巨乳バニーガールと最強空手ギャルが弱虫オタクと同棲中~検証ダンジョン必勝ガイド

ノベルバユーザー587413

第二章 社会と現実はさほど甘くない。

バニーちゃんと一緒(9)

 正しく来襲だろう……永依の保護者を放棄した家族が現れた。
おかしな状況を理解できた時点で暦は変化を遂げていたらしい。

 年がら年中気温の高い大阪だ。二月は最も厳しい季節になる。
関西人なら誰でも無言で巻き寿司をかじる節分の季節を迎えた。

 いつしか定まったバレンタインは男側が愛とチョコを贈られる
記念日だろう。閏年を除くと四週間。最短日数で肌寒い季節だ。


「ケージ! 決まったぜ。えらいこと待たされたがな納車……」
 なぜか早朝から高テンション。笑う英雄さんに詰めよられた。

 ダイニング定位置で半ばうろたえる。かなり久しぶりだろう。
疲労困憊した様子の弁護士夫婦だった。実の姉でもある圭子だ。

「ケージおまえが対応しろよ。ココちゃんの入学願書で保護者」

「えっ? 英雄さんが実の父親。戸籍登録時に決まったじゃん」
 信じられない発言に驚愕しながら応じる。実姉に確認したよ。

「あんたもバカじゃないの? 本人同居していない父親が保護人
なれないじゃんよ」睡眠不足なんだろう。怒り顔の圭子さんだ。


「あっマジにそーじゃん。ここで住民票登録できるの三人だよ」
 圭子の説明でようやく納得できた。いまは頭を抱えるだけだ。 


「永依の入学時は表向きに東京からの転校だったから。出席日数
的な問題もない。全中女子空手チャンピオンで下駄も履かせた」

 かなり成績極悪でも身元は確か。前の学校も推薦してくれた。
それでも問題ないから書類で入学できたんだと理解はしている。

 ココは日本語を話せるがロシア育ち。教育歴もない設定だよ。
ウサギの外見も放射能汚染で突然変異。押し切らざるを得ない。

 略歴を説明しながら話術を駆使。乗り切るしかない状況だね。

 ほとんど詐欺まがいで相手の同情心を誘えるかに尽きる状況。
冷や汗にまみれた綱渡り人生だ。そればっかりで嘆くしかない。


 納得できない状況でも騒動の責任者にされた。子供を生むのは
不可能でも背中を見せて導けるのだ。それでなにか伝えられる。

「オレさ。子供がいないのになんで真面目な父親役やってんだ」

「あはは。親の背中見て子供は育つもんだ。お前も結婚準備……
いやぁ本命の女ができる前から得難い経験。できてよかったな」

 容赦なく鼻で笑う実姉だ。頭に響くけど仕方ない状況だろう。
ある種の自業自得で逆らえない性格。流され続けた結果だから。

 いじめられて快感を得るマゾヒズムじゃない。から……大阪の
片隅に引きこもり平々凡々。ただ日々をすごしたいだけなんだ。


 ハーレム状態ってなんだろう。身内でない女の子相手に仲良く
すごした状況かな。短い人生で過去を思い返して一度っきりだ。

 古い住宅街の真ん中に設置された校舎。門扉と校舎の間にある
中央グラウンド。部活同士で毎日の奪いあいだ。インターハイの
出場を本気で目指した。ほとんど走りこみと自主練主体だった。

 どこかに問題があったのかも分からない。現代医学でも原因は
明確じゃないから。確実性のある予防法も存在していないのだ。

 現代も早期の発見と治療で病状進行を食いとめるだけなんだ。
国内の罹患数も年間で数百人程度だ。それぐらい運も悪かった。


 ただ悪運の強さだけが本物。右の大腿骨に強烈な痛みを感じた
練習後にスポーツ障がいで終わらせずに整形外科まで受診した。

 整形でレントゲン検査から即座に骨肉腫が疑われたんだよな。

 父親は海外に単身赴任中。フリーライターの母親も連絡不能。

 あてにならない同居の長男だ。そこで唯一頼りにできた相手は
当時司法研修生で忙しい最中。即座に駆けつけたのが姉の圭子。

 同僚で結婚していた英田勝利さん。拉致して来阪すると三日で
すべてを手配した。最後いい捨てるようにして消えた姉の言葉。

「なにも心配もないからさ。おまえは病気の治療に専念してろ」


 セリフの格好良さ。間違いなく目標でもあり原点なんだろう。

 当時は全国的に珍しかった。大阪市内の小児がん拠点病院だ。
個室を用意して家族クレジットカードも託されての放置だった。

 理解できない状況だ。病院を散策していると運命と邂逅した。


 その中庭で車いすに座り小鳥をあやす姿が正しく天使だった。
天使さまの具現化。象徴的な美しさと儚さに視線を射貫かれた。

「あれっ? あなた新しい患者さん。はじめましてだよね……」
 そうだ。改めてその瞬間だ……正しく一目惚れで恋に堕ちた。

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