ロリータ・コンプレックス

下之森茂

(2/17) 肩身の狭い同居者。

まだ幼さの残るふっくらとした顔にまるい目、
細く明るい髪のリナは、コータの兄の娘であるが、
運がいいことに父親にはあまり似ていない。


姪のリナとの同居は、
コータの預かり知らないところで決まった。


「今日から一緒に暮らすことになったから。」
と、コータの両親、つまりリナにとっての
祖父母が、コータの住む家に連れてきた。突然。


かわいい盛りの孫娘まごむすめ
両親は過剰かじょうなまでに甘やかし、
予想通りコータの肩身かたみはますますせまくなった。


リナは隣の兄の部屋を使っているので、
せきひとつ、物音ひとつにさえも気を使う。


さらに食事、風呂、トイレなどの生活の中で、
廊下を歩くだけでもリナの視線がつきまとい、
彼女はコータの部屋にまで平気で侵入してくる。


なにかしゃべればリナに笑われ、
部屋にやって来てはからかわれ、
食事中などはにらみつけられ、足蹴あしげにされる。


12歳の女の子の言動など理解できるはずもない。
コータの生活は常におびやかされた。


引きこもりとしての面目めんぼくは丸つぶれだった。

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