【完結】あなた色に染まり……ません!~呉服屋若旦那は年下彼女に独占宣言される~

霧内杳

最終章 ずっと私は貴方のもの9

「なんですか。
今日は特に、可愛い鹿乃子さん」

ちょいちょい、と手招きしたら、漸が身を屈めて顔を寄せてくれる。
背伸びをしてその首へ手を回した。
唇を重ねた瞬間、周囲が息を飲むのがわかった。

「……ったく。
いったい、なにをやっているんですか、貴方は」

はぁーっ、と呆れてため息をつきながらも、漸の姿勢は変わらない。

「だって、漸は私のものなんだもん」

拗ねて唇を尖らせたら、ちゅっ、と唇が触れた。

「そうですね、先ほどから私に向かう視線が嫌ですし、……鹿乃子さんに向かう視線も不愉快です」

「……!」

今度は漸の方から唇が重なる。
しかも彼は身内……どころか知らない人もたくさんいる前で、がっつり舌まで入れてきた。

「……俺は鹿乃子のものだし、鹿乃子も一生、俺のものだ。
もう、神に誓ったしな」

ぺろり、と濡れた唇を舐める漸を、熱に浮かされた目で見ていた。

食事会は何事もなく終わった。
ただ、結婚式、食事会とずっと、祖父と父が男泣きしていて困ったけど。
ええ、祖父はわかるけど、父も泣いていたんだよ!?
あの、私に一歩、引いているような父が!
なんだあれは、ただの演技か、ずっと祖父に遠慮していただけなのか!?

今日は特別な日ですから、と夜は高級ホテルのスイートを取ってくれた。
新婚仕様なのか、お花なんかたくさん飾ってある。

「素敵です!」

「喜んでいただけてよかったです」

振り返ったらちゅっ、と唇が重なる。
それだけで幸せだ。

お風呂は一緒に入った。
後ろから抱き締められ、湯船に浸かる。

「いい式でしたね」

「本当に」

漸の側は一斗さんだけだったし、私の方もほぼ家族だけだったけど。
別に出席者の数が幸せのバロメーターじゃないからかまわない。

「鹿乃子さんはいつも可愛いですが、今日は特別に可愛かったです」

「……ん」

うなじに口付けが落とされ、甘い声が漏れる。
今日は一日中、なにかと漸は「今日は特に可愛い鹿乃子さん」と呼んでいた。

「今日は初夜じゃないですか。
鹿乃子さんのハジメテが欲しいんです」

「ハジメテ……?」

とは?
もう私は、処女ではないわけで。

「鹿乃子さんのここ。
私に愛させてくれませんか」

「えっ!?」

滑り落ちた漸の指先が、つん、つん、と後ろの穴をつつく。

「あの、でも、そこは……」

「鹿乃子さんはBLも嗜んでいらっしゃるので、ここでもできることはご存じでしょう?」

「うっ」

振り返ったら、なんでもお見通しですと漸の唇が僅かに持ち上がった。
なんで私の隠しコレクションを知っているんだ!
うーっ、隠し場所、変えておかないとな……。

「私は鹿乃子さんのハジメテの男になりたいんです。
もちろん、ここはハジメテですよね?」

やわやわとマッサージするように指先がそこを押す。
なんだかそれに、だんだん変な気持ちになってきた。

「……当たり前です」

「だったら鹿乃子のハジメテ、俺にくれ」

耳もとで囁かれ、とうとう熱い顔で頷いた。

「今日の下着もとても扇情的です」

私のバスローブを脱がせ、漸が目尻を下げる。

「今日は思う存分、堪能したいので、ギリギリまで眼鏡をかけたままでいましょう」

「うっ」

それって、いつも以上に見えている、ってことですよね……?
しかも今日は、電気は落としてくれないし。

口付けを繰り返しながら、押し倒されていく。
あたまが枕についたところで、そっと頬を撫でられた。

「さて、鹿乃子さん。
鹿乃子さんの私の男は、私を除いていままで、何人いたんですか?」

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