狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
本物の夫婦として⑤
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美桜の妊娠が発覚してから月日は流れ、季節も夏から秋、秋から冬へと移ろいゆく季節、十一月を迎えていた。
現在、妊娠五ヶ月。経過は母子ともに順調だ。
仕事の方は、妊娠を機に相手は伏せてはいるが結婚していたことも公表したところ、男性層だけでなく、若い主婦層にも注目され始めたという偶然の産物にも恵まれた。
近頃はお腹も目立ってきて動きにくくなったことから、イベントごとなどへの参加は控えざるを得なくなって、このまま休業するしかないのかと思われた。
そのことで、周囲に迷惑をかけてしまうことに美桜は心を痛めていたし、なによりこの仕事に生き甲斐を見いだしていた美桜にとって、このまま仕事から遠ざかってしまうのが気がかりだったのだが……。
尊を始め樹里やプロジェクトに携わっているスタッフのサポートにより、リモートを活用しているため、身体にも負担はなく無理のない範囲で、自宅にいながら監修の仕事を続けることができている。
そんななか、美桜の周辺でちょっとした変化があった。
夏には、以前から美桜に粘着質な視線を向けていたプロデューサーの牧村が部下へのセクハラが明るみになり解雇されたこと。
それから秋口には、継母の薫の元代議士だった父親が現役だった頃の贈収賄や暴力団との癒着など、ありとあらゆる悪事が露呈し、世間を騒がせた。
ちょうど同じ時期、大手弁護士事務所から内容証明郵便で書類が家元の元に届けられ、愼の女子アナとの件が、実は薫の独断で処理されていたことが記されていたらしい。
中絶にも薫が関わっていたらしく、ご丁寧にも証拠の写真まで同封されていたそうだ。
つまりその件で、女子アナの父親が薫を訴えると言ってきたのである。
実際には、愼は女子アナと真剣に交際し結婚も視野に入れていたというから驚きだ。
そのことで愼を筆頭に弦と弦一郎も激怒し、すぐさま離婚を言い渡したことで、薫と天澤家の縁は完全に断たれたらしい。
電話で弦一郎からその話を聞かされたとき、初夜でのことが美桜の脳裏を過ぎった。
それは、幼い頃から美桜のことを疎んじてきた薫に対して、自分のことのように激怒し、怒りに打ち震えていた尊の姿だ。
美桜の憶測でしかないが、極道の世界から自ら退こうとしていた尊がすぐに行動に移さなかった裏には、これらの件があったからではないだろうか。
尊に訊いたところではぐらかされるだけだろう。
事実だからと言って、尊のことを責めるつもりなど毛頭ない。
悪事を働いた人はいずれはその報いを受けるべきだと思う。
極道者だった尊にも、人には言えない後ろ暗いことだってあるに違いない。
もしかすると、尊の刺青は、そういうものを背負っていくという覚悟の表れなのかもしれない。おそらく堅気となったこれからも、背負っていかなければならないのだろう。
ーーだったら少しでも背負わせて欲しい。
弦一郎との電話の後、美桜はそんなことをひっそりと決意していたのだった。
美桜の妊娠が発覚してから月日は流れ、季節も夏から秋、秋から冬へと移ろいゆく季節、十一月を迎えていた。
現在、妊娠五ヶ月。経過は母子ともに順調だ。
仕事の方は、妊娠を機に相手は伏せてはいるが結婚していたことも公表したところ、男性層だけでなく、若い主婦層にも注目され始めたという偶然の産物にも恵まれた。
近頃はお腹も目立ってきて動きにくくなったことから、イベントごとなどへの参加は控えざるを得なくなって、このまま休業するしかないのかと思われた。
そのことで、周囲に迷惑をかけてしまうことに美桜は心を痛めていたし、なによりこの仕事に生き甲斐を見いだしていた美桜にとって、このまま仕事から遠ざかってしまうのが気がかりだったのだが……。
尊を始め樹里やプロジェクトに携わっているスタッフのサポートにより、リモートを活用しているため、身体にも負担はなく無理のない範囲で、自宅にいながら監修の仕事を続けることができている。
そんななか、美桜の周辺でちょっとした変化があった。
夏には、以前から美桜に粘着質な視線を向けていたプロデューサーの牧村が部下へのセクハラが明るみになり解雇されたこと。
それから秋口には、継母の薫の元代議士だった父親が現役だった頃の贈収賄や暴力団との癒着など、ありとあらゆる悪事が露呈し、世間を騒がせた。
ちょうど同じ時期、大手弁護士事務所から内容証明郵便で書類が家元の元に届けられ、愼の女子アナとの件が、実は薫の独断で処理されていたことが記されていたらしい。
中絶にも薫が関わっていたらしく、ご丁寧にも証拠の写真まで同封されていたそうだ。
つまりその件で、女子アナの父親が薫を訴えると言ってきたのである。
実際には、愼は女子アナと真剣に交際し結婚も視野に入れていたというから驚きだ。
そのことで愼を筆頭に弦と弦一郎も激怒し、すぐさま離婚を言い渡したことで、薫と天澤家の縁は完全に断たれたらしい。
電話で弦一郎からその話を聞かされたとき、初夜でのことが美桜の脳裏を過ぎった。
それは、幼い頃から美桜のことを疎んじてきた薫に対して、自分のことのように激怒し、怒りに打ち震えていた尊の姿だ。
美桜の憶測でしかないが、極道の世界から自ら退こうとしていた尊がすぐに行動に移さなかった裏には、これらの件があったからではないだろうか。
尊に訊いたところではぐらかされるだけだろう。
事実だからと言って、尊のことを責めるつもりなど毛頭ない。
悪事を働いた人はいずれはその報いを受けるべきだと思う。
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もしかすると、尊の刺青は、そういうものを背負っていくという覚悟の表れなのかもしれない。おそらく堅気となったこれからも、背負っていかなければならないのだろう。
ーーだったら少しでも背負わせて欲しい。
弦一郎との電話の後、美桜はそんなことをひっそりと決意していたのだった。
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