?」

 そんな訳がない、ララは限界まで俺の扉の調節具合を見ていたと思うが、あんな痛みが続いてたら助かったとしても、確実にララの前で泣かないといけなかった。

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