巨乳バニーガールと最強空手ギャルが弱虫オタクと同棲中~検証ダンジョン必勝ガイド

ノベルバユーザー587413

第二章 社会と現実はさほど甘くない。

バニーちゃんと一緒(17)

 目覚めると自分の部屋だった。なぜか記憶はあやふやだけど。
大混乱の真っ只中。おかしなことだけど窓の外まで妙に明るい。

 ベッド脇に充電中のスマホ。画面を眺めて驚きで二度見した。

「えっと昨日は……ホンダの納車だ。二人が誘拐された速報から
救出劇だったよね。阿波座の交番に駐車したんだ。それで……」

 なんともなく聴いた気がする永依の絶叫。目覚めると自室だ。

 おそらくは意識を失った。そのまま誰かが運んでくれたかなと
それ以外に正解の見つけられない状況。自分でも信じられない。


「体の不調なんかもない。単純に精神的な疲労で倒れたのかな」
 そんなこともあるのだろう。いろいろと問題ありすぎたから。

 朝飯は食い損ねたらしい。間もなく時刻も正午で昼食だろう。

 面倒くさいからシャワーは諦めた。着衣だけをすべて改める。

 寝すぎた欠伸。全身のだるさを意識しながらのエレベータだ。
一階到着で正面がフィッシュオン。なぜか店が暗闇なんだけど。

 そういえば部屋に二人もいなかった。まさか登校したのかな?
いきなりの誘拐事件だ。そんな状況でも学校いくのは無謀だよ。


 真っ暗闇の店内。違和感しか覚えない状況だった。自動ドアに
怯むことはない。いつもどおりなにも意識せずにくぐり抜ける。

 ひそひそと聴こえる小声や息遣い。何気ない人間の気配だよ。


『ハッピバースデーケージー! ハッピバースデーケージー!』
 いきなり響いた不協和音。世界一有名なバースデーソングだ。

『ハッピバースデーディアケージー! ハピバースデーケージ!
うおおおおぉぉぉぉっっっっ。28歳お誕生日おめでとうっ!』

 電子ピアノによる伴奏。大合唱と同時に煌々ともされる輝き。


 自分のことは気にしない。一切顧みることのない人生だった。
実姉から世捨て人扱いされる程度に引きこもり。出不精の体質。

 特別に人間不信とか他者と交流それ自体が嫌なわけでもない。

 右足を失い自由が利かず誰かの助けを必要とする状況なんだ。
面倒くさいから障がい者の意識としては振りかざせないだけだ。

 これも健常者だったプライドか。そこからきた悪影響だろう。
病に罹患したから悪いわけじゃない。長らえた命も僥倖なんだ。

 どこかで素直になれない自分に対して辟易する気持ちはある。
それにできることを探しながら頑張れる範囲で努力はしたんだ。


 昔は五体満足で健康すぎる肉体。それなりに優れた容姿があり
自尊心も高かった。最初は走れないのが嫌ですべてから逃げた。

 立ち直るきっかけになった車いす少女と交わした約束なんだ。
手術前に天使から授かったオマジナイ。初めてのチュウだった。

 いつかは彼女と再会する。その瞬間のために後悔したくない。
天使か小悪魔。現実として存在するから堕天使かもしれないね。

 ただ彼女に恥じるような人生を歩むつもりもなかっただけだ。


 再会した瞬間に指輪を手渡しながら求婚することが生きがい。
コミュニケーションも煩わしさが先になるから忌避するだけだ。

 寂しい瞬間もある。人恋しくなる状況もまれには訪れるから。
真摯な人づきあいと恋愛から遠ざかる状況も自信のなさだろう。

 天使と交わした約束を守るためだ。自分に言い訳して逃げた。


 考えるだけでも情けないし虚しい。囚われた自分が嫌になる。
それを考えるなら永依は素直。すべてに全力でしかも魅力的だ。

 迷宮生まれのココは分からないことが嫌。それで真剣に学ぶ。

 いつでも人生から逃げた。他者から距離をあけ達観していた。
成り行きに流される形でも姪っ子をうけいれて迷宮を発見した。

 おそらくダンジョンは世界に変革をもたらす存在なんだろう。
これからは従来の価値観も変容して意味をなさない新世界到来。


 後悔しない。約束を守る。今後は助けあいの精神も遵守する。
守られている状況を理解して自ら一歩を踏みだせばいいだろう。

「そっか今日は2月5日だよ。誕生日なんて意識にもなかった」

「ケーちゃんずーっと独り暮らしだったから。これからは三人で
一緒に暮らすんだよ? なんでも一人でやる必要もないからさ」

 ココと並ぶ永依が中心。なぜか真っ白ドレスでコスプレ姿だ。

 こちらに視線をあわせた永依が腕をひらくと静かな宣言する。


「これから家事とかお料理。ケーちゃんお任せにしないからね。
あーしとココちゃんお手伝いするよ。二人も下に住むから安心」

 二人ってなんだ? 一瞬だけ考えてすぐ答えにたどりついた。
自衛隊所属看護師である鈴音さんと警察官僚の美里さんだろう。

 二人が部屋を使用すると気づいた。にぎやかだねと微笑んだ。

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