【異能な転生者】主人公が成長していく物語
プロローグ(前世のアルベルト編)5
プロローグ(前世のアルベルト編)5
俺は辛い雑用をこなして寒い夜も自分の魔法で温めていくことを覚えて、魔法の力が、いつの間にか上がってきた。
寒さでも具合が悪くなることもなく、なんとか、15歳の成人になることができた。
この国では15歳で成人となるから、もう軍は俺をこき使うことはできない。
俺は、15歳を迎えようとする、ある日に事務仕事をする人に呼び出された。
俺が受付に行ってみると「おっ、来たな」と事務の人は言って、俺に小さな布袋と2枚の紙を差し出した。
「これで、君も、やっと1人前だね。これは今までのお給金だね」
お金が入った袋と渡された紙には、軍の志願用紙だった。
「え〜と、これは?」
「君は、15歳で晴れて軍の雑用をしなくて済む事になる。その契約が終わったと言う書類と、もし可能なら国軍に入らないかという書類だよ」
「‥‥‥」
「もちろん、軍に入るには、試験があるけど、入るのは簡単なことだ、その紙に名前、年齢、希望を書くだけで軍人にはなれる、でも、そこから剣が得意な人は剣で軍人になる、そして魔法が得意な人は魔法師になることができる試験がある」
「君が、もし軍人になりたいと思えば、だけどね」
「はい、わかりました、考えてみます」
「あっ、期限は10日後だよ」
「はい、わかりました」
「もし軍人になるなら、申し込み用紙を、ここに持ってきてね」
「はい」と答えて、その場を後にした。
俺は、どうしようかと思ったけど、軍に引き取られて、外には出たことがない。
俺が知っている世界は、ここだけ‥‥‥
お金は、もらったけど、使ったことはない。
俺は迷ったけど、軍に志願することにした。
用紙をもらった事務の人のところに行って「あの〜、この用紙を‥‥‥」と言って渡した。
その人は「じゃあね」と言いながら、違う用紙をもらった。
それを見ると、その人が説明してくれた。
用紙をさしながら、この日の、この時間に、この場所に来るんだよ、時間に遅れないでね」
「はい」
「あっ、それとね、大変、申し訳ないけど、一度、君は、ここを出なくちゃならないんだ、規則でね」
「えっ‥‥‥」
「この前、渡したお金があるだろう?」
「はい」
「あのお金は、安い宿なら泊まることができるからね、安い宿なら、ここがいいと思うよ」と言って宿まで紹介してくれた。
「はい、わかりました、行ってみます」と言って去りかけたところへ
「あっ、そうだ、君にあげたお金だったら、一泊くらいしかできないけど、食事付きだからね、頑張るんだよ」と優しい言葉をかけてくれた。
俺は、その人に頭を下げて、立ち去った。
別の女性職員の人が「本当に、あなたって、物好きね」
「いい子じゃないか」
「自分のお金を、あの子にあげるなんて」
「だって、かわいそうな子だよ、いつもいじめられて」
「それは、知っているわよ、私も何かあの子にしてあげたかったけど‥‥‥」
「ねぇ、今度、お茶しない?」
「いいえ、それはやめておくわ」
*
俺も15歳だから、軍に志願することができるんだ。
本当に俺は今まで、ここにいたけど、塀の中のことしか知らない。
他を知っていれば、違う職種を選んでいただろう。
俺は、物置小屋を出て、、紹介された宿に一泊だけ申し込んで、軍に来てから初めて 食事らしい食事をとった。
朝も、本当に美味しい朝食を食べることができた。
結局は俺は、軍の兵士の中から出てきて直行で紹介された宿に行っただけだった。
街をうろつくこともなく、宿に行ってベッドに寝転がって、ベッドの柔らかさを楽しみながら時間を過ごした。
食事の時間になるとすぐに決められたテーブルに座って待っているだけだった。
「さぁ、今日は、軍人になるための試験の日だ」
*
実際に試験が行われるところに行き、受付を済ませた。
なんだか、初めての経験なんで、ドキドキ、ワクワク、ソワソワしている自分に気が付く。
俺をいじめていた奴らは、俺が13歳の時に魔物討伐に行き、帰ってこなかった。
聞きもしないけど死んだみたいなことを噂していた。
ざまぁみろだ。
それからの俺は殴られることもなく、揶揄からかわれることもなく、雑用をこなした。
今から軍の試験が行われるんだけど、今年は求人数が多くて、全員が、軍人になれるそうだ。
まぁ、やめていく奴もいるからね。
俺も応募用紙を出した時点で、軍人だそうだ。あの人から聞いていないけど‥‥‥
試験は10時から始まるけど、今はまだ9時前だ。
今は多くの人が受付をしている。
この中には、剣士志望の人もいれば、魔法師志望の人もいる。
受け付けを済ませると、用紙を確認したら、もう軍に入隊という事になる。
そこから選抜試験が行われる。
選抜試験は、剣士コースの奴と魔法師コースの人に分かれる事になる。
もちろん、俺が目指すのは魔法師コース。
でも俺が目指している魔法師は難易度が高く、希望しても、能力的にダメであれば剣士コースに落とされる。
つまり魔法師はエリートという事になる。
俺は知らなかったけど、魔法師でも剣士でも、S級、A級、B級、C級、D級と5段階あるみたい。
俺を良くいじめていた奴は、剣士のD級だった。
剣でも上達することがなく、腐っていくような心根しか持っていなかった。
そんな根性しかないから俺は殴られていた。
*
俺の入隊初日の受付と2次試験の実戦の時間がきた。
2次試験に合格できないと剣士に落とされて魔法師になることはできなくなってしまう。
剣士に落とされた人が、魔法師として復活することは、まずないそうだ。
一時は書類の提出だけで終わりだから、2次試験会場には多くの人が集まっている。
試験には貴族もいるけど、貴族は士官クラスになるから会場が違う。
俺たち平民は、一兵士からだけど、貴族は、数週間の学科で士官になることができる。
一兵士は、功績を立てないと一生、上がることはない。
今時、戦争でもない限りは、まず、士官になることも上がることはない。
だから、ずーっと一兵士だ。
貴族の奴らは、手柄を立てなくても、コネで上がっていくけど、平民はコネもなければ金もないので、優秀でも上がることはないと言っていい。
多くの人が順番に並んで、自分の番を待っている。
俺も魔法師コースに並んでいるけど、年齢差もかなりあるみたいだ。
魔法師だからと言う理由でもないだろうけど、高齢の人もいるし、女性もいる。
みんな魔法師ってわかる洋服を着ているから冒険者なのかな?
俺の前にも多くの人が並んでいるけど、魔法師コースに並んでいる人で、筋肉質の人は、誰もいない。
「次、あの的を基本魔法のファイヤーボールを当てて見せろ」と試験管
「はい、ファイヤーボールですね」と言いながら、手に炎を出して、的に向けて投げるけど、炎も小さしい、的にも当たらない。
あれっ、こんなんで試験を受けにきたのかな?
「お前は剣士コースだ」と言われている。試験を受けた人は頭を下に向けながらトボトボ、列から離れていく。
「次の者」と試験官が言って、俺の前の女性が指定された位置につく
「聞いていたな、あの的に向けてファイヤーボールを放て」
「はい、わかりました」と言って女性は、右手に炎を作り、的に向けて投げると、的に当たった。
的が燃え上がっている。
「よし、いいだろう、お前は魔法師コースだ」
「やった〜」と女性は喜んでいる。
いよいよ俺の番だ。
「よし、次」
「はい」
「じゃ、やって見せろ」
「はい」
俺は右手に炎を出して、念をこめると色が変化した。
ざわめきが聞こえるが、俺は集中する。
ファイヤーボールを的に向かって投げつける。
実は俺ってファイヤーボールを的に当てるのは初めて‥‥‥
的には当たらなかった、的をカスって大爆発して地面が焼け焦げた。
あれっ、的は少しだけ、焼けただけだった。あちゃ〜、これじゃダメかな?
的に当たってない、ガァ〜ンとショックが襲ってきた。
しかも試験会場を破壊してしまった。
俺は ショックから頭を抱えながら座り込んでしまった。
試験官は何も言わずに立っているだけ‥‥‥
他の奴らも何も言わない‥‥‥
はぁ、ダメか?
俺が立ち去ろうとしたら、試験官が起動して「お前、すごいな、よし、合格」と言ってくれた。
ダメだったと下を向いていた俺の顔がパア〜と明るくなった、やった〜っ、やった〜合格できたんだ。
俺はもう嬉しくてたまらない。
やった〜魔法師になれるんだ。
エリートになれるんだ。
*
でも魔法師になることができても、当然、肉体訓練はある。
今回の魔法師として合格できたのは34名だった。
剣士コースは合格者、895名でたそうだ。
貴族を退けて、魔法師コースの中でもB級と判断されてトップで合格できた。
B級なんて すご〜い と思うけど、どれほどすっごいのか、わからない。
他の人はC級が二人と、あとはD級だそうだ。
*
訓練が始まる、朝、早くから「起きろ、支度を急いで表に出ろ」と言う大声が兵舎に響き渡る。
朝、早くといっても俺が下働きで働いていた時間よりは遅い、俺は習慣から、大声を出される前に起きていた。
久しぶりにベットで寝た感触を楽しんでいた。
「温かい。フカフカだ」
薄い布団でも俺にとってはフカフカだと思える。
「急いで用意して表に集合しろ」ピーッと笛のなる音がする。
俺と他の奴らは、起き上がって、すぐに布団を綺麗にして毛布も畳んで軍服に着替えて、走って表に出てきて、すぐに腕立て伏せや腹筋、兵舎の周りを走る。
そして短時間で朝食をとって、「これから、施設の周りを走ってこい」と言われれば、はい、と言って走るだけ。
座学もあるけど、方角を教えてもらったり、国の名前を言わされたり、あとは上官に従うようにと言われるだけ。
半年の体力訓練が済む前、剣士の奴らは剣を鍛えることや剣士としての訓練をすることになり、人数が減ってきた。
俺たち、魔法師は剣士の後方から援護することが仕事だけど、前面に出ることもないことはないので、その訓練をする。
施設の近くの訓練施設で、俺たち魔法師部隊は訓練を行う。
*
今年、入った魔法師の中でも俺は群を抜いている才能があると評価された。
貴族でもC級は多くいるけど、B級は一人しかいないそうだ。
俺だけがB級ということで、上司から呼び出された。
「呼び出されたアルベルトです」と扉の前で言うと、中から「入れ」と言われて中に入る。
扉を閉めると上官が「お前は、今日から士官コースにいけ」とだけ言われて紙を渡された。
えっ、なに? 士官コース? それ以上は説明してくれそうもないので、部屋から出て、もらった用紙を見てみた。
え〜と、なになに?
もらった紙には、部屋を移れと書いてあって、次の部屋の場所が書いてあった。
俺は部屋に戻って、大して荷物はないけど、手で持って、紙に書いてある場所を探しながら、聞きながら、たどり着いた。
えっ、ここかな? 受け付けがあって、女性がいるけど、メガネをかけた話しづらそうな女性がいる。
「あの、ここに行けと言われたんですが‥‥‥」と紙を出しながら俺が言うと。
「あっ、はい、はい、待っていましたよ」と言って受付から出てきて、「こちらへ」と言って案内してくれた。
へ〜、この建物が士官、つまり貴族の奴らがいるところなのか? と俺はキョロキョロしている。
「この部屋が今日から、あなたが使う部屋になります」と言われて扉を開けてくれた。
うわ〜、なんだ、この部屋
「じゃ、鍵はここに置いておきます、必要事項は紙に書いてありますので」と言って女性は立ち去った。
女性がいなくなったので、まずは、部屋の窓に行ってみた。この部屋は3階にあるし、丘の上に立っているから、見晴らしがいい。
これが士官の部屋か? すごいの一言に尽きる。
しかも一人部屋。
今までは2段ベットの4人部屋だったし、窓から見える景色も横の建物しか見えない。
俺は士官と言っても、まだ正式には士官ではないけど、ベットに置いてある毛布もフカフカな柔らかそうな毛布だし、ベットも柔らかそう!
そして勉強机がある、うわ〜、いいよな。楽しみだ。
どこかで本がないかな? 聞いてみよう。
部屋に置いてある紙に書いてあるけど、夕食は7時から9時の間だそうだ、
時間変更も告げておけばいいそうなので、余裕がある。
でも俺は7時に食堂に降りてきた。まだ、誰も座っていない。
座る場所は、決まっていないそうなんで、俺は一番、端っこに座った。
まず席を確保して、料理をとりに行くけど、どれも美味しそうなものばかりだ。
うわ〜、宿の時と同じように美味しそうなものばかりだ。
やった〜
俺は他の人が来ないうちに、さっさと食べて、食堂の人に図書館が、どこにあるのか聞いてみた。
「図書館かい?」
「はい、どこにあるか知っていますか?」
「確か、西棟の3階じゃなかったかな」
あるんだ、やったっ
「ありがとうございます、行ってみます」と挨拶して俺は歩いた。
壁に貼ってある敷地の見取り図を見ながら、え〜と西棟、西棟っと、あっ、ここか?
西棟の3階が見つかったので、急いで歩き出す、階段を登り、図書館を見つける、そこには多くの本が置いてあった。
入り口で身分証を出して中に入っていいと許可が出された。
もちろん、俺がここにきたのは魔法の研究をするため。
持ち出しできる本は、毎日、ここにきて持って帰って読破した。
持ち出し禁止の本は夜、遅くまで本を読んだ。
この図書館には、多くの興味がある本が置いてあるから、時間を忘れるように本を読み漁った。
書物には、歴史書、伝記物、魔法書などが多くあったけど、一番、興味があるのは、魔法書だ、その中でも俺が使えない魔法だ。
いまだに魔法は、何が使えて、何が使えないのかわからない。
魔法は多くあるけど、結界魔法なんか使えたらいいなと思うけど、理論から入ることにした。
でも、理論なんて、あまり書いていない‥‥‥本自体、薄っぺらく、ほとんどが魔物と戦う人が書いてあって、その間に結界魔法らしきものが見えるだけ。
えっ、これだけ‥‥‥
他の本も見たけど、ほとんどが書いていない。
う〜ん、どうしようか?
これは、もう、やってみるしかなさそうだな。
俺は夜に誰もいない練習場に来て、結界魔法を試すことにした。
あの本に書いてあった壁みたいなものをイメージして魔法を使う。でもいまいち、イメージが掴めない。
う〜ん、魔法で壁を作って覆うわけだから‥‥‥硬い膜のようなイメージかな?
それを魔法で作り出すことをするわけだな。それをイメージして魔法で作ってみると、できたけど、手で触ってみるとフニャフニャだ。
こんなんじゃ結界とは言えない。
これを強化すればいいわけだな、それを、どうするかだが、う〜ん、魔法は魔力で作られるわけだから、魔力を増やしてみるか?
魔力を増やすだけじゃなく、例えば、ファイヤーボールでもウィンドカッターでも、防ぐことができるイメージで結界を作ってみた。
そうすると、なんとなくできたような気がする。
俺は、それを何度も練習して繰り返していく。
はぁはぁ、結構、疲れた、よし、今日はここまでにしよう。
それからも多くの魔法書を読み漁り、いろいろな魔法を試して使うことをしてきた。
*
俺は士官クラスに入ることができたけど、俺以外は貴族ばかりだから、非常にやりづらい。
でも、良かったのは、俺は相部屋ではなく、一人部屋だから、寝る時まで人を気にする必要がないことだ。
俺は徐々に士官クラスの中でも、先頭訓練においても、指揮においても、頭角を表すことができるようになってきた。
図書館の魔法書には戦闘時の指揮のことも書いてあるけど、読んだだけじゃ意味ないから、俺は魔法と同じようにイメージで覚えることにした。
その結果、練習で、一般兵を動かす時にもイメージの訓練で、配置転換をすぐにできるようにしたり、それぞれの固有能力を把握することで現場を対処していった。
その結果として、俺が率いた練習軍は、連戦連勝で負けることがなかった。
大きな邪魔が入ることもなく、練習では軍を動かすことができた。
「おい、あれ、練習の時に、敵の軍を率いていた奴だろう?」
「お、そうみたいだな」
「あいつ、すごいよな」
「まぁ、あいつは別格さ」
「俺は、あいつ嫌いだけどな」
「ははっ、お前は才能がないからだろ」
「うるせぇよ」
俺のことを話しているのは、知っていたが、横目で見ながら、マントを翻ひるがえしながら横を通り過ぎていく。
俺は辛い雑用をこなして寒い夜も自分の魔法で温めていくことを覚えて、魔法の力が、いつの間にか上がってきた。
寒さでも具合が悪くなることもなく、なんとか、15歳の成人になることができた。
この国では15歳で成人となるから、もう軍は俺をこき使うことはできない。
俺は、15歳を迎えようとする、ある日に事務仕事をする人に呼び出された。
俺が受付に行ってみると「おっ、来たな」と事務の人は言って、俺に小さな布袋と2枚の紙を差し出した。
「これで、君も、やっと1人前だね。これは今までのお給金だね」
お金が入った袋と渡された紙には、軍の志願用紙だった。
「え〜と、これは?」
「君は、15歳で晴れて軍の雑用をしなくて済む事になる。その契約が終わったと言う書類と、もし可能なら国軍に入らないかという書類だよ」
「‥‥‥」
「もちろん、軍に入るには、試験があるけど、入るのは簡単なことだ、その紙に名前、年齢、希望を書くだけで軍人にはなれる、でも、そこから剣が得意な人は剣で軍人になる、そして魔法が得意な人は魔法師になることができる試験がある」
「君が、もし軍人になりたいと思えば、だけどね」
「はい、わかりました、考えてみます」
「あっ、期限は10日後だよ」
「はい、わかりました」
「もし軍人になるなら、申し込み用紙を、ここに持ってきてね」
「はい」と答えて、その場を後にした。
俺は、どうしようかと思ったけど、軍に引き取られて、外には出たことがない。
俺が知っている世界は、ここだけ‥‥‥
お金は、もらったけど、使ったことはない。
俺は迷ったけど、軍に志願することにした。
用紙をもらった事務の人のところに行って「あの〜、この用紙を‥‥‥」と言って渡した。
その人は「じゃあね」と言いながら、違う用紙をもらった。
それを見ると、その人が説明してくれた。
用紙をさしながら、この日の、この時間に、この場所に来るんだよ、時間に遅れないでね」
「はい」
「あっ、それとね、大変、申し訳ないけど、一度、君は、ここを出なくちゃならないんだ、規則でね」
「えっ‥‥‥」
「この前、渡したお金があるだろう?」
「はい」
「あのお金は、安い宿なら泊まることができるからね、安い宿なら、ここがいいと思うよ」と言って宿まで紹介してくれた。
「はい、わかりました、行ってみます」と言って去りかけたところへ
「あっ、そうだ、君にあげたお金だったら、一泊くらいしかできないけど、食事付きだからね、頑張るんだよ」と優しい言葉をかけてくれた。
俺は、その人に頭を下げて、立ち去った。
別の女性職員の人が「本当に、あなたって、物好きね」
「いい子じゃないか」
「自分のお金を、あの子にあげるなんて」
「だって、かわいそうな子だよ、いつもいじめられて」
「それは、知っているわよ、私も何かあの子にしてあげたかったけど‥‥‥」
「ねぇ、今度、お茶しない?」
「いいえ、それはやめておくわ」
*
俺も15歳だから、軍に志願することができるんだ。
本当に俺は今まで、ここにいたけど、塀の中のことしか知らない。
他を知っていれば、違う職種を選んでいただろう。
俺は、物置小屋を出て、、紹介された宿に一泊だけ申し込んで、軍に来てから初めて 食事らしい食事をとった。
朝も、本当に美味しい朝食を食べることができた。
結局は俺は、軍の兵士の中から出てきて直行で紹介された宿に行っただけだった。
街をうろつくこともなく、宿に行ってベッドに寝転がって、ベッドの柔らかさを楽しみながら時間を過ごした。
食事の時間になるとすぐに決められたテーブルに座って待っているだけだった。
「さぁ、今日は、軍人になるための試験の日だ」
*
実際に試験が行われるところに行き、受付を済ませた。
なんだか、初めての経験なんで、ドキドキ、ワクワク、ソワソワしている自分に気が付く。
俺をいじめていた奴らは、俺が13歳の時に魔物討伐に行き、帰ってこなかった。
聞きもしないけど死んだみたいなことを噂していた。
ざまぁみろだ。
それからの俺は殴られることもなく、揶揄からかわれることもなく、雑用をこなした。
今から軍の試験が行われるんだけど、今年は求人数が多くて、全員が、軍人になれるそうだ。
まぁ、やめていく奴もいるからね。
俺も応募用紙を出した時点で、軍人だそうだ。あの人から聞いていないけど‥‥‥
試験は10時から始まるけど、今はまだ9時前だ。
今は多くの人が受付をしている。
この中には、剣士志望の人もいれば、魔法師志望の人もいる。
受け付けを済ませると、用紙を確認したら、もう軍に入隊という事になる。
そこから選抜試験が行われる。
選抜試験は、剣士コースの奴と魔法師コースの人に分かれる事になる。
もちろん、俺が目指すのは魔法師コース。
でも俺が目指している魔法師は難易度が高く、希望しても、能力的にダメであれば剣士コースに落とされる。
つまり魔法師はエリートという事になる。
俺は知らなかったけど、魔法師でも剣士でも、S級、A級、B級、C級、D級と5段階あるみたい。
俺を良くいじめていた奴は、剣士のD級だった。
剣でも上達することがなく、腐っていくような心根しか持っていなかった。
そんな根性しかないから俺は殴られていた。
*
俺の入隊初日の受付と2次試験の実戦の時間がきた。
2次試験に合格できないと剣士に落とされて魔法師になることはできなくなってしまう。
剣士に落とされた人が、魔法師として復活することは、まずないそうだ。
一時は書類の提出だけで終わりだから、2次試験会場には多くの人が集まっている。
試験には貴族もいるけど、貴族は士官クラスになるから会場が違う。
俺たち平民は、一兵士からだけど、貴族は、数週間の学科で士官になることができる。
一兵士は、功績を立てないと一生、上がることはない。
今時、戦争でもない限りは、まず、士官になることも上がることはない。
だから、ずーっと一兵士だ。
貴族の奴らは、手柄を立てなくても、コネで上がっていくけど、平民はコネもなければ金もないので、優秀でも上がることはないと言っていい。
多くの人が順番に並んで、自分の番を待っている。
俺も魔法師コースに並んでいるけど、年齢差もかなりあるみたいだ。
魔法師だからと言う理由でもないだろうけど、高齢の人もいるし、女性もいる。
みんな魔法師ってわかる洋服を着ているから冒険者なのかな?
俺の前にも多くの人が並んでいるけど、魔法師コースに並んでいる人で、筋肉質の人は、誰もいない。
「次、あの的を基本魔法のファイヤーボールを当てて見せろ」と試験管
「はい、ファイヤーボールですね」と言いながら、手に炎を出して、的に向けて投げるけど、炎も小さしい、的にも当たらない。
あれっ、こんなんで試験を受けにきたのかな?
「お前は剣士コースだ」と言われている。試験を受けた人は頭を下に向けながらトボトボ、列から離れていく。
「次の者」と試験官が言って、俺の前の女性が指定された位置につく
「聞いていたな、あの的に向けてファイヤーボールを放て」
「はい、わかりました」と言って女性は、右手に炎を作り、的に向けて投げると、的に当たった。
的が燃え上がっている。
「よし、いいだろう、お前は魔法師コースだ」
「やった〜」と女性は喜んでいる。
いよいよ俺の番だ。
「よし、次」
「はい」
「じゃ、やって見せろ」
「はい」
俺は右手に炎を出して、念をこめると色が変化した。
ざわめきが聞こえるが、俺は集中する。
ファイヤーボールを的に向かって投げつける。
実は俺ってファイヤーボールを的に当てるのは初めて‥‥‥
的には当たらなかった、的をカスって大爆発して地面が焼け焦げた。
あれっ、的は少しだけ、焼けただけだった。あちゃ〜、これじゃダメかな?
的に当たってない、ガァ〜ンとショックが襲ってきた。
しかも試験会場を破壊してしまった。
俺は ショックから頭を抱えながら座り込んでしまった。
試験官は何も言わずに立っているだけ‥‥‥
他の奴らも何も言わない‥‥‥
はぁ、ダメか?
俺が立ち去ろうとしたら、試験官が起動して「お前、すごいな、よし、合格」と言ってくれた。
ダメだったと下を向いていた俺の顔がパア〜と明るくなった、やった〜っ、やった〜合格できたんだ。
俺はもう嬉しくてたまらない。
やった〜魔法師になれるんだ。
エリートになれるんだ。
*
でも魔法師になることができても、当然、肉体訓練はある。
今回の魔法師として合格できたのは34名だった。
剣士コースは合格者、895名でたそうだ。
貴族を退けて、魔法師コースの中でもB級と判断されてトップで合格できた。
B級なんて すご〜い と思うけど、どれほどすっごいのか、わからない。
他の人はC級が二人と、あとはD級だそうだ。
*
訓練が始まる、朝、早くから「起きろ、支度を急いで表に出ろ」と言う大声が兵舎に響き渡る。
朝、早くといっても俺が下働きで働いていた時間よりは遅い、俺は習慣から、大声を出される前に起きていた。
久しぶりにベットで寝た感触を楽しんでいた。
「温かい。フカフカだ」
薄い布団でも俺にとってはフカフカだと思える。
「急いで用意して表に集合しろ」ピーッと笛のなる音がする。
俺と他の奴らは、起き上がって、すぐに布団を綺麗にして毛布も畳んで軍服に着替えて、走って表に出てきて、すぐに腕立て伏せや腹筋、兵舎の周りを走る。
そして短時間で朝食をとって、「これから、施設の周りを走ってこい」と言われれば、はい、と言って走るだけ。
座学もあるけど、方角を教えてもらったり、国の名前を言わされたり、あとは上官に従うようにと言われるだけ。
半年の体力訓練が済む前、剣士の奴らは剣を鍛えることや剣士としての訓練をすることになり、人数が減ってきた。
俺たち、魔法師は剣士の後方から援護することが仕事だけど、前面に出ることもないことはないので、その訓練をする。
施設の近くの訓練施設で、俺たち魔法師部隊は訓練を行う。
*
今年、入った魔法師の中でも俺は群を抜いている才能があると評価された。
貴族でもC級は多くいるけど、B級は一人しかいないそうだ。
俺だけがB級ということで、上司から呼び出された。
「呼び出されたアルベルトです」と扉の前で言うと、中から「入れ」と言われて中に入る。
扉を閉めると上官が「お前は、今日から士官コースにいけ」とだけ言われて紙を渡された。
えっ、なに? 士官コース? それ以上は説明してくれそうもないので、部屋から出て、もらった用紙を見てみた。
え〜と、なになに?
もらった紙には、部屋を移れと書いてあって、次の部屋の場所が書いてあった。
俺は部屋に戻って、大して荷物はないけど、手で持って、紙に書いてある場所を探しながら、聞きながら、たどり着いた。
えっ、ここかな? 受け付けがあって、女性がいるけど、メガネをかけた話しづらそうな女性がいる。
「あの、ここに行けと言われたんですが‥‥‥」と紙を出しながら俺が言うと。
「あっ、はい、はい、待っていましたよ」と言って受付から出てきて、「こちらへ」と言って案内してくれた。
へ〜、この建物が士官、つまり貴族の奴らがいるところなのか? と俺はキョロキョロしている。
「この部屋が今日から、あなたが使う部屋になります」と言われて扉を開けてくれた。
うわ〜、なんだ、この部屋
「じゃ、鍵はここに置いておきます、必要事項は紙に書いてありますので」と言って女性は立ち去った。
女性がいなくなったので、まずは、部屋の窓に行ってみた。この部屋は3階にあるし、丘の上に立っているから、見晴らしがいい。
これが士官の部屋か? すごいの一言に尽きる。
しかも一人部屋。
今までは2段ベットの4人部屋だったし、窓から見える景色も横の建物しか見えない。
俺は士官と言っても、まだ正式には士官ではないけど、ベットに置いてある毛布もフカフカな柔らかそうな毛布だし、ベットも柔らかそう!
そして勉強机がある、うわ〜、いいよな。楽しみだ。
どこかで本がないかな? 聞いてみよう。
部屋に置いてある紙に書いてあるけど、夕食は7時から9時の間だそうだ、
時間変更も告げておけばいいそうなので、余裕がある。
でも俺は7時に食堂に降りてきた。まだ、誰も座っていない。
座る場所は、決まっていないそうなんで、俺は一番、端っこに座った。
まず席を確保して、料理をとりに行くけど、どれも美味しそうなものばかりだ。
うわ〜、宿の時と同じように美味しそうなものばかりだ。
やった〜
俺は他の人が来ないうちに、さっさと食べて、食堂の人に図書館が、どこにあるのか聞いてみた。
「図書館かい?」
「はい、どこにあるか知っていますか?」
「確か、西棟の3階じゃなかったかな」
あるんだ、やったっ
「ありがとうございます、行ってみます」と挨拶して俺は歩いた。
壁に貼ってある敷地の見取り図を見ながら、え〜と西棟、西棟っと、あっ、ここか?
西棟の3階が見つかったので、急いで歩き出す、階段を登り、図書館を見つける、そこには多くの本が置いてあった。
入り口で身分証を出して中に入っていいと許可が出された。
もちろん、俺がここにきたのは魔法の研究をするため。
持ち出しできる本は、毎日、ここにきて持って帰って読破した。
持ち出し禁止の本は夜、遅くまで本を読んだ。
この図書館には、多くの興味がある本が置いてあるから、時間を忘れるように本を読み漁った。
書物には、歴史書、伝記物、魔法書などが多くあったけど、一番、興味があるのは、魔法書だ、その中でも俺が使えない魔法だ。
いまだに魔法は、何が使えて、何が使えないのかわからない。
魔法は多くあるけど、結界魔法なんか使えたらいいなと思うけど、理論から入ることにした。
でも、理論なんて、あまり書いていない‥‥‥本自体、薄っぺらく、ほとんどが魔物と戦う人が書いてあって、その間に結界魔法らしきものが見えるだけ。
えっ、これだけ‥‥‥
他の本も見たけど、ほとんどが書いていない。
う〜ん、どうしようか?
これは、もう、やってみるしかなさそうだな。
俺は夜に誰もいない練習場に来て、結界魔法を試すことにした。
あの本に書いてあった壁みたいなものをイメージして魔法を使う。でもいまいち、イメージが掴めない。
う〜ん、魔法で壁を作って覆うわけだから‥‥‥硬い膜のようなイメージかな?
それを魔法で作り出すことをするわけだな。それをイメージして魔法で作ってみると、できたけど、手で触ってみるとフニャフニャだ。
こんなんじゃ結界とは言えない。
これを強化すればいいわけだな、それを、どうするかだが、う〜ん、魔法は魔力で作られるわけだから、魔力を増やしてみるか?
魔力を増やすだけじゃなく、例えば、ファイヤーボールでもウィンドカッターでも、防ぐことができるイメージで結界を作ってみた。
そうすると、なんとなくできたような気がする。
俺は、それを何度も練習して繰り返していく。
はぁはぁ、結構、疲れた、よし、今日はここまでにしよう。
それからも多くの魔法書を読み漁り、いろいろな魔法を試して使うことをしてきた。
*
俺は士官クラスに入ることができたけど、俺以外は貴族ばかりだから、非常にやりづらい。
でも、良かったのは、俺は相部屋ではなく、一人部屋だから、寝る時まで人を気にする必要がないことだ。
俺は徐々に士官クラスの中でも、先頭訓練においても、指揮においても、頭角を表すことができるようになってきた。
図書館の魔法書には戦闘時の指揮のことも書いてあるけど、読んだだけじゃ意味ないから、俺は魔法と同じようにイメージで覚えることにした。
その結果、練習で、一般兵を動かす時にもイメージの訓練で、配置転換をすぐにできるようにしたり、それぞれの固有能力を把握することで現場を対処していった。
その結果として、俺が率いた練習軍は、連戦連勝で負けることがなかった。
大きな邪魔が入ることもなく、練習では軍を動かすことができた。
「おい、あれ、練習の時に、敵の軍を率いていた奴だろう?」
「お、そうみたいだな」
「あいつ、すごいよな」
「まぁ、あいつは別格さ」
「俺は、あいつ嫌いだけどな」
「ははっ、お前は才能がないからだろ」
「うるせぇよ」
俺のことを話しているのは、知っていたが、横目で見ながら、マントを翻ひるがえしながら横を通り過ぎていく。
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