狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
突然の乱入者⑥
そのことを意識してしまったせいで、美桜は妙な緊張感に襲われる。
さっきまで自然とできていたはずの呼吸の仕方さえもわからなくなってくる。
取り込む酸素量が激減したせいで、頭がくらくらとしてきた。
といっても、別に怖いというわけではない。
初対面の男といきなりふたりきりの状況に置かれ、どうすればいいかがわからないだけだ。
見た感じ、愼と同世代に見えることから、おそらく三十代前半ぐらいだろうか。
『華道界のイケメン王子』と称される甘い顔立ちの愼とは違って、纏っている独特のオーラと凄まじい威圧感に、鋭い眼光のせいか、恐ろしく整った相貌は、とても凜々しく、どこか危うさを孕んでいるようにも見える。
少し前まで、優太郎の魔の手からは逃れられないだろうと、諦めの境地に達しかけていたというのに。
いつしか美桜は、眉目秀麗、容姿端麗の言葉を体現したかのような、長身の男の優れた見目にすっかり魅入られてしまっている。
そんな美桜の元に、悠然と歩みを進めてきた男から、さっきまで優太郎にかけられていたものとは違った、思いの外優しい声音が降らされた。
「怖がらせて悪かったな」
声をかけられるとは思わず、驚きのあまり、心臓と身体とがビクンッと大きく跳ね上がる。
その様子に、僅かに目を見開いた男がどうしたことか、急に美桜から顔を背けて肩をふるふると小刻みに震わせはじめた。
ーーん?   どうしたんだろう、急に。
美桜がキョトンとしていると、とうとう我慢しきれないとばかりに、男がくっくと笑い声を漏らす。
そこで自分が笑われていることに気づき、言いようのない羞恥と腹立たしさを覚えた。
ムッとした美桜が思わず長身の男をキッと睨み返した先には、目尻に涙まで浮かべた男の、無邪気な笑顔が待ち受けていたことで、またもや惹きつけられてしまった目が離せなくなる。
それだけじゃない。初対面のはずなのに、なぜだか懐かしさを覚えてしまった自分に対しても戸惑うばかりだ。
美桜の心情を知ってか知らずか、ようやく笑いのおさまったらしい男が、今度は眼前に大きな手をすっと差し出してくる。
「ほら」
突然の男の言動の意図が掴めない。男の顔と手とに視線を交互に行き来させていると、ふっと柔らかい笑みを零した男が思わず漏らしたのだろう小さな呟きに、美桜はますます首を傾げるしかなかった。
「ぼうっとしてるのは相変わらずだな」
唐突だったことで、呟きのすべてを拾えなかったというのもあるが。
そんなことよりも、畏怖を抱かせるほどの威圧感を纏う男がチラチラと垣間見せる優しい表情に、いちいち惹きつけられて、苦しいほどに胸を高鳴らせてしまう自分の事が不可解でしかなかったからだ。
ーー私ってば、さっきからどうしちゃったんだろう。
さっきまで自然とできていたはずの呼吸の仕方さえもわからなくなってくる。
取り込む酸素量が激減したせいで、頭がくらくらとしてきた。
といっても、別に怖いというわけではない。
初対面の男といきなりふたりきりの状況に置かれ、どうすればいいかがわからないだけだ。
見た感じ、愼と同世代に見えることから、おそらく三十代前半ぐらいだろうか。
『華道界のイケメン王子』と称される甘い顔立ちの愼とは違って、纏っている独特のオーラと凄まじい威圧感に、鋭い眼光のせいか、恐ろしく整った相貌は、とても凜々しく、どこか危うさを孕んでいるようにも見える。
少し前まで、優太郎の魔の手からは逃れられないだろうと、諦めの境地に達しかけていたというのに。
いつしか美桜は、眉目秀麗、容姿端麗の言葉を体現したかのような、長身の男の優れた見目にすっかり魅入られてしまっている。
そんな美桜の元に、悠然と歩みを進めてきた男から、さっきまで優太郎にかけられていたものとは違った、思いの外優しい声音が降らされた。
「怖がらせて悪かったな」
声をかけられるとは思わず、驚きのあまり、心臓と身体とがビクンッと大きく跳ね上がる。
その様子に、僅かに目を見開いた男がどうしたことか、急に美桜から顔を背けて肩をふるふると小刻みに震わせはじめた。
ーーん?   どうしたんだろう、急に。
美桜がキョトンとしていると、とうとう我慢しきれないとばかりに、男がくっくと笑い声を漏らす。
そこで自分が笑われていることに気づき、言いようのない羞恥と腹立たしさを覚えた。
ムッとした美桜が思わず長身の男をキッと睨み返した先には、目尻に涙まで浮かべた男の、無邪気な笑顔が待ち受けていたことで、またもや惹きつけられてしまった目が離せなくなる。
それだけじゃない。初対面のはずなのに、なぜだか懐かしさを覚えてしまった自分に対しても戸惑うばかりだ。
美桜の心情を知ってか知らずか、ようやく笑いのおさまったらしい男が、今度は眼前に大きな手をすっと差し出してくる。
「ほら」
突然の男の言動の意図が掴めない。男の顔と手とに視線を交互に行き来させていると、ふっと柔らかい笑みを零した男が思わず漏らしたのだろう小さな呟きに、美桜はますます首を傾げるしかなかった。
「ぼうっとしてるのは相変わらずだな」
唐突だったことで、呟きのすべてを拾えなかったというのもあるが。
そんなことよりも、畏怖を抱かせるほどの威圧感を纏う男がチラチラと垣間見せる優しい表情に、いちいち惹きつけられて、苦しいほどに胸を高鳴らせてしまう自分の事が不可解でしかなかったからだ。
ーー私ってば、さっきからどうしちゃったんだろう。
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