【異能な転生者】主人公が成長していく物語
プロローグ(前世のアルベルト編)4
プロローグ(前世のアルベルト編)4
俺は両親に置いて行かれて、そして村からも追放された。
俺を引き取ったのは、国軍だった。
村から俺を引き取った国軍も、初めは馬に乗せてくれたが、村から見えなくなると俺は歩かされた。
それも逃げないように腰にロープで繋がれた。
馬とロープで繋がれた俺は、馬に引っ張られながら歩いたけど、初めは転んで膝を擦りむいてしまったけど、手当てなんかしてくれない。
ただ笑うだけ‥‥‥
俺が両親の後ろにいた魔物から二人を守ったのに、どうして俺を置いて出て行ったの?
今でも俺は、あの時のサンドイッチの味を覚えているし、父親が肩車してくれたこと。
どうして両親はいなくなったの?
どこに行ったの?
あんなに楽しかったことが夢のような一幕になってしまった。
もう俺が戻ることもできない幸せな光景。
軍は、暖かく気持ちが良い人の温もりなんて、感じるような環境じゃない。
つらく、冷たい環境が俺を待っていた。
*
俺は8歳の時に、村に軍人が来て、村長と何か話をして袋をもらっていた。
多分、あの中にはお金が入っていたと思う、そうだ、俺は村長に、はした金で売られたわけだ。
俺は軍では、雑用をしているけど、ここの連中は暴力的でガサツで、どうしようもない。
「今日から、ここがお前の寝床だ」と一人の軍人が、掃除道具が入った隙間だらけの小屋を俺の住む場所だと連れてきた。
「今日から、ここで寝るんですか?」
「そうだ、脱走するんじゃないぞ、朝は、日が上がる前に起きて、水くみからだ」
「はい」
「水汲みが終わったら、洗濯と掃除だ」
「井戸を使うが、井戸は、あそこにあるのを使え」と言って指差したところに井戸があった。
「返事は?」
「あっ、はい、わかりました」
「そして掃除道具は、そこにある」と言って俺が寝る小屋を指した。
「はい」
「そして洗濯場は、井戸の近くで洗って、干すところも近くだ」
「はい」
「そしてお前の食事だが、みんなが食べ終わった後だ」
「はい」
「つまりみんなが食べ残さなかったら、お前の分はない‥ということだ」
「‥‥‥はい」
「いいな、お前は軍に売られたんだ、それだけの働きをしなければならない、俺も協力できるのは、ここまでだ、まぁ、しっかり頑張ってくれ」
「はい」と答えて案内してくれた人は立ち去った。
俺は、小屋の中を見てみた。
小屋の中には匂うような毛布が一枚だけ置いてあった。
*
8歳になっても、当然、軍に入れる年齢じゃないから、俺は住み込みながら雑用をすることになった。
住み込みと言っても、雨は防ぐことができる程度の小屋を与えらてれいるだけ、もちろん雨が激しく降れば、濡れてしまう。
冬であれば、寒さで眠れないこともある、毛布一枚しかないから、ガタガタ震えて眠ることさえできない。
軍が引き取った理由は、俺が孤児だからと言う理由と、もう一つ、雑用の下働きをさせるためだ。
俺は、いまだに両親がいなくなった理由が、よくわからない。
どうして親が魔物に襲われそうになったのを守ったのに、俺を化け物って言ったのか。
最後に、あんなに暖かかった家が、一気になくなってしまった。
優しいお母さん、俺を笑わしてくれるお父さんは‥‥もういない。
ここにきて初めの頃は、思い出して泣いていた。
本当に今でも、村の家のことを考えてしまうと涙が出るけど、泣いていると余計に殴られる。
俺をいじめている軍人がいるからだ。
俺が食堂をモップで掃除をしていると、まだ残っている軍人がいるけど、嫌な奴ばかり残っている。
その、嫌な奴の足もとの床を掃除しようとするけど、足を退けてくれない。
他の奴らと俺をみながら話して笑っている。
「俺の靴をキレイにしてくれるのか?」
「こんな奴は、こうやればいいんだよ」と言って俺の尻を蹴飛ばす。
俺は蹴飛ばされて床に転げるけど、睨んだら、また、やられるから、目を合わせない。
俺が立ち上がって、離れようとしたけど、「おいっ、どこにいくんだよ」と言いながら、追いかけてくる。
俺は料理を作るところに逃げ込んで難を逃れた。
「あなた、ひどい目にあっているみたいね」と食堂のおばちゃん。
「いえ、食事がもらえるだけいいです」ということしかできない。
食堂のおばちゃんが、「あんた、これ、持っていきな」と言ってパンをくれた。
「ごめんね、今日は、食事が残っていないんだよ、これしかなくて、すまないね」と俺はおばちゃんが差し出してくれたパンをお礼を言ってポケットに押し込んだ。
調理場に逃げた俺を横目でみながら、軍人は食堂から立ち去った。
俺は食堂の掃除を続けることはできる。
こんな生活が嫌になるが、出ていくことはできない。
出て行けるのは15歳になってからだ。
それまでは軍の人が払ったはした金の分、働く必要がある。
*
俺のあまりに変化してしまった生活を思い出して涙を流すのは、俺が寝る物置き小屋だけにしている、というか、忙しくて昼間に思い出すことがない。
俺のことを気を遣ってこき使っているんだったらまだしも、全然そんなことない。
だから俺は、涙を流すのが少なくなった。
俺が洗濯物を洗うため井戸にいくと、いつもの軍人がいた。
「おいアル、シカトしてんじゃねえぞ」
「なんとか言えよ、えっ、アルよ」
「なんだか、こいつみていると殴りたくなるな」
「おいおい、顔はやめておけよ」
「わかっているよ」
「おりゃ〜」と言いながら、俺は腹を殴られたり、蹴られたりした。
「はぁ、これでスッキリした」
「おい、行こうぜ」
俺は散らばった洗濯物を集めて、お腹の痛みを手で抑える。
「いててっ」しばらくは洗濯物を集めても動けなかった。
俺は痛む腹を抑えながら、洗濯をしないと次の雑用が待っている。
無理をしてでも洗濯を徐々にこなしていくが手が冷たい。
「ハァ〜、ハァ〜」と手に息を吹きかけても少しも温もることはない。
出てくる涙を冷たい手で拭きながら、洗濯物を洗う。
*
俺が唯一、気を抜くことができるのは俺が寝泊まりする小屋だけだ、それは掃除道具が入れてある小屋だ。
寝泊まりする小屋は、もちろんベットなんかない。
軍は、俺に衣食住があるからといってお金をくれることもない。
本当の住み込みで、提供してもらえるだけありがたいと思えと、よく言われる。
まぁ、世の中には、 浮浪者などの孤児もいるので雨がしのげるだけ良いのかもわからない。
逆に俺は、これでも良い方だと、考えると気持ちが少しだけ楽になる。
俺が着ている服も、もちろん廃棄される寸前の服を着ている。
あちらこちら、破れたり、ボタンは取れたり、引きちぎられたりしているけど、大きな穴が空いている服もある。
それらをもらって捨てないで、冬は毛布代わりにしている。
また、ぼろ布を下にひくと、少し寝やすくなるから。
それらをもらえるだけでも、良しと思わないと、やっていけない。
俺は普段は、掃除や洗濯を主にしているけど、洗濯なんて、一日かかっても終わらない。
洗濯するものは、軍服は専門の業者がいるから良いけど、シャツやパンツを洗うのが、俺の仕事。
またタオルなんかも俺が洗っているけど、夏は良いけど冬は水が冷たたくてたまらない。
井戸水を使うけど、冷たくて手が凍えて動きが悪くなってしまう。
しっかり洗わないと、殴られるし、本当、軍から抜け出したい。
でも食べ物は残り物をもらえるから、食べることには良いと思わなければ。
毎日のトイレ掃除、軍人が寝る部屋の掃除なども俺の仕事になることもある。
他に用事を言われて、それをしているとサボっていると思われて殴られる。
それを言うと『言い訳するな』って言われる。
本当のことを言っても、殴る奴は決まっている。
*
俺がいるところは軍だから、簡単な魔法を練習場でしているけど、時々は、練習を見ることはできた。
全員が剣で戦う練習をしたり、魔法師が魔法を使う練習を見る機会もあった。
魔法師が、魔法の練習は、炎の魔法をして、的に当てる練習をしているのを、よく見る機会があったけど、手の上に火を出して、的に当てることを正確にできるか、そして威力。
火を目的に向かって行かせる正確さ、あとは燃やす威力が必要だぞと、指揮している人は言っていた。
指揮官「いいか、魔法師は、正確に的に当てる必要がある」
指揮官「あとは、炎の強さだ」
「はい、わかりました、軍曹」と答えながら、練習をしている。
俺が、今、興味があるのは、剣で戦うことよりも魔法の方が気になる。
だけど、雑用係だから、教えてくれることもないから、横目でみながら横を通り過ぎる。
また、俺の仕事は、朝、早くから起きて、水汲み、掃除、剣を磨くこと馬の世話をすることもあり、時には、蹴られたり、殴られることも少なくなかった。
「何をノロノロしてんだよ」
「すみません」
「早く掃除しろよ」
俺は、それだけで蹴られた。
痛む脇腹を抱えながら、必死で雑用をこなした。
蹴った男と周囲の男数人は、笑っているだけ。
「ギャハハ」
「このノロマやろう」
軍人の中でも優しい人がいて、俺をかばってくれることもあった。
「おいおい、大丈夫かぁ」と言って俺に駆け寄ってくれた人はいた。
しかし、かばえば、その人が殴られることもあって、次第にかばってくれる人もいなくなってしまった。
俺は一人になってしまった。
両親からも捨てられて、軍でも居場所がない…
いつも雑用を押し付けられるので、空いている時間がなかったが、軍人が練習している横を通ったり、また隠れながら軍人が魔法の練習をしているのを見ることはできた。
「なに、見ながら通ってんだよ、早く行け」
しかし、横を通り過ぎる時に、見つかればサボっていると思われて、殴られることもあった。
いつも、いつも自分にちょっかいをかける奴は同じ奴だ。
俺はいつか、仕返しをしようと考えていたけど、8歳の俺では無理だ。
俺の寝床は、物置き小屋だから、夜になる時は、一人になることができた。
夏は蒸し暑いし、冬は隙間風が吹いているので毛布にくるまっているけど冬は寒くてたまらない。
毛布が一枚と廃棄する軍服しかないから。
今は冬なので、ガタガタ体が震え出すくらい寒い。
まだ村にいて家族がいた時、自分が魔物をやっつけた魔法のことを思い出した。
寒くて手が冷たい、手が赤くなっている。
寒くて体も震えるし、手も冷たくなっているけど、 軍人たちが練習に使っていた炎の魔法のことを思い出して、手を広げてイメージをしてみる。
軍人たちは練習で「ファイヤ」と唱えていたので、俺も真似てみた。
そうすると手の平に小さいけど炎が出てきて揺らいでいる。
「できた」
「あ〜暖かい」
自分でも魔法が使えることが嬉しくて、それだけが俺の心の支えになっている。
できるだけ暇な時を見つけて、物置小屋で魔法を使って暖を取ることを覚えた。
時には、大きく炎が上がったときもあって、小屋に燃え移りそうだったけど、小さくなれと言って集中したら、炎は小さくなってくれた。
炎をコントロールすることを覚えようと思って、寒いから寝ていられなくて寝る時間を割いて練習した。
いつかは見返してやる、あんな奴らに負けるもんか!!
俺は涙が出てきた。
流れる涙を袖で拭きながら、俺は、一生けんめい練習した。
手のヒラに燃え上がる炎を見ていると村での両親がいた頃を思い出してきた。
お母さんの暖かさ、母親に抱きつくと暖かくて、優しく俺を包んでくれた。
父さんの体も手が畑仕事でゴツゴツしているけど、とても大きくて安心する手だった。
俺の思いと感情が増したみたいで、掌の炎も、より一層、赤さが強くなった。
へー、感情でも炎って変わるんだ、と思った。
手のひらに燃え上がる炎をみながら、抑えようとした涙があとから、あとから流れて、止まらなかった。
あふれる涙を袖で拭きながら魔法の練習した。
その時、炎に異変が起きた。
「あれ、炎の色がさっきの赤と違うぞ」
練習を続けていると炎の色が変わってくるのが、わかった。
「さっきは赤色だったのに、今度は青い炎だ」
なぜ色が変わったのか意味はわからなかったけど、色が変わるのが面白くて炎で遊んだ、
俺は炎の色が変わるのが、面白くて赤色や青色や白、オレンジというふうに変化させながら遊んでいた。
俺は毎日、寝る前に時間を作って魔法の練習というよりも、魔法で遊んでいた。
寒さで目が覚めてしまうので、炎を出したままにできないか、やってみるとできた。
俺は寒さで横にはなれないから、座ったまま、壁に背を預けながら、炎を出したまま寝た。
本当に毎日、毎日、暇さえあれば俺は時間を見つけて遊んだ。
昼間は俺を狙う奴は、俺を何も理由がないのに殴ってきたり、体に青いアザがあっても、服の中だから、誰にも見つかることはなく、俺をいたぶるには、ちょうどよかったみたいだ。
毎日、毎日、自分が上司から言われることの吐口が俺だった。
だから、どこにいても、俺を探し出して殴ってくる。
俺は両親に置いて行かれて、そして村からも追放された。
俺を引き取ったのは、国軍だった。
村から俺を引き取った国軍も、初めは馬に乗せてくれたが、村から見えなくなると俺は歩かされた。
それも逃げないように腰にロープで繋がれた。
馬とロープで繋がれた俺は、馬に引っ張られながら歩いたけど、初めは転んで膝を擦りむいてしまったけど、手当てなんかしてくれない。
ただ笑うだけ‥‥‥
俺が両親の後ろにいた魔物から二人を守ったのに、どうして俺を置いて出て行ったの?
今でも俺は、あの時のサンドイッチの味を覚えているし、父親が肩車してくれたこと。
どうして両親はいなくなったの?
どこに行ったの?
あんなに楽しかったことが夢のような一幕になってしまった。
もう俺が戻ることもできない幸せな光景。
軍は、暖かく気持ちが良い人の温もりなんて、感じるような環境じゃない。
つらく、冷たい環境が俺を待っていた。
*
俺は8歳の時に、村に軍人が来て、村長と何か話をして袋をもらっていた。
多分、あの中にはお金が入っていたと思う、そうだ、俺は村長に、はした金で売られたわけだ。
俺は軍では、雑用をしているけど、ここの連中は暴力的でガサツで、どうしようもない。
「今日から、ここがお前の寝床だ」と一人の軍人が、掃除道具が入った隙間だらけの小屋を俺の住む場所だと連れてきた。
「今日から、ここで寝るんですか?」
「そうだ、脱走するんじゃないぞ、朝は、日が上がる前に起きて、水くみからだ」
「はい」
「水汲みが終わったら、洗濯と掃除だ」
「井戸を使うが、井戸は、あそこにあるのを使え」と言って指差したところに井戸があった。
「返事は?」
「あっ、はい、わかりました」
「そして掃除道具は、そこにある」と言って俺が寝る小屋を指した。
「はい」
「そして洗濯場は、井戸の近くで洗って、干すところも近くだ」
「はい」
「そしてお前の食事だが、みんなが食べ終わった後だ」
「はい」
「つまりみんなが食べ残さなかったら、お前の分はない‥ということだ」
「‥‥‥はい」
「いいな、お前は軍に売られたんだ、それだけの働きをしなければならない、俺も協力できるのは、ここまでだ、まぁ、しっかり頑張ってくれ」
「はい」と答えて案内してくれた人は立ち去った。
俺は、小屋の中を見てみた。
小屋の中には匂うような毛布が一枚だけ置いてあった。
*
8歳になっても、当然、軍に入れる年齢じゃないから、俺は住み込みながら雑用をすることになった。
住み込みと言っても、雨は防ぐことができる程度の小屋を与えらてれいるだけ、もちろん雨が激しく降れば、濡れてしまう。
冬であれば、寒さで眠れないこともある、毛布一枚しかないから、ガタガタ震えて眠ることさえできない。
軍が引き取った理由は、俺が孤児だからと言う理由と、もう一つ、雑用の下働きをさせるためだ。
俺は、いまだに両親がいなくなった理由が、よくわからない。
どうして親が魔物に襲われそうになったのを守ったのに、俺を化け物って言ったのか。
最後に、あんなに暖かかった家が、一気になくなってしまった。
優しいお母さん、俺を笑わしてくれるお父さんは‥‥もういない。
ここにきて初めの頃は、思い出して泣いていた。
本当に今でも、村の家のことを考えてしまうと涙が出るけど、泣いていると余計に殴られる。
俺をいじめている軍人がいるからだ。
俺が食堂をモップで掃除をしていると、まだ残っている軍人がいるけど、嫌な奴ばかり残っている。
その、嫌な奴の足もとの床を掃除しようとするけど、足を退けてくれない。
他の奴らと俺をみながら話して笑っている。
「俺の靴をキレイにしてくれるのか?」
「こんな奴は、こうやればいいんだよ」と言って俺の尻を蹴飛ばす。
俺は蹴飛ばされて床に転げるけど、睨んだら、また、やられるから、目を合わせない。
俺が立ち上がって、離れようとしたけど、「おいっ、どこにいくんだよ」と言いながら、追いかけてくる。
俺は料理を作るところに逃げ込んで難を逃れた。
「あなた、ひどい目にあっているみたいね」と食堂のおばちゃん。
「いえ、食事がもらえるだけいいです」ということしかできない。
食堂のおばちゃんが、「あんた、これ、持っていきな」と言ってパンをくれた。
「ごめんね、今日は、食事が残っていないんだよ、これしかなくて、すまないね」と俺はおばちゃんが差し出してくれたパンをお礼を言ってポケットに押し込んだ。
調理場に逃げた俺を横目でみながら、軍人は食堂から立ち去った。
俺は食堂の掃除を続けることはできる。
こんな生活が嫌になるが、出ていくことはできない。
出て行けるのは15歳になってからだ。
それまでは軍の人が払ったはした金の分、働く必要がある。
*
俺のあまりに変化してしまった生活を思い出して涙を流すのは、俺が寝る物置き小屋だけにしている、というか、忙しくて昼間に思い出すことがない。
俺のことを気を遣ってこき使っているんだったらまだしも、全然そんなことない。
だから俺は、涙を流すのが少なくなった。
俺が洗濯物を洗うため井戸にいくと、いつもの軍人がいた。
「おいアル、シカトしてんじゃねえぞ」
「なんとか言えよ、えっ、アルよ」
「なんだか、こいつみていると殴りたくなるな」
「おいおい、顔はやめておけよ」
「わかっているよ」
「おりゃ〜」と言いながら、俺は腹を殴られたり、蹴られたりした。
「はぁ、これでスッキリした」
「おい、行こうぜ」
俺は散らばった洗濯物を集めて、お腹の痛みを手で抑える。
「いててっ」しばらくは洗濯物を集めても動けなかった。
俺は痛む腹を抑えながら、洗濯をしないと次の雑用が待っている。
無理をしてでも洗濯を徐々にこなしていくが手が冷たい。
「ハァ〜、ハァ〜」と手に息を吹きかけても少しも温もることはない。
出てくる涙を冷たい手で拭きながら、洗濯物を洗う。
*
俺が唯一、気を抜くことができるのは俺が寝泊まりする小屋だけだ、それは掃除道具が入れてある小屋だ。
寝泊まりする小屋は、もちろんベットなんかない。
軍は、俺に衣食住があるからといってお金をくれることもない。
本当の住み込みで、提供してもらえるだけありがたいと思えと、よく言われる。
まぁ、世の中には、 浮浪者などの孤児もいるので雨がしのげるだけ良いのかもわからない。
逆に俺は、これでも良い方だと、考えると気持ちが少しだけ楽になる。
俺が着ている服も、もちろん廃棄される寸前の服を着ている。
あちらこちら、破れたり、ボタンは取れたり、引きちぎられたりしているけど、大きな穴が空いている服もある。
それらをもらって捨てないで、冬は毛布代わりにしている。
また、ぼろ布を下にひくと、少し寝やすくなるから。
それらをもらえるだけでも、良しと思わないと、やっていけない。
俺は普段は、掃除や洗濯を主にしているけど、洗濯なんて、一日かかっても終わらない。
洗濯するものは、軍服は専門の業者がいるから良いけど、シャツやパンツを洗うのが、俺の仕事。
またタオルなんかも俺が洗っているけど、夏は良いけど冬は水が冷たたくてたまらない。
井戸水を使うけど、冷たくて手が凍えて動きが悪くなってしまう。
しっかり洗わないと、殴られるし、本当、軍から抜け出したい。
でも食べ物は残り物をもらえるから、食べることには良いと思わなければ。
毎日のトイレ掃除、軍人が寝る部屋の掃除なども俺の仕事になることもある。
他に用事を言われて、それをしているとサボっていると思われて殴られる。
それを言うと『言い訳するな』って言われる。
本当のことを言っても、殴る奴は決まっている。
*
俺がいるところは軍だから、簡単な魔法を練習場でしているけど、時々は、練習を見ることはできた。
全員が剣で戦う練習をしたり、魔法師が魔法を使う練習を見る機会もあった。
魔法師が、魔法の練習は、炎の魔法をして、的に当てる練習をしているのを、よく見る機会があったけど、手の上に火を出して、的に当てることを正確にできるか、そして威力。
火を目的に向かって行かせる正確さ、あとは燃やす威力が必要だぞと、指揮している人は言っていた。
指揮官「いいか、魔法師は、正確に的に当てる必要がある」
指揮官「あとは、炎の強さだ」
「はい、わかりました、軍曹」と答えながら、練習をしている。
俺が、今、興味があるのは、剣で戦うことよりも魔法の方が気になる。
だけど、雑用係だから、教えてくれることもないから、横目でみながら横を通り過ぎる。
また、俺の仕事は、朝、早くから起きて、水汲み、掃除、剣を磨くこと馬の世話をすることもあり、時には、蹴られたり、殴られることも少なくなかった。
「何をノロノロしてんだよ」
「すみません」
「早く掃除しろよ」
俺は、それだけで蹴られた。
痛む脇腹を抱えながら、必死で雑用をこなした。
蹴った男と周囲の男数人は、笑っているだけ。
「ギャハハ」
「このノロマやろう」
軍人の中でも優しい人がいて、俺をかばってくれることもあった。
「おいおい、大丈夫かぁ」と言って俺に駆け寄ってくれた人はいた。
しかし、かばえば、その人が殴られることもあって、次第にかばってくれる人もいなくなってしまった。
俺は一人になってしまった。
両親からも捨てられて、軍でも居場所がない…
いつも雑用を押し付けられるので、空いている時間がなかったが、軍人が練習している横を通ったり、また隠れながら軍人が魔法の練習をしているのを見ることはできた。
「なに、見ながら通ってんだよ、早く行け」
しかし、横を通り過ぎる時に、見つかればサボっていると思われて、殴られることもあった。
いつも、いつも自分にちょっかいをかける奴は同じ奴だ。
俺はいつか、仕返しをしようと考えていたけど、8歳の俺では無理だ。
俺の寝床は、物置き小屋だから、夜になる時は、一人になることができた。
夏は蒸し暑いし、冬は隙間風が吹いているので毛布にくるまっているけど冬は寒くてたまらない。
毛布が一枚と廃棄する軍服しかないから。
今は冬なので、ガタガタ体が震え出すくらい寒い。
まだ村にいて家族がいた時、自分が魔物をやっつけた魔法のことを思い出した。
寒くて手が冷たい、手が赤くなっている。
寒くて体も震えるし、手も冷たくなっているけど、 軍人たちが練習に使っていた炎の魔法のことを思い出して、手を広げてイメージをしてみる。
軍人たちは練習で「ファイヤ」と唱えていたので、俺も真似てみた。
そうすると手の平に小さいけど炎が出てきて揺らいでいる。
「できた」
「あ〜暖かい」
自分でも魔法が使えることが嬉しくて、それだけが俺の心の支えになっている。
できるだけ暇な時を見つけて、物置小屋で魔法を使って暖を取ることを覚えた。
時には、大きく炎が上がったときもあって、小屋に燃え移りそうだったけど、小さくなれと言って集中したら、炎は小さくなってくれた。
炎をコントロールすることを覚えようと思って、寒いから寝ていられなくて寝る時間を割いて練習した。
いつかは見返してやる、あんな奴らに負けるもんか!!
俺は涙が出てきた。
流れる涙を袖で拭きながら、俺は、一生けんめい練習した。
手のヒラに燃え上がる炎を見ていると村での両親がいた頃を思い出してきた。
お母さんの暖かさ、母親に抱きつくと暖かくて、優しく俺を包んでくれた。
父さんの体も手が畑仕事でゴツゴツしているけど、とても大きくて安心する手だった。
俺の思いと感情が増したみたいで、掌の炎も、より一層、赤さが強くなった。
へー、感情でも炎って変わるんだ、と思った。
手のひらに燃え上がる炎をみながら、抑えようとした涙があとから、あとから流れて、止まらなかった。
あふれる涙を袖で拭きながら魔法の練習した。
その時、炎に異変が起きた。
「あれ、炎の色がさっきの赤と違うぞ」
練習を続けていると炎の色が変わってくるのが、わかった。
「さっきは赤色だったのに、今度は青い炎だ」
なぜ色が変わったのか意味はわからなかったけど、色が変わるのが面白くて炎で遊んだ、
俺は炎の色が変わるのが、面白くて赤色や青色や白、オレンジというふうに変化させながら遊んでいた。
俺は毎日、寝る前に時間を作って魔法の練習というよりも、魔法で遊んでいた。
寒さで目が覚めてしまうので、炎を出したままにできないか、やってみるとできた。
俺は寒さで横にはなれないから、座ったまま、壁に背を預けながら、炎を出したまま寝た。
本当に毎日、毎日、暇さえあれば俺は時間を見つけて遊んだ。
昼間は俺を狙う奴は、俺を何も理由がないのに殴ってきたり、体に青いアザがあっても、服の中だから、誰にも見つかることはなく、俺をいたぶるには、ちょうどよかったみたいだ。
毎日、毎日、自分が上司から言われることの吐口が俺だった。
だから、どこにいても、俺を探し出して殴ってくる。
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