【完結】あなた色に染まり……ません!~呉服屋若旦那は年下彼女に独占宣言される~
第8章 私は貴方のもので貴方は私のもの7
「鹿乃子さん?」
「ふふっ、なんでもないです。
漸は男性にしては指が細くて綺麗なので、存在感のある太い指環より、繊細な細い指環が似合いますね、きっと」
意味がわかったのか、漸が私の手を握り返してくる。
「そうですか?
鹿乃子さんこそ小さくて可愛い手をしていますから、細い指環がいいですよね。
というか、サイズは大丈夫なんでしょうか?
細すぎてサイズがないなんてことは……」
みるみる漸の顔が曇っていく。
「大丈夫です。
……たぶん」
よく考えたら、いままで指環なんて着けたことがない。
自分で買うこともなかったし、……もちろん、昔の彼氏からも買ってもらっていない。
そうか、私の指に初めて指環を嵌めるのは、漸なんだ。
「ふふっ」
「鹿乃子さん?」
つい笑ってしまった私の顔を、また漸がのぞく。
「なんでもないです。
あ、これとかどうですか?」
きっとこういうのを、幸せっていうんだろうな。
いくつか候補を選び、見せてもらう。
……が。
「……まさか、私の方がサイズがないだなんて思いませんでした」
がっくりと項垂れた漸と一緒に店を出る。
結局、気に入ったデザインはあったが、漸の指が細すぎてメンズリングのサイズがなかった。
だって、11号だったんだよ、11号!
お直しにひと月ほどかかると聞き、すぐに欲しい漸としては諦めた。
「次のお店はあるといいですねー」
漸には悪いが、ふたりでぷらぷら歩いて回るのはけっこう楽しい。
「案外、こういうところに入ってるお店だと、あるかもしれません」
適当なファッションビルに入り、アクセサリーを見て回った。
でもやはり、ペアリングとなると漸のサイズが厳しくなってくる。
「これは私には、鹿乃子さんのものになる資格がないということなんでしょうか……」
どんどん漸が後ろ向きになり、いじけていく。
「そんなこと、あるはずないじゃないですか!」
指環ごときで、なんていうのは漸には通じないんだろうな。
それほどまでに彼にとって、大事なものみたいだし。
「……はぁーっ」
また、漸の口から物憂げなため息が落ちていく。
「あのですね。
……ペアリングに拘らずに、同じ指環にしたらどうでしょう?」
「だから、ペアのリングのサイズがないんですよ……」
ううっ、もうこの世の終わりみたいな顔をしないで!
「そうじゃなくて。
全く同じ指環の、サイズ違いを買うのはどうですか?」
男性もので11号は厳しいが、女性もので11号はそうではない。
男女兼用できるようなシンプルデザインのものにすれば、問題ないのでは?
「それはいい考えです!」
私の手を両手で掴んだ漸の、顔が迫ってくる。
それはいいが、近すぎる。
さらにここまで近づけたついでだとばかりに、口付けして離れるのはどうかと思う。
「確かにそれだと、大丈夫そうです」
ようやく機嫌がよくなったのか、うきうきと漸は指環を選びだした。
……うん。
人前ではキスは控えてもらうようにしよう。
ちょっと人目が、痛い。
最終、ホワイトゴールドの、少しウェーブの入った細めの指環にした。
「これで鹿乃子さんから印をつけてもらえるのだと思うと、もう」
「そんなに嬉しいですか」
「それはもう」
上機嫌な漸と食事をする。
今日もお客様と来るところだという店に連れてきてくれたが、居心地は悪かった。
うちは選ばれた人間しか入れないのだと、客を選んでいる感がして。
いくら味がよくても、これは嫌だ。
「すみません。
このお店はちょっとあれでしたね」
漸も感じ取ってくれたらしく、デザートは断って店を出た。
代わりに、まだ開いている洋菓子店でケーキを買う。
タクシーもマンションより少し手前で降りて、コンビニでコーヒーを調達した。
帰り着き、ふたりで並んでソファーに座る。
「ふふっ、なんでもないです。
漸は男性にしては指が細くて綺麗なので、存在感のある太い指環より、繊細な細い指環が似合いますね、きっと」
意味がわかったのか、漸が私の手を握り返してくる。
「そうですか?
鹿乃子さんこそ小さくて可愛い手をしていますから、細い指環がいいですよね。
というか、サイズは大丈夫なんでしょうか?
細すぎてサイズがないなんてことは……」
みるみる漸の顔が曇っていく。
「大丈夫です。
……たぶん」
よく考えたら、いままで指環なんて着けたことがない。
自分で買うこともなかったし、……もちろん、昔の彼氏からも買ってもらっていない。
そうか、私の指に初めて指環を嵌めるのは、漸なんだ。
「ふふっ」
「鹿乃子さん?」
つい笑ってしまった私の顔を、また漸がのぞく。
「なんでもないです。
あ、これとかどうですか?」
きっとこういうのを、幸せっていうんだろうな。
いくつか候補を選び、見せてもらう。
……が。
「……まさか、私の方がサイズがないだなんて思いませんでした」
がっくりと項垂れた漸と一緒に店を出る。
結局、気に入ったデザインはあったが、漸の指が細すぎてメンズリングのサイズがなかった。
だって、11号だったんだよ、11号!
お直しにひと月ほどかかると聞き、すぐに欲しい漸としては諦めた。
「次のお店はあるといいですねー」
漸には悪いが、ふたりでぷらぷら歩いて回るのはけっこう楽しい。
「案外、こういうところに入ってるお店だと、あるかもしれません」
適当なファッションビルに入り、アクセサリーを見て回った。
でもやはり、ペアリングとなると漸のサイズが厳しくなってくる。
「これは私には、鹿乃子さんのものになる資格がないということなんでしょうか……」
どんどん漸が後ろ向きになり、いじけていく。
「そんなこと、あるはずないじゃないですか!」
指環ごときで、なんていうのは漸には通じないんだろうな。
それほどまでに彼にとって、大事なものみたいだし。
「……はぁーっ」
また、漸の口から物憂げなため息が落ちていく。
「あのですね。
……ペアリングに拘らずに、同じ指環にしたらどうでしょう?」
「だから、ペアのリングのサイズがないんですよ……」
ううっ、もうこの世の終わりみたいな顔をしないで!
「そうじゃなくて。
全く同じ指環の、サイズ違いを買うのはどうですか?」
男性もので11号は厳しいが、女性もので11号はそうではない。
男女兼用できるようなシンプルデザインのものにすれば、問題ないのでは?
「それはいい考えです!」
私の手を両手で掴んだ漸の、顔が迫ってくる。
それはいいが、近すぎる。
さらにここまで近づけたついでだとばかりに、口付けして離れるのはどうかと思う。
「確かにそれだと、大丈夫そうです」
ようやく機嫌がよくなったのか、うきうきと漸は指環を選びだした。
……うん。
人前ではキスは控えてもらうようにしよう。
ちょっと人目が、痛い。
最終、ホワイトゴールドの、少しウェーブの入った細めの指環にした。
「これで鹿乃子さんから印をつけてもらえるのだと思うと、もう」
「そんなに嬉しいですか」
「それはもう」
上機嫌な漸と食事をする。
今日もお客様と来るところだという店に連れてきてくれたが、居心地は悪かった。
うちは選ばれた人間しか入れないのだと、客を選んでいる感がして。
いくら味がよくても、これは嫌だ。
「すみません。
このお店はちょっとあれでしたね」
漸も感じ取ってくれたらしく、デザートは断って店を出た。
代わりに、まだ開いている洋菓子店でケーキを買う。
タクシーもマンションより少し手前で降りて、コンビニでコーヒーを調達した。
帰り着き、ふたりで並んでソファーに座る。
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