巨乳バニーガールと最強空手ギャルが弱虫オタクと同棲中~検証ダンジョン必勝ガイド

ノベルバユーザー587413

第二章 社会と現実はさほど甘くない。

バニーちゃんと一緒(12)

 大阪市営地下鉄九条駅。かなり立地がユニークな高架駅舎だ。

 本町方面から阿波座を通過すると数百メートル手前から徐々に
婉曲しながら地上部を走行するのだ。かなり珍しい路線になる。


 交差の阪神電車なんば線は九条駅地下を南北に横断している。

 隣接が地元密着のアーケード付き商店街だ。現在もシャッター
化することなく店舗が日々経営をつづけてにぎわう空間なんだ。

 周囲が昔から遊郭で栄えたそれなりに有名な新地。令和時代に
跡形も残らない有名なストリップ劇場がミニシアターと化した。

 目指す場所は四輪車専門店であるホンダカーズ九条店だった。
中央大通りからは南になる。百メートル離れていない近距離だ。

「よぉケージ。待ちくたびれたぜ」もちろん声の主は英雄さん。
タクシーを横づけして店に近づくと同時に車庫まで誘われたよ。


「かなり待たせて申し訳ないです。ココも無事入学できました」

「あーりがーとさーん。俺よりもケージの応対で正解なんだよ」
 強めに肩をどつかれた。新喜劇芸人の真似をする英雄さんだ。

「さぁていよいよ待ちに待ったご開陳……の前。こっちが先か」

 漫画じみた黒いレンズが覆う巨大丸眼鏡。マスクで顔を隠して
ひっつめた黒髪だ。若い女性が埃まみれの白衣姿で現れたんだ。

「前の魔改造車いす試作。困った際ケージに紹介された相手だ。
オンラインで古い知人でも初対面だろ? 自称魔法使いさんだ」

 英雄さんが伸ばした右の人差し指。示された女性に驚愕する。


「へっ!? 自称無職三十路童貞。完全ヒキコモリのニート君?
たしか東日本大震災で原発事故対応の炎上騒ぎに巻きこんだ男」

「キミがあのケージ君の本体かぁ。アイドル顔ってマジじゃん」
 奥の暗がりから車いすを押して全身現れた。それが知人だと?

 放たれた音声がデスボイス。驚いた表情はこちらだけなんだ。
英雄さんや従業員にお馴染みらしく違和感もない様子に驚いた。

 もしかしなくても……素性を隠すためにボイスチェンジャー。
ぶかぶかの白衣に巨大丸眼鏡。正体を明かさないつもりなんだ。

「うーん一緒にバカばっかやってた相手だ。若い女の子ってさ」


「ボクのことなんかどーでもいいさ。これから新しい足代わりの
保護者プレゼント。さっさとご主人様にむかって自己紹介しろ」

 女性が声をかけた相手は車いす。正しくは座席のスマホだね。

『改めますが初めまして。佳二さまの足代わり。車いす制御専用
AI。スマホが本体女性タイプfemaleとお呼びください」

 どこかダンジョンの機械音に通じる響きがスマホから届いた。

 AIについて詳細などまったくしらない。英雄さんが専門家で
産学共同の事業として開発。展開していることは確かに聴いた。

 本来なら人間の知能をコンピュータで実現するソフトウェア。


 昨今はブラウザ予測変換機能。検索システムから入力補佐まで
大変お世話になる。だがしかし汎用人工知能は実現していない。

「確認しますけど英雄さん。このAI国家機密じゃないです?」

「はっはっはっはケージくん。各種の特許要項で目下申請中だが
いわゆるあれさ。ケージを利用したシミュレーションで叩き台」

 笑いでごまかしたつもりだろうがシャレにもならない事実だ。

「まぁ実験のおつきあいぐらいは構いませんが待ってください。
もともとCIVICプレゼントされるって話のはずなんですが」


 なぜか怒りがこみあげそうになった。当初の目的を確認する。
「良いところに気づいたねぇ。あけち……じゃないケージくん」

「ジョーダンはよしこ……じゃない怪人二十面相なんて時代的に
誰もしりません」双方でボケをかました話題に誰も追随しない。

「こんなこともあろうかと実現させたんだ。驚いてくれたまえ!
プレゼントはこれだよ!」倉庫に明かりがともると同時だった。

 双眸をひらいて全身硬直させるだけで完全に声まで失くした。

 スポットライトを浴びるように鎮座するのはコンパクトカー。
漆黒ボディーだ。形状も間違いなくホンダのCIVICなんだ。

 だがしかし誰が目にしても理解できる半端ない各種の違和感。


 フロント周囲がえげつない。スポイラーには赤く光るLEDが
左右稼働している。理解できるが意味不明なナンバープレート。

 白いプレートにゴシック体。JOKERとだけ描かれている。

『あなたがケージさまですね。この車JOKER2000を制御
しているAIです。キットやキッドは間違いで開発名male』


「絶対CIVICじゃねぇよ! マジでナイト2000じゃん」
 かなりの絶叫になったが悪くないだろう。仕方がない状況だ。

 傍らでアッハッハと笑う英雄さん。クスクスと顔を伏せるのが
自称魔法使いさんだ。二人が恨めしい。なんでこうなるのかな。

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