客観的恋愛曖昧論

白山小梅

曖昧論〜美玲の場合〜2

 京子が手を挙げる。

「話を聞いてる限り、真面目な感じの人なのかなぁと思うから、まずは関係性をはっきりさせた方がいいと思う。付き合ってるのか、付き合おうとしているのか、セフレなのか。きっと答えをくれるんじゃないかな。じゃないとこれから先もズルズルしちゃうよ」
「……何回か聞こうとしたんだけど、なんか口に出せなかったんだよね。どうしたらそんなふうにストレートに言えるのか……」
「食事も終わりかけくらいの時に切り出すしかないよね。だって食べ始めは嫌だし、途中も気まずいし」
「終わりかけ……どうやって切り出すの?」
「例えば、聞きたいことがあるの〜みたいな。まずその一言が言えれば、もう言うしかないみたいな雰囲気にならない?」
「確かに……。あぁっ! でも言えるかなぁ⁈」

 彩花が手を挙げる。

「さっき、ホテルじゃなくて家に誘われるって言ってたよね」
「一回目は成り行きだからホテルだったけど、それ以降はずっと彼の家だね」
「これもネット情報なんだけど、男の人が家に誘う理由がいくつかあるんだって。まず体目的、まぁこれはね。あとお金がないっていうのもあるけど、食事に行ってるしね。そしてあともう一つ。彼女を信頼してるから、或いは信頼関係を築きたいからなんだって」

 その言葉に美玲は驚いたように固まる。

「誰だって自分のテリトリーに他人を入れるのって嫌じゃない? でもそこに踏み込ませてもいい相手ってこと。その人真面目そうだし、なんかこの説もあり得るかなって」
「なるほど……」

 二葉はみんなの話を聞きながら、ただ頷くだけだった。私も匠さんにお家に呼ばれたら、信頼されてるってことなのかな。まだ先の未来を想像しては、にやけてしまう。

「二葉は? まさに体から始まってるじゃない。どう思う?」
「えっ……そうだな……体だけが繋がるのはやっぱりセフレなのかなって。都合の良い女みたいな感じがしちゃうから、やっぱりちゃんと関係性をはっきりさせた方がいいと思う。美玲がその人とこの先の関係を望むなら尚更だよ。ただもしかしたら自分が思い描くような答えが返ってこないかもしれない。それも覚悟しないとだけどね。私は体だけになりたくなかったから、あの出会いを一度終わらせたんだ。あれはお互いただの情だったから。今はまだ体の関係は持ってないけど、あの頃とは違ってちゃんと恋愛してる気がするの。だからかな、最近彼への好きが溢れそうになる」
「おっ! ということはそろそろ告白&セックスの解禁が間近ということ⁈」
「……かな?」

 二葉は赤くなる頬を両手で隠す。

 美玲は黙ったまま、一点を見つめる。きっといろいろ考えているに違いない。

「よし、決めた。次に誘われたら、関係性についてはっきりさせる。私の答えはたぶん決まってるから、彼の反応次第だけど……。でももうズルズルしない」

 美玲が笑顔で言い切ったので、四人は笑顔でグラスを合わせると、さらにお酒を追加注文するのだった。

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