【完結】あなた色に染まり……ません!~呉服屋若旦那は年下彼女に独占宣言される~
第9章 私と貴方の独占欲2
「え……」
困ったように漸が笑う。
漸のおかげで儲かっているようなものなのに?
悪いが、あのお父さんと弟さんでお客が喜ぶとは思えない。
あ、いや、弟さんは軽薄ホストっぽかったから、案外そういうのが好きなお客がいるのかもしれないが。
「父はお金にがめついですからね。
たとえ息子の私にだって無駄なお金は使いたくありません。
弟はその分、お客様や奥さんの実家からお金をもらっているようですが、私は」
「もう、いますぐにでもお店を辞めましょう!」
漸の手を掴み、顔を寄せる。
あんなお父さん、死ぬほど困ればいい。
「あー、でも、そうすると、金池さんとか困るんですよね……」
現実を思いだし、はぁーっとため息が落ちていく。
漸を傷つける客は困ればいいが、金池さんはとてもいい人でそのあたりも理解したうえで漸と接してくれているようだったので、そういう人が困るのは嫌だ。
「本当に鹿乃子さんは可愛いですね」
ちゅっ、と漸の唇が額に触れる。
「まあ、そういう事情なので、いまさら店からのお給料がなくなったところでほとんど影響はありません。
なので気にすることはないですよ」
「……わかりました」
漸は全く気にしていないようだけど、それでも気になっちゃう。
きっとお父さんはこれだけお世話になった漸に、退職金も払わないんだろうな……。
「それでは、そろそろ出ますね」
玄関に向かう漸に着いていく。
「なにかあったら連絡ください。
店より鹿乃子さんの方が大事ですからね、すぐに駆けつけます。
……あ、そうだ」
雪駄を履いた漸が、私を振り返る。
「一斗なら一日くらい、融通が利くかもしれません。
いまは急ぎの仕事も入っていないはずですし。
連絡、しておきますね。
じゃあ、いってきます」
私の額に口付けを落とし、漸は出ていった。
「……はい?」
なぜにあの人は、自分以外の男とふたりで出掛けることを私に勧める?
「漸ってときどき、考えてることがわかんない……」
ソファーに座り、携帯片手に今日の行動を思案する。
「でも、最低でも電子レンジは買いに行きたいんだよね……。
漸も好きにしていいって言ってくれたし」
ひとりだと持ち帰りは難しいけど、立本さんが一緒ならできそう?
いやいや、ちょっともったいないけど配送って手もあるし。
しかし知識としては秋葉原に行けば大手家電量販店があるのは知っているが、ひとりで買い物ができるんだろうか……?
「うーっ。
田舎者の自分がつらい……」
決心はつかないまま、ぽてっとそのまま、横になった……途端。
――ピコピコ、ピコピコ。
「ひゃぁっ!」
いきなり手の中の携帯が鳴りだし、半ば飛び上がった。
「え、誰……?」
画面を見たが、知らない番号だ。
詐欺電話だと嫌なので無視しようとしたけれど、いつまでたっても鳴り続ける。
「えぇーっ……。
は……」
『さっさと出ろ!』
もしかしたら用事のある電話なのかと出た瞬間、……怒鳴られた。
「えっ、あの?
どなた、ですか?」
『すぐに出られるか?』
「あの、だから、どなた……」
『十五分で着く。
準備しとけ』
言いたいことだけ言って、唐突に切れた。
「だから、誰……?」
あの様子だと十五分後、出られない状態だとまた怒鳴られそうなので、とりあえず出掛ける準備を手早く済ませる。
「あ、もしかして金沢の人だとしたら困るんじゃ……?」
などとも考えたが、地元の知り合いにあんな失礼な人間はいない……はず。
「ええーっ、じゃあ、誰よ……?」
東京で個人的な知り合いは漸の家族を除けば、明希さんと立本さんしかいない。
と、いうことは。
困ったように漸が笑う。
漸のおかげで儲かっているようなものなのに?
悪いが、あのお父さんと弟さんでお客が喜ぶとは思えない。
あ、いや、弟さんは軽薄ホストっぽかったから、案外そういうのが好きなお客がいるのかもしれないが。
「父はお金にがめついですからね。
たとえ息子の私にだって無駄なお金は使いたくありません。
弟はその分、お客様や奥さんの実家からお金をもらっているようですが、私は」
「もう、いますぐにでもお店を辞めましょう!」
漸の手を掴み、顔を寄せる。
あんなお父さん、死ぬほど困ればいい。
「あー、でも、そうすると、金池さんとか困るんですよね……」
現実を思いだし、はぁーっとため息が落ちていく。
漸を傷つける客は困ればいいが、金池さんはとてもいい人でそのあたりも理解したうえで漸と接してくれているようだったので、そういう人が困るのは嫌だ。
「本当に鹿乃子さんは可愛いですね」
ちゅっ、と漸の唇が額に触れる。
「まあ、そういう事情なので、いまさら店からのお給料がなくなったところでほとんど影響はありません。
なので気にすることはないですよ」
「……わかりました」
漸は全く気にしていないようだけど、それでも気になっちゃう。
きっとお父さんはこれだけお世話になった漸に、退職金も払わないんだろうな……。
「それでは、そろそろ出ますね」
玄関に向かう漸に着いていく。
「なにかあったら連絡ください。
店より鹿乃子さんの方が大事ですからね、すぐに駆けつけます。
……あ、そうだ」
雪駄を履いた漸が、私を振り返る。
「一斗なら一日くらい、融通が利くかもしれません。
いまは急ぎの仕事も入っていないはずですし。
連絡、しておきますね。
じゃあ、いってきます」
私の額に口付けを落とし、漸は出ていった。
「……はい?」
なぜにあの人は、自分以外の男とふたりで出掛けることを私に勧める?
「漸ってときどき、考えてることがわかんない……」
ソファーに座り、携帯片手に今日の行動を思案する。
「でも、最低でも電子レンジは買いに行きたいんだよね……。
漸も好きにしていいって言ってくれたし」
ひとりだと持ち帰りは難しいけど、立本さんが一緒ならできそう?
いやいや、ちょっともったいないけど配送って手もあるし。
しかし知識としては秋葉原に行けば大手家電量販店があるのは知っているが、ひとりで買い物ができるんだろうか……?
「うーっ。
田舎者の自分がつらい……」
決心はつかないまま、ぽてっとそのまま、横になった……途端。
――ピコピコ、ピコピコ。
「ひゃぁっ!」
いきなり手の中の携帯が鳴りだし、半ば飛び上がった。
「え、誰……?」
画面を見たが、知らない番号だ。
詐欺電話だと嫌なので無視しようとしたけれど、いつまでたっても鳴り続ける。
「えぇーっ……。
は……」
『さっさと出ろ!』
もしかしたら用事のある電話なのかと出た瞬間、……怒鳴られた。
「えっ、あの?
どなた、ですか?」
『すぐに出られるか?』
「あの、だから、どなた……」
『十五分で着く。
準備しとけ』
言いたいことだけ言って、唐突に切れた。
「だから、誰……?」
あの様子だと十五分後、出られない状態だとまた怒鳴られそうなので、とりあえず出掛ける準備を手早く済ませる。
「あ、もしかして金沢の人だとしたら困るんじゃ……?」
などとも考えたが、地元の知り合いにあんな失礼な人間はいない……はず。
「ええーっ、じゃあ、誰よ……?」
東京で個人的な知り合いは漸の家族を除けば、明希さんと立本さんしかいない。
と、いうことは。
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