狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
ヤクザと政略結婚!?⑳*
*
尊に翻弄されているうち、実際に尊を受け入れたら、一体どうなってしまうのだろう。
ぼやけた頭の片隅で、そんなはしたないことを思考していた美桜の身体は、まだ知らぬ未知への期待感にふるふると打ち震える。
美桜は、そんな自分の身体の反応に戸惑うと同時に、それらを尊に見抜かれるんじゃないかと気が気じゃなかった。
「キスと胸だけで、こんなにして。腰まで揺らして催促してくるとは、処女のクセに、すっかり厭らしくなったな」
そんなタイミングでキスを中断した尊から立て続けに指摘されてしまい。
狼狽えた美桜は、見る間にカアッと全身を真っ赤に染め上げてしまう。
余りの羞恥に耐えかね、叫ぶようにして反論を返したものの、その通りで、説得力なんて皆無だが。そのうち。
ーーこんな風になったのは、尊さんのせいなのに。そんな言い草あんまりだ。
尊にとって自分が、ただの政略結婚の相手でしかない上に、こんな風に扱われてしまう自分は、尊にとって好きでもなんでもない、ただの暇潰しの相手でしかないということの表れに他ならない。
そんなこと最初から百も承知だったはずだけれど自我のコントロールがきかないのだからしょうがない。
美桜は盛大にむくれながらも、少しでも気を抜けば、泣いてしまいそうだ。
それをぐっと堪えているところに不意打ちのように、尊から頬にチュッというリップ音と共に、ムッとした美桜のことを宥めるような可愛らしいキスがなされ。
「そんなに怒ると、可愛い顔が台無しだぞ」
驚いた美桜が放心している隙を狙ったように、ご機嫌を取るような言葉まで囁かれてしまった。
ーーな、なに? 急に。さっきは意地悪なこと言ってきたのに。一体どういうこと?
さっきまで泣きそうだった美桜は、驚きのあまり困惑状態だ。
そこにふと、ある可能性が脳裏に浮上してくる。
そういえば、昨夜も、『愛らしい』とかなんとか言われた気がする。
ーーこれってもしかして、女性を褒めて自分の思い通りにするための常套句なのでは。
こういうとき男性は、女性をその気にさせるために褒めるらしいし、きっとそうに違いない。
そう思うのに……。そんな些細な言葉であっても、尊に言われると、無性に嬉しいなんてことを思ってしまう。
ーー悔しいが、きっと、これが惚れた弱みというものなんだろう。
人を好きになるということが難儀なことだということを美桜が実感している最中、再び尊に動きがあった。
だがさっきまでの余裕ありげな態度はどこかに消え失せているように見える。
そんなことを思ってる間にも、尊はなにやら切羽詰まったように、美桜に縋るようにして抱きついてきた。
そうして耳元に顔を埋めてくると、やっぱり余裕なさげな声音で囁きかけてくる。
「怒らせておいて悪いが、余裕がない。手伝ってくれないか? 約束通り、最後まではしない」
  『最後まではしない』という言葉を耳にした途端、いよいよ尊のものにしてもらえるのだと期待に満ちていた美桜の胸が見る間に萎んでいく。
そのせいか、処女の自分とは違って、僅かに息は上がっていても尊はいつも通りに見えてくる。
きっと、それだけ尊がこういうことに慣れているからなのだろう。
いくら余裕なさげに縋ってきても、こうしてすぐに余裕を取り戻せるのも、最後までしなくても平気なのも、それだけ経験値に違いがあるということに違いない。
ーーそんなの当然だ。そもそも私には経験がないんだもん。そんな私相手では、物足りないのかもしれない。
『初めては特別なものにしてやる』なんて言ってくれたけれど、言葉ではどうとでも言える。
もしかすると、処女は面倒だからって、このままずっとこうやって、相手にしてもらえないのかもしれない。
ーーそんなの耐えられない。
思考がそこまで至ったとき、美桜の眦からあたたかな雫がポロポロと零れ落ちる。
それと一緒に、昨日今日と二度にわたって、まともに相手をしようとしてくれない尊へ対する美桜の不満が決壊するかのように溢れ出てしまう。
「どうせ私なんかオコチャマだし、相手にならないんだってことぐらいわかりますけど。どうやったら、ちゃんと女として扱ってくれるんですか? 教えてください。じゃないと夫婦になんてなれません」
美桜の言葉に、尊は虚を突かれたように呆然としているようだが、そんなこと知ったこっちゃない。
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