世界最強の俺、銀髪赤眼のロリ美少女になってしまう

夢野つき

3. 世界最強の異能力者、美少女になる③

 さて、只今俺は東京の夜空を飛行中だ。
 その間に俺の異能力について軽く解説しておこう。名前は青羽社長が見送りの時に言っていたが俺の異能力は『暗黒物質ダーク・マター』だ。厨二病大好き単語ランキングの上位入りのあのダーク・マターである。
 暗黒物質とは天文学的現象を説明するために昔の科学者たちが定義した仮説上の物質のことである。普通、人間の目や鼻、耳などでは観測する事ができない物質であるが、俺の異能力はそんな暗黒物質を具現化させる事ができる。
 主に異能力で出来る事は4つだ。

 第一の機能は暗黒物質の操作・変形である。今、背中に生えている6枚の黒い翼も暗黒物質を変形させ、羽ばたく様に操作している。この様な使い方以外にも戦闘時に鋭い刃物にして相手を斬りつけたり、紐の様に変形させてから相手を捕縛したり出来る。目に見える範囲であれば空間上を自由自在に飛ばすこともできる。

 第二の機能は大きさの変換である。簡単に言うと自由自在に大きさを変える事ができる。俺の記憶では最大で小さな山一つ分くらいは余裕を持って飲み込める程には大きく出来た事がある。まだまだ大きくする事ができる気がするが、流石に怖くなってそれ以上に大きくする事はやった事がない。

 第三の機能は重さ・硬さを自由に変換する事が出来ることだ。この翼だって重さは全くないはずだ。6枚合わせて1kg分くらいじゃないのかな?硬さだって鉄パイプで思いっきり殴っても変形しないくらいには硬くしている。

 第四の機能は感覚共有だ。この機能は自由にオンオフを切り替えられる。どのように使うのかと言うと、マジックハンド(遠くのものを取る道具)のように暗黒物質を生成し、触覚を共有すると暗黒物質越しにだが実際に触れているように感じる。また、曲がり角越しに暗黒物質を伸ばし、視覚を共有すると実際に曲がり角の向こうの景色が見える。このように使い勝手は良いのだが、その分脳への処理が多くなってしまうため長時間の使用はできない。まぁ長時間使用する時なんて全くないが。

 以上が俺の異能力で出来る事である。これを聞いているだけだと非常に便利なのだが、実は少々欠点がある。それは……長時間使っているとだんだん眠くなってくる事だ。今だって少し眠たいが、我慢できる範囲だ。後3時間も使い続けたら完全に寝落ちしてしまうくらいには眠くなるはずだ。後、物凄くお腹が空く。最近は加減がわかってきているから問題はなかったが、昔なんかはもっと乱暴に異能力を使ってよく反動でぶっ倒れていたな。
 まぁ、デメリットを簡単にまとめると暗黒物質の生成量に応じて睡眠欲と食欲が荒波となって襲ってくるということだ。睡眠欲、食欲ときたら性欲もくると思っていたのだが、そんな事はなかった。何でだろうな?

 後、この暗黒物質は俺の肌からしか直接生成する事ができない。自分の目の前の空間に突発的に生成する事はできないという事だ。少々不便ではあるが、あまり気にすることでもない。え?翼を生成した時の服は大丈夫なのかって?はっはっは!服の予備はまだあるから大丈夫だ!
 それは置いておいて、簡単に言うと俺の異能力はデメリットに対しての異能力の強さが比例していないのだ。少量の暗黒物質を自らの肌から生成し、第一の機能で敵がいる場所の頭上に操作して飛ばす。第二の機能でその少量の暗黒物質を薄く、平たく膨張(巨大化)させて、第三の機能で超重くするだけで大体の敵は重量に耐えきれずに押しつぶされて死ぬ。我ながらこれほどまでに殲滅に向いた素晴らしい異能力は無いのではないのだろうか?


 会社から飛び立って30分後。青羽社長が言っていた通りに目的の港近くに到着した。
 港には灯りが一つもなく、夜の静けさに飲み込まれていた。一応、俺がいる事はバレないようにするために港内にある監視塔の一番上に着地した。結構高いため港を一望することも可能な位置だ。

 さて、近くに7人の回収班がいると聞いているが…一応連絡は取っておいた方がいいか?作戦実行時間に「あの人まだ来てないぞ!?」なんて慌てられたら困るしな。挨拶だけはしておきたいけど……何処にいるんだろうな?2km圏内にいるとは聞いているが、かなり広いし何処にいるのか全く分からない。青羽社長にしっかりと聞いておくべきだったな。

「マジでどうしようかなぁ…取引まで後2時間程だし、眠気と空腹でも紛らわせに行こうかな?」

 異能力のせいで、少々の眠気と小腹が空いてしまっている。ここら辺にコンビニってあるかな?エナジードリンクとパンがあれば何とかなると思うんだが。

 携帯を取り出して近くのコンビニを探し始めたその時、2台の黒塗りの車が港へと入ってきた。もしかして回収班達かな?そんな堂々と港に入ってきたらターゲット達に警戒されてしまうぞ?
 遠目で追っていると車は第4倉庫の前に止まった。

 …ん?

 車からはそれぞれ2人づつの柄の悪そうな男がアタッシュケースを抱えて降りてきて、4人揃って第4倉庫に入っていった。

 …ん?
 あいつらって絶対にターゲットだよね?
 あれ?取引って0時からだよね?今はまだ22時ちょっと…いくら何でも早すぎないか?

 不思議に思って監視に行くか迷っていると、さっきの奴らとは反対の入り口から3台の黒塗りの車が入ってきた。そいつらも第4倉庫前に止まって、黒いスーツを着込んだイカツイおっさん達がバックを数個持って入っていった。

 その時になってようやく察した。あ、取引時間の情報間違っている…と。
 ちょっとヤバくねぇか!?まだ回収班とも挨拶してないんだけど!でも、この取り引き止めないと依頼失敗になるぞ!?うぎゃぁぁぁ!早く止めに行かねぇと!

 俺は急いで暗黒物質で翼を生成し、第4倉庫へと近づいた。出来るだけ静かに倉庫前に着地をし、倉庫の壁に張り付く。
 経年劣化のせいなのか、ちょっとだけ倉庫の壁がボロい。そのため、所々に小さな穴が存在する。その穴を指で押さえて少しづつ暗黒物質を流し込んでいき、視覚を共有する。すると、脳内に壁の中の景色が浮かんでくる。少しづつ暗黒物質を進めていくと、複数人の男達が見えてきた。どうやらまだ取引中だったらしい。何を話しているか分からないし聴覚も共有するか。

『ーーーーよし、これで取引は成立だなァ。これが例のブツだァ』
『ふむ……確かに入っているな。あぁ、これで取引は終了だ。しかし、この量の薬をどうやって手に入れたんだ?』
『おっと、それは教えれないぜ?こっちも商売でやってるんだからなァ。もっと欲しいんなら金を用意しろよ。…なぁに、別にとって食おうとしてるんじゃねんだァ。次回も取引があるならアンタらの所には格安で売ってやるよォ』

 うわぁ…薬物の取引現場とか初めて見た。
 少し感動しながら見ていると、ターゲット達が撤収の準備を始めた。

「ヤッベ!車に乗られる前に拘束しないと!」

 えぇっと……とりあえず暗黒物質で倉庫に閉じ込めるか・・・・・・
 倉庫の壁に手を当て、一気に暗黒物質を生成する。
 生成された暗黒物質は、第4倉庫を覆い隠すかのように真っ黒に染め上げ、ドーム状に膨張する。

「おいおい、こいつはどうなってるんだ!?まさかアンタらが嵌めたんじゃねぇだろうなぁ!?」
「ち、違う!俺たちじゃない!畜生、ここから早く脱出するぞ!おそらく異能力者が関わってるに違いない!早くしないと手遅れになるぞ!」

 いやぁ…もう手遅れだよ?

「やぁやぁ、こんな夜中に取引なんてご苦労様だね」

 ここで俺参上!暗黒物質の壁から浮き出てくるかのように出てくる俺。しかも相手を上から目線で労いながらの登場なんてなかなかカッコいいのではないのだろうか?(キランッ)
 俺の登場にターゲット達は目を見開いて驚く。ある者は腰を抜かし、ある者は射殺すかのような視線を向けてくる。

「何だてめェ?俺らが誰だかわかってやってんのかァ?」
「犯罪異能集団『ブレイン』だよね?今回は薬物の取引をする予定だっただろ。俺はその取引現場でお前らを引っ捕らえるのが仕事の傭兵さんだよ」
「っち…どうやってその情報を手に入れたのかはしらねぇけどよォ、知ってしまったからには始末しねぇといけねぇなァ!お前らやれ!相手は子供が1人だけだァ!」

 おいこらテメェ、誰が子供だ!俺は今年から大学生だ!身長だけで判断してんのかゴルァ!

「お、おい、やめとけ!あいつはーーー」
「あ゛あ゛ぁ?アンタら、俺らブレインに歯向かうってぇのか?」
「ち、違う!だけど、あいつは、あいつはブラック・ラビットだぞ!勝てるわけがねぇ!」

 どうやらブレイン方は取引先の方と揉めているようだ。
 しかし、ブレイン側の下っ端は既に動き出しており、ナイフや鉄パイプを持って殴りかかって来ていた。とりあえず動けなくするか。
 掌から暗黒物質を生成し、糸上に飛ばして手足を一気に拘束する。

「な、何だこれぇ!?」
「兄貴!たすけてくれぇ!」
「オメェら何やってんだァ!」

 ……なんか呆気ないな。

「まぁそう言うことだから、大人しく捕まってくれるかな?」
「クソがぁぁぁあ!」

 捨て台詞を吐き捨てて、ブレインの兄貴さんは殴りかかって来た。


◆■◆■

 結果から言うと、ブレインの兄貴さんはもの物凄く弱かった。あいつ、下っ端よりも動き悪かったぞ?
 取引先さん方は大人しく拘束された。どうやら俺が登場した時点で勝てないと悟ったようだ。いやぁ〜異能力でお腹空いてくるからありがたい話だねぇ!
 まぁ、とりあえず拘束は完了したから暗黒物質ドームは消すか。
 指パッチンをすると、暗黒物質は空中分散して一瞬で消えた。我ながらカッコイイ演出だと思う!(自画自賛)

「とりあえず青羽社長に電話するか」

 取引開始時間より1時間も早いしな。ドーム解除しても回収班が来ないあたり、まだ準備ができてないのだろう。

「ーーーーあ、社長。ブレインの拘束終わったぞ」
『おや?取引開始時間よりも1時間は早いね。何かあったのかい?』
「あぁ、実はーーーー」

 とりあえず、青羽社長には取引の時間が早まっていた事を伝え、回収班に早く来てもらえるように頼んだ。

『なるほどね。もしかしたら偽の情報を掴まされていたのかも知れないね。わかったよ。とりあえず、そちらの回収班には急いで向かってもらっているが、まだ30分ほど時間がかかるかも知れないよ』
「えぇ〜。俺、異能力使いすぎて眠いんだけど…」
『そこは我慢してよ〜。じゃ、回収班に回収してもらったら帰っても良いからそれまでよろしくね』
「え、あ、ちょっと!」

 あ、あいつ…俺に仕事押し付けて電話切やがった。はぁ、待つしかないのか…。そういえば、今日は俺の好きなソシャゲのイベント最終日だったよな?暇だから今のうちにイベント進めておくか。

 黒兎は電話後の携帯画面をゲーム画面に変えて集中し始める。

 この時、黒兎は気がつかなかった。拘束済みのブレインの兄貴がこちらを睨みつけて来ながら怪しい行動をしている事に。

「(最後の足掻きだァ!俺の異能をくらえ!ブラック・ラビットォォ!)」

 実は、ブレインの兄貴は異能力者であった。異能力の名前は『一回限りの混沌ランダム・カオス』。自らが定めた対象1人に一度だけ不特定なデバフを複数(数や内容はランダム)与える極悪的な異能力。デバフの内容は「何も無い場所で躓きやすくなる呪い」と言った低レベルの物から「即死」と言った危険極まり無いものまで様々。

 この時、黒兎自身が異能力を掛けられている事に気が付いてさえいれば、この後に起こる悲劇は免れただろうが、不幸にも黒兎は空腹と眠気で警戒心が低下し切ってしまっていた。
 それゆえ、彼は気がつかなかった。自らの体に変化が起きている事にも……。


◆■◆■

「はぁ、はぁ…遅れてすみませんでした!」

 俺がソシャゲのイベントを進み始めておよそ10分ちょっと経った頃。クリスタルバード・マーセナリーのバッチ(青い鳥が象られた半透明の胸バッチ)を身に付けた7人やって来た。彼らが回収班かな?

「お前らがターゲット達の回収班であってるか?」
「……」
「おい、大丈夫か?」
「…へ?あ、はい!私たちが依頼で犯罪異能組織ブレインとその取引相手の身柄輸送を任されました!」

 うん、どうやら回収班であっていたようだ。
 何故か彼ら(彼女ら)に目を見開いて驚いたような反応をされた。もしかして、ターゲットの身柄確保をしたのが俺だと聞かされていないのか?なら仕方ないな!何たって俺は世界ナンバーワンの異能力者であるブラック・ラビットだからな!言わば有名人って事だ。いきなり有名人が現れたりしたら誰だって驚いても仕方がない!

「んじゃ、ブレインの奴らと取引先の奴らはそいつらだから。俺はもう家に帰るから、後はよろしく〜」
「わ、わかりました!」

 いや〜なかなか女々しい反応するね。まぁ仕方ないよね。俺、有名人だし!

 ターゲット達を回収班達に任せて黒兎は家に向かって飛び立った。その後ろ姿を見て、回収班達は色々な意味で唖然としていた。

「ねぇ…ブラック・ラビット様って女の子だったけ?」
「いや、公式発表では男だった筈なんだが…実際は女の子だったな…」

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