【完結】あなた色に染まり……ません!~呉服屋若旦那は年下彼女に独占宣言される~
第2章 可愛い鹿乃子さん5
あとどれくらい、彼がここへ来るのかはわからないけど。
そうこうしているうちに料理が出てきて、食べる。
「これからどうしますか」
とりあえずカフェにまで来たものの、ノープランだ。
ここは無難に兼六園あたりを案内すればいいのか?
「そうですね……。
不動産屋に行きませんか」
「……は?」
なぜに、不動産屋?
首が傾いたせいで、三橋さんが斜めに見えた。
「こちらでの生活拠点を購入しなければなりませんし……ああ、今日は下見までできたら、というくらいですが」
「購入……?」
さらにわからない単語が出てきて、とうとう視界の彼が横になった。
「新居……に、なりますよね、この場合。
結婚後、私と可愛い鹿乃子さんが生活する家ですから」
「新居……?」
……んー、もしかしてこの人、まだ決定じゃない結婚のために、家なりマンションなり買おうとしているということですか?
「ちょっと待ってください。
私は結婚をOKするだなんて、ひと言も」
「私は絶対に、OKしてくださると確信していますから、心配はご無用です」
涼しい顔で彼は、アイスコーヒーのストローを咥えた。
「いやいやいや、でもダメになったとき、困るじゃないですか」
「ダメになるなんてあるはずがありません。
それにこれからはしょっちゅう、こちらへ来ますからね。
拠点は早く、決めた方がいい」
「うっ」
そーだった、三橋さんの辞書には諦めるという字がないんだった……。
それに確かにしょっちゅう来るのならば、そのたびにホテルに泊まるよりはいいかもしれない。
いや、買うのには反対だけど。
「じゃあ、マンスリー……とは言わないので、せめて賃貸。
賃貸にしませんか?」
「えー」
えーってなんで、そんなに不服そうなんですか?
私としては年末になって、断りづらくなる材料はひとつでも減らしておきたいんですよ。
いまだってもちろん、断る気満々だし。
「絶対に可愛い鹿乃子さんは私の可愛い妻になるので、大丈夫ですのに」
どーでもいいが、その可愛い、可愛いはなんとかならないかな!
「わかりました、仕方ないですが賃貸にしておきます。
そういうわけでこのあと、不動産屋へ行きましょう」
「……はい」
にぱっ、とまた、三橋さんが嬉しそうに笑う。
いつのまにか不動産屋行きは決定事項になっていた。
とはいえ、私が懇意にしている不動産があるわけでもない。
それに知っているのは目立つところにある、全国チェーンのところだけだ。
結局、三橋さんが持っていたタブレットで、借りたい条件の候補から不動産屋を調べてくれた。
さらに、電話でアポイントまで。
母の軽自動車で不動産屋へ向かう。
なんだかちまっと助手席に収まっている三橋さんが、可愛く見えてきた。
「今日はどのようなご用件で?」
にっこりと笑って椅子を勧めてくれた、担当男性はさすがだと思う。
どうみても私たちは、怪しいふたりだと思うのに。
カフェでもちらちらと見られているのは知っていた。
「いま、東京に住んでいるんですが、これからはちょくちょくこちらへ来るので、拠点となる家を借りたいんですが」
「間取り等、ご条件は?」
「そうですね……」
ただ黙って、ふたりの会話を聞いていた。
だって借りるのは三橋さんの家であって、私には関係ない……はずがないのだ。
「鹿乃子さんはどっちがいいですか」
「はいっ!?」
新しい半襟の図案はお正月らしく、縁起物で……なんてあたまの中で描いていたところで、現実に戻される。
……どっち、とは?
と思いいつつ、三橋さんが指さす先を見た。
それは二軒の間取り図だったが、……なんかおかしくないですか?
だって、LDKだとおぼしき場所が、半端なく広い。
部屋数も五つくらいある。
「えっと?」
「ここだと東京と同じ予算で、広い部屋が借りられますね」
なんて三橋さんは笑っているが、そういう問題じゃないと思う。
「年末までの仮拠点なんですよね?」
そうこうしているうちに料理が出てきて、食べる。
「これからどうしますか」
とりあえずカフェにまで来たものの、ノープランだ。
ここは無難に兼六園あたりを案内すればいいのか?
「そうですね……。
不動産屋に行きませんか」
「……は?」
なぜに、不動産屋?
首が傾いたせいで、三橋さんが斜めに見えた。
「こちらでの生活拠点を購入しなければなりませんし……ああ、今日は下見までできたら、というくらいですが」
「購入……?」
さらにわからない単語が出てきて、とうとう視界の彼が横になった。
「新居……に、なりますよね、この場合。
結婚後、私と可愛い鹿乃子さんが生活する家ですから」
「新居……?」
……んー、もしかしてこの人、まだ決定じゃない結婚のために、家なりマンションなり買おうとしているということですか?
「ちょっと待ってください。
私は結婚をOKするだなんて、ひと言も」
「私は絶対に、OKしてくださると確信していますから、心配はご無用です」
涼しい顔で彼は、アイスコーヒーのストローを咥えた。
「いやいやいや、でもダメになったとき、困るじゃないですか」
「ダメになるなんてあるはずがありません。
それにこれからはしょっちゅう、こちらへ来ますからね。
拠点は早く、決めた方がいい」
「うっ」
そーだった、三橋さんの辞書には諦めるという字がないんだった……。
それに確かにしょっちゅう来るのならば、そのたびにホテルに泊まるよりはいいかもしれない。
いや、買うのには反対だけど。
「じゃあ、マンスリー……とは言わないので、せめて賃貸。
賃貸にしませんか?」
「えー」
えーってなんで、そんなに不服そうなんですか?
私としては年末になって、断りづらくなる材料はひとつでも減らしておきたいんですよ。
いまだってもちろん、断る気満々だし。
「絶対に可愛い鹿乃子さんは私の可愛い妻になるので、大丈夫ですのに」
どーでもいいが、その可愛い、可愛いはなんとかならないかな!
「わかりました、仕方ないですが賃貸にしておきます。
そういうわけでこのあと、不動産屋へ行きましょう」
「……はい」
にぱっ、とまた、三橋さんが嬉しそうに笑う。
いつのまにか不動産屋行きは決定事項になっていた。
とはいえ、私が懇意にしている不動産があるわけでもない。
それに知っているのは目立つところにある、全国チェーンのところだけだ。
結局、三橋さんが持っていたタブレットで、借りたい条件の候補から不動産屋を調べてくれた。
さらに、電話でアポイントまで。
母の軽自動車で不動産屋へ向かう。
なんだかちまっと助手席に収まっている三橋さんが、可愛く見えてきた。
「今日はどのようなご用件で?」
にっこりと笑って椅子を勧めてくれた、担当男性はさすがだと思う。
どうみても私たちは、怪しいふたりだと思うのに。
カフェでもちらちらと見られているのは知っていた。
「いま、東京に住んでいるんですが、これからはちょくちょくこちらへ来るので、拠点となる家を借りたいんですが」
「間取り等、ご条件は?」
「そうですね……」
ただ黙って、ふたりの会話を聞いていた。
だって借りるのは三橋さんの家であって、私には関係ない……はずがないのだ。
「鹿乃子さんはどっちがいいですか」
「はいっ!?」
新しい半襟の図案はお正月らしく、縁起物で……なんてあたまの中で描いていたところで、現実に戻される。
……どっち、とは?
と思いいつつ、三橋さんが指さす先を見た。
それは二軒の間取り図だったが、……なんかおかしくないですか?
だって、LDKだとおぼしき場所が、半端なく広い。
部屋数も五つくらいある。
「えっと?」
「ここだと東京と同じ予算で、広い部屋が借りられますね」
なんて三橋さんは笑っているが、そういう問題じゃないと思う。
「年末までの仮拠点なんですよね?」
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