巨乳バニーガールと最強空手ギャルが弱虫オタクと同棲中~検証ダンジョン必勝ガイド

ノベルバユーザー587413

第一章 始まりが雨でなく運命?

喰らう仔ウサギ誕生(間奏2)

――いきなり驚いた直後だ――【始マリノ迷宮デ討伐確認】――
その意味をまったく理解できない機械音が〝彼〟の脳内に響く。


 その音がふたたび追加されて――【討伐者ニ初回特典ノ付与】

 どこかでなにかが発したその音は抑揚も感じない無機質さだ。

 それは地球に存在して活動する生物すべて同時に届けられた。


【重大ナ問題デ付与ノ失敗】――〝彼〟の脳内に限定で響いた。

 この迷宮を支配する〝圧倒的存在〟が〝彼〟を理解できない。
もちろん魔物の討伐は認識しているが不可解すぎる偶然だった。

 なにも与えられずに公園で放置された。愛玩用のペット種だ。
『飲む喰う寝る』生存本能と好奇心。ほかに備わるはずもない。
 
 本能が望んだ飢えと乾きをなくすためにも生きのびる手段だ。

 すべての現象は状況と偶然による導きから結末まで変化する。

 後々の為になる検証の意味でも定められた能力の行使だろう。
〝圧倒的存在〟から〝彼〟にむけた結論で【最終審判】だった。


【初回ノ特典ヲ変更デ行使】――〝彼〟を哀れに感じた結果だ。

 なにもない〝彼〟に自動で付与された能力は加護と呼べない。

 半強制の呪縛として定着する。心臓を喰らうと強くなる異能。


【心臓ヲ喰ライ能力ニ置換】プラス【知識ガ優先デ全能力上昇】
〝彼〟に付与された加護と呼べない呪縛の影響を享受していた。

 古来から地球で誕生した知的な生命体は人間種だけとされた。

 それはのちに判明するとおり錯覚であり願望にすぎなかった。

 あくまで偶然の産物にすぎないが圧倒的な進化を遂げていた。

〝彼〟が本能で理解する飢えと渇きをなくす方法は難しくない。


 躊躇わずに咀嚼した心臓だ。非常に美味しくて栄養価も高い。

 生き残るために心臓を喰らうと残る肉体も〝彼〟が口にした。 

 頬に散った飛沫が気になるのかしきりに前足でこすっている。

 頭部を前後左右に振りつづけて両眼みひらいた喜悦の表現だ。

 愛らしいその姿態と思考の変化した状況も〝彼〟に影響した。

 オッドアイが爛々と輝いた〝彼〟は強い欲望で迷宮を駆ける。
道中で遭遇する巨大なアリにミミズやムカデの雑魚を蹂躙する。

 ただ生きのびようとしてひたすらに飢えと強い渇きを癒した。
単なる雑魚にすぎない弱小の魔物を喰らう〝彼〟は強くなれた。


 はじめて遭遇した魔物である角鼠よりも格段に強敵が現れる。
巨大な角を持つ黒犬と相対しても躊躇しない左爪先一閃だった。

 魔物を討伐した〝彼〟は心臓を喰らう強敵ほど美味しいのだ。

 心臓を喰らいながら前進してやがて――たどりついた最奥部で
――突如として岩肌に現れた巨大扉が――厳かに稼働を始めた。

 〝彼〟には理解できない室内。階層支配者である主部屋は――
――その床一面に不思議な文様が描かれるおおきな円陣だった。

――中央で待機する主は巨大な二つ首をもたげる黒の地獄犬だ。

 その異様すぎる存在感が圧倒的に異なる支配級の魔物だった。


 わずかに数瞬だけ地獄犬と〝彼〟が正面で対峙して交錯する。

 追いすがる敵に対する逃走本能は瞬間速度で60kmに迫る。
階層主の原型とされる狩猟犬は残念ながら最高速度が40km。

 最奥で守護神として出現した魔物は残念な二首の黒い地獄犬。

 それは勝負とも呼べない闘いだったのかもしれない。あまりに
素早い〝彼〟の攻撃は二首の地獄犬に追随できないスピードだ。

 迫りくる左爪先を避けられない階層主は胸の奥まで貫かれた。


 それも本能だが心臓の美味さを理解した〝彼〟の強い欲望だ。

 ただ喰らうだけ意識する速さに特化した一撃は避けられない。

 ちいさな体で縦横無尽に動かす爪先が探しあてた心臓を勢いで
引きずりだした。握りしめた掌で口内に放りこむと同時の咀嚼。

 二首の地獄犬は身動きもできず立ちあがる前に硬直していた。


 両者の現実は厳しい。誕生したばかりの地獄犬の心臓を喰らう
〝彼〟は強靭だ。経験値獲得による互いの力量が異なっていた。

 生命の輝きを失っていく地獄犬。ゆっくり近づく〝彼〟が――

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