客観的恋愛曖昧論
秘密の二人〜後編〜2
匠は宴会場に戻ると、二葉の友人達に声をかける。
「あの……ありがとう」
三人は驚いたように目を見張る。それからにっこり笑う。
「いえいえ。というか、もっとゆっくりかと思ってました」
「寝ちゃったから……って、それどういう意味?」
「いえいえ、特に理由は。二葉、ちゃんと言えたようで良かったです」
「……なんでわかるの?」
すると三人は顔を見合わせてニヤニヤしている。
「だって……ねぇ?」
「そんな嬉しそうなデレ顔されたら、誰だって気付きますよ」
「席に戻るなら、お顔をシャキッとさせてからにしてくださいね。じゃないと何があったかバレバレですから」
「……それは忠告どうも」
そ、そんなに顔に出てるのか⁈ 冷や冷やしながら席に戻ると、木之下が匠を見ながらため息をついた。
「そういうことか……まぁバレないようにな」
「な、なんのことだよ⁈」
「いや、完全にバレるだろ。もう少し酒でも飲んで紛らわすしかないな」
そう言われて、慌てて目の前にあったビールのグラスを飲み干す。
「……でもちょっと意外だったよ。お前がああいう子がタイプだったとは」
「……なんのこと?」
「まぁしらばっくれてもいいけど。仕事に支障が出るような付き合いはやめてくれよ。例えば会議の前の日にケンカとかさ」
「いや、それだと俺にも支障出るじゃん」
「お前は出ればいいさ。俺が勝つにはちょうどいい」
「お前な……」
木之下はビールのグラスに口を付け掛け、再びテーブルに戻す。
「なぁ、社内恋愛ってどうよ?」
「さぁ……まぁ面倒くさいよな」
「じゃあなんで社内で手を出してんだよ」
「たまたまだよ。元々知り合いだったから、それが発展しただけ」
「えっ、そうなのか?」
「そうそう。でもお前がそういう話題を振るって珍しくない? なんかあるわけ?」
「別に。お前を心配してやっただけだよ」
「ふーん……」
いつもと違う空気を木之下から感じるのは気のせいだろうか。こいつも何かあるのかな。
「社内だとつい隠したくなるじゃん。これが社外なら大っぴらに出来るんだろうな〜とか思うと、やっぱり面倒だと思うよ。でもこっそりイチャついたりすると、なんか妙にドキドキするというか、いけないことしてる気がしてちょっと興奮する」
「……どこでイチャついてんだよ。気持ち悪い」
「そう言うと思ったから言わない。お前が誰かとイチャつきたくなったら聞いてくれ」
木之下は何も言わなかったが、ビールを飲み干してからの深いため息が、彼の苦悩を物語っているようだった。
その時、匠のスマホが鳴る。こんな時間に誰だろう……そう思って画面を見た匠の表情が曇る。
「副島? 出なくていいのか?」
「あ……あぁ、知らない番号だからやめておく。前にマンションのセールスとかで痛い思いしたし」
「あぁ、あるよな。あれってどこから番号を入手するんだ?」
木之下にはああ言ったが、今の番号の下四桁には覚えがあった。電話帳からは消去したから名前は表示されなかったが、確実にあの人の番号だった。
今頃になってなんなんだ……匠は下唇を噛む。
もう二度と会うつもりはない。だって二葉のおかげで俺だって前に進めたんだから。もうこれ以上振り回されるのはごめんだ。
匠はその着信を無視した。しかし再度着信が鳴り、慌てて拒否する。
なんで先生は俺の番号を知ってるんだ……? 匠の中に恐怖に似た緊張が走る。
先ほど別れたばかりなのに、どうしようもなく二葉に会いたい。あの日のように、彼女の腕に抱かれ、耳元で大丈夫だと言って欲しかった。
「あの……ありがとう」
三人は驚いたように目を見張る。それからにっこり笑う。
「いえいえ。というか、もっとゆっくりかと思ってました」
「寝ちゃったから……って、それどういう意味?」
「いえいえ、特に理由は。二葉、ちゃんと言えたようで良かったです」
「……なんでわかるの?」
すると三人は顔を見合わせてニヤニヤしている。
「だって……ねぇ?」
「そんな嬉しそうなデレ顔されたら、誰だって気付きますよ」
「席に戻るなら、お顔をシャキッとさせてからにしてくださいね。じゃないと何があったかバレバレですから」
「……それは忠告どうも」
そ、そんなに顔に出てるのか⁈ 冷や冷やしながら席に戻ると、木之下が匠を見ながらため息をついた。
「そういうことか……まぁバレないようにな」
「な、なんのことだよ⁈」
「いや、完全にバレるだろ。もう少し酒でも飲んで紛らわすしかないな」
そう言われて、慌てて目の前にあったビールのグラスを飲み干す。
「……でもちょっと意外だったよ。お前がああいう子がタイプだったとは」
「……なんのこと?」
「まぁしらばっくれてもいいけど。仕事に支障が出るような付き合いはやめてくれよ。例えば会議の前の日にケンカとかさ」
「いや、それだと俺にも支障出るじゃん」
「お前は出ればいいさ。俺が勝つにはちょうどいい」
「お前な……」
木之下はビールのグラスに口を付け掛け、再びテーブルに戻す。
「なぁ、社内恋愛ってどうよ?」
「さぁ……まぁ面倒くさいよな」
「じゃあなんで社内で手を出してんだよ」
「たまたまだよ。元々知り合いだったから、それが発展しただけ」
「えっ、そうなのか?」
「そうそう。でもお前がそういう話題を振るって珍しくない? なんかあるわけ?」
「別に。お前を心配してやっただけだよ」
「ふーん……」
いつもと違う空気を木之下から感じるのは気のせいだろうか。こいつも何かあるのかな。
「社内だとつい隠したくなるじゃん。これが社外なら大っぴらに出来るんだろうな〜とか思うと、やっぱり面倒だと思うよ。でもこっそりイチャついたりすると、なんか妙にドキドキするというか、いけないことしてる気がしてちょっと興奮する」
「……どこでイチャついてんだよ。気持ち悪い」
「そう言うと思ったから言わない。お前が誰かとイチャつきたくなったら聞いてくれ」
木之下は何も言わなかったが、ビールを飲み干してからの深いため息が、彼の苦悩を物語っているようだった。
その時、匠のスマホが鳴る。こんな時間に誰だろう……そう思って画面を見た匠の表情が曇る。
「副島? 出なくていいのか?」
「あ……あぁ、知らない番号だからやめておく。前にマンションのセールスとかで痛い思いしたし」
「あぁ、あるよな。あれってどこから番号を入手するんだ?」
木之下にはああ言ったが、今の番号の下四桁には覚えがあった。電話帳からは消去したから名前は表示されなかったが、確実にあの人の番号だった。
今頃になってなんなんだ……匠は下唇を噛む。
もう二度と会うつもりはない。だって二葉のおかげで俺だって前に進めたんだから。もうこれ以上振り回されるのはごめんだ。
匠はその着信を無視した。しかし再度着信が鳴り、慌てて拒否する。
なんで先生は俺の番号を知ってるんだ……? 匠の中に恐怖に似た緊張が走る。
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