客観的恋愛曖昧論

白山小梅

曖昧論〜美玲の答え〜2

 美玲が元気を取り戻すのを見てから、京子は二葉に視線を移すとニヤッと笑う。

「ところで二葉さんの進展について報告がないんだけど。帰りのバスでもそんな話出来なかったし」
「あっ、私も気になってた! まぁちゃんと言えたっぽいのはわかってたけど」
「副島さんのあんな反応見ちゃえばねぇ……」
「えっ、どんな反応してたの?」

 二葉は驚きのあまり、声がうわずってしまう。それを見て三人は大笑いする。

「すっごいデレ顔してたよね」
「そうそう。もう喜びを隠せませ〜ん!みたいな感じ」
「でもあの時って、二葉かなり酔ってたよね。ちゃんと記憶あるの?」
「……それが……いや、言ったことは覚えてるんだけど、いろいろぼんやりで……しかも途中で寝ちゃったし」
「……副島さん、かわいそうに……」
「だからすぐに戻ってきたわけね」
「……帰ってから匠さんに『俺はちゃんと覚えてるから』って念を押されたよ」

 すると彩花が嬉しそうに口を押さえる。

「匠さんだって……! どうしよう、友達の彼氏の話にこんなにきゅんとしちゃうなんて……!」
「彩花は早く彼氏を作った方がいいよ。その気持ちを受け止めてくれるような、優しい人がいいね」
「……そういう人がいないから悩んでいるんでしょ……」

 大きなため息をつく彩花の肩を、二葉が何か言いたげに叩く。

「何?」
「彩花、今度一緒に東京十社を巡ろうか⁈ なんかね、何度も回った人で願いが叶った人がいるんだって! 良縁祈願だよ!」

 意気揚々と話す二葉に対し、彩花の顔からは血の気が引いていく。

「……嫌よ。二葉ちゃんと一緒に行くと、あまりにハード過ぎて次の日動けなくなるんだもん」
「それはお参りの証じゃない!」
「……聞きたいんだけど、副島さんもこんな感じなの?」
「うん。二人だとサクサクお参りが進むから、やっぱり巡礼とかは匠さんじゃなきゃ嫌だなぁって思うよ。でも都内のお参りなら……」
「大丈夫。二葉ちゃんは副島さんと仲良くお参りして」
「じゃあせめて愛染明王様の御利益が有名な目黒不動に……」
「わかった! 今度一人で真剣にお参りするから! 仏女ぶつじょトークの二葉ってしつこいから嫌〜!」

 二人の会話を聞きながら、京子と美玲は笑いが止まらなくなる。

「やっぱり副島さんとの出会いって運命なのかしら。似た者カップルだもんね」
「確かに。二葉ちゃんは副島さん以外の人じゃ無理っぽいもんね」
「うん、私もそう思う」
「あら、のろけちゃったよ。ごちそうさまでした〜」

 運命なんて言葉が本当にあるかはわからないけど、今が幸せだってことは胸を張っていえるの。

「美玲と二葉を見てるとさ、やっぱり趣味が合う人がいいのかなって思うよね。一緒に時間を共有出来るって素敵じゃない?」
「反発し合わない趣味ならね。ドラマとか見て言い合いになったり、競い合うようなのはちょっと嫌かも」
「確かに……でも相手の好きなものに合わせてる時間も私は楽しいよ。好きなものの話をしている時の顔って結構可愛いし」
「あぁ、それは私は無理だわ。何得意になってんのってイラッとしちゃうかも」
「あはは! まぁ受け取り方次第だよね」

 彩花は京子の肩を宥めるように叩く。

「私たちは無理せずのんびり行こうよ」
「まぁ仕事も忙しいしね」
「そうそう」

 その時、焼きたてのピザが届き、四人は歓声を上げるのだった。

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