巨乳バニーガールと最強空手ギャルが弱虫オタクと同棲中~検証ダンジョン必勝ガイド

ノベルバユーザー587413

第一章 始まりが雨でなく運命?

始まりの迷宮で邂逅(20)

「ケージくんは分析家だっけ。アタシもビックリで魂の予言者?
あの歌よねぇ。魂ぃのぉってネタはダメだよねー。アハハハハ」

 カード裏を確認すると同時だった。なぜか鈴音が笑い転げる。

「アハハじゃないっすから鈴音さん。ルフランって言葉の意味も
輪廻のフランス語読み? そんな直訳のはずで深い言葉ですよ」

「うんうん」説明を聴いて理解したらしい納得顔の鈴音さんだ。


「トラックに引かれちゃったら困るんだけど。仏教的な意味での
輪廻転生いーじゃん。弥勒菩薩さまだって五十六億七千万年後に
復活して救済するんだよ」なぜか笑いが止まらない鈴音さんだ。

「……美里さんの意味がわかんないけどすげぇ。過去の女神?」
 カードを見ながら悩む美里さん。背後から笑顔で問いかけた。

「そうね。女神さまってベルダンディーよね? 過去なんだから
ウルドお姉ちゃん」即座に応じる美里だ。いきなりのオタク属性
全開だけど。ネタ振りとノリの良さに頭を抱えさせられるよね。


「なぜだ……恥じる行動の記憶もない。悪鬼羅刹はおかしいぞ。
英語表記でパーフェクト・ヒューマン。完璧人間になるだろう」

 目前ちいさくつぶやく部隊長だ。眺めながら言葉を失くした。
「戻りました閣下。なぜか分かりません全員にスキルでました」

「やはり階層主討伐とスキルは無関係か。しかし特殊スキルでも
果たす役割次第。所持で反映されるのか身体機能も検証ですね」

 真面目に報告する。口端を歪めて応じた英田副総裁も悩んだ。


「ところでケージ。首相ふくめた党方針もなんとかまとめたよ。
大手の新聞社には状況も伝えた。朝7時のニュースから最低限の
情報を解禁する。ダンジョン周辺は早期の買収に繋げるためだ」

 ゲームや小説では空想の存在だったダンジョン。現実の世界で
確認されましたと報道しても信じる人がどれくらいの割合だよ?

 現実として目にしない限りは眉唾物だと普通に考えるだろう。

 世界は変化した。それを実感できる状況がかなり先になるね。


「なるほど靭公園は市内でも西になる。東は四ツ橋筋で地下鉄の
駅も近いからね。まぁ御堂筋は無理でも四ツ橋の封鎖を目途に」

 生まれ育ちも大阪で土地勘はある。それなりに愛着もあるよ。

「会社で確保した土留め用の矢板。昔の地盤資料で演算させた。
靭公園は5m擁壁RC造の全周封鎖。なにわ筋もバイパス化だ」

 すこし自慢するような閣下が身振りで伝えた内容には驚きだ。


「へっ? なにわ筋も全面封鎖ですか。大渋滞待ったなしだな」
 四ツ橋筋と比較して少数でも一日なら数万台の交通量はある。

「とりあえず中央大通りから土佐堀までは朝7時から通行止め。
迂回させながら地盤の改良とバイパス工事で凌げればいいがね」

 掌で鼻口に触れながら軽く両眼を伏せる閣下だ。思惑を語るが
ゼネコン主体。JVでもかなり長期化する規模の大工事だよね。

「なにわ筋は確かに幹線道路ですが四ツ橋と新なにわまで近い。
それなら買収範囲は東が四ツ橋。西はあみだ筋。北が土佐堀なら
南が本町通かな」左の腕と差し指を振りながら脳内で想像する。


 どの程度住民が影響されて半強制で立ち退かされるんだろう。
軽いイメージだけでも頭を抱えた。おそらく数万人規模になる。

「爺ちゃんとケーちゃんおはよー。なんで深刻な顔してんの?」

 永依が目覚めた。テーブルに腕を伸ばして視線で伝えられた。
眠るココもおおきな白耳に声が届いたらしく意識を取り戻した。

「んーと。ダンジョンができて危険な状況だよね。マスコミから
発表する話かな? どこまでを国の管理下におけるか話してた」

「へぇ。うちのガッコなくなっちゃう? 近くて便利いーのに」

 ごく自然に状況を伝えているが永依の興味は別の対象らしい。
「いや。校舎って北御堂の隣だったよね。おそらくは範囲外だ」


「よかった。そーいや爺ちゃん。ココちゃんでも同じガッコって
行けちゃうのかな?」永依の問い。絶妙に喫緊の課題だろうね。

 日本国籍を取得することはさほど簡単にできるものでもない。

「ふむ。不法入国の外国人扱いもできんよな。どこか遠縁の娘で
ゴリ押しか。長男が外でこしらえた形で裏から手配すりゃ……」

 直孫の期待に応じたい閣下なりの配慮だろう。耳にしながらも
驚愕するだけだ。ここにいない長男の英雄さんも大迷惑だよね。

「まぁ悪くなるような結果にせん。安心して待っとりゃいいさ」


 右掌を振りながら笑う閣下だ。永依が大喜びでココに伝える。
「爺ちゃんありがと。ココちゃんもガッコ通えるなら大忙しだ」

「学校か。この世界と国の仕組みから現状の理解も必須だろう」

 進化した新人類であるココだ。ダンジョンで新たな体と生命を
得た目的探しだ。外の世界で知識を吸収するのが早道だと納得。

「閣下。今後の方向性と優先順位は理解できました。自分たちも
可能な範囲ですが手伝わせてもらいますよ。連絡くださいよね」

 きちんと立ちあがり真摯に目礼しながら生真面目でも伝えた。

 好奇心と成り行き任せだ。それが招いた結果だから仕方ない。


「おぉ。わしらはこれからダンジョン八ケ所を実際に視察する。
連絡代わり姫宮と御手洗を預けるからな。あとから連絡させる」

 パイプ椅子からびしっと快音を響かせながら立ち上がる閣下。
始めと同様に特殊作戦群の精鋭を引き連れた閣下が立ち去った。

「ケーちゃん。あーしらもやっとお家に帰れる」永依が笑った。


「うん。一睡もしてない。ホントに長い一日だ」即座に応じる。

 偶然と誰かの導きだ。本来交わるはずもない三人が邂逅した。
地下ダンジョンが人類に及ぼす影響を理解できる存在もいない。

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