人間の物語

猫狐冬夜

青色レンズの望遠鏡で見た、新しい世界に行く前に獣耳を舐めようか

アリシア「はい」
アリシアがその青い板を自分に手渡した。
その板は半透明な青が綺麗で、小さく文字が書かれている。
アリシア「読んでみて」トウァ「うん。」
[人永時真伝 724年 
この書物は、我が愛おしき子孫の安寧の為に執筆した。この書物は心から信用できる者に
のみ見せるべきであり、特に高人や天人には見せてはいけない。
我が名は、ロメス・ヘルム。真実が隠され歪で奇怪な世界で、偽りの幸せに毒されて
しまった子孫よ。そんな騙幸人の為に我は伝える。]体がゾクゾクしてきた。
ただ、アリシアは自分が読んでいる間、暇じゃないのだろうか。そして、アリシアの声が
聴きたい。トウァ「アリシア、自分、読むの、時間かかりそうだしさ、呼んでくれない?
アリシア、退屈しちゃいそうだから、アリシアが声に出して読んでくれない?」
アリシア「うん。」アリシアに板を手渡す。アリシアの獣耳がさっきから気になって
仕方がない。本当に幻想的で可愛い。後で触ってみたいな。
アリシア「じゃあ、読むね...ってトウァ、何処まで読んだ?」指をさして示す。「ここ」
アリシア「うん、[20年前、新たに生まれた者への洗脳教育が始まった。1253年以降に
生まれた者は、親ではなく高人と称されている愚働グド人によって、集団で育てられる。
洗脳の効果が最も高い、乳幼児期に愚働人は洗脳をし、その洗脳内容は、ある苦痛をない
ものとしたり、例外が存在しないとして、暗に例外的な行動をできないようにする事で
、直接的な強制をせずに、労働を行わせている。また、労働を、主体的に行っている趣味
とする為に、色々な心理学的誘導や洗脳を行っており、騙幸人は操り人形と化して
いる。今の騙幸人の生活は明確に不幸だ。そんな世界であるのに騙幸人が笑みを
絶やさない姿を見ていると、恐怖を感じる。殺人鬼の方が人間味があってまだいい。
そして、この洗脳の事を、私達、1253年以前に生まれた者は、固く口を閉ざされて
いる。これを読んだ者も狂気の夢から目覚める事を祈る。まず、この世界には主に
5種類の人間、人種がある。
列挙すると、ソドゥゼル、ルイリア、ルェサ、トルロトリアル、エグザドゥゼルマだ。
そして、この人種には支配階層がある。下位の階層から順に簡単に解説する。
最下層人種ソドゥゼル。身長、1~1.1m、体重12~16kg。平均寿命、13歳。
容姿は濃い緑色の髪、漆黒の肌、白濁した光彩、異常に少ない筋肉である。
この人種は、一種を除いたすべての人種の死肉を食している。知能は低く、
言語能力は語彙のみの二語文であり、古代では人か否かが良く議論された。
別称は哀愚アグ
第四階層人種ルイリア。まずオス、身長1.52~1.75m、体重36~56kg。
メス、身長1.47~1.69m、体重32~49kg。肌は北西アジア色、髪と光彩は明度と
彩度が最大値の90%であらゆる色相、つまり鮮やかでパステルで、個人個人で
色が違うのだ。眼球が大きく、つまり瞳孔(瞳)が大きい為、暗視能力、遠視能力に
優れている。蔑称は騙幸カタサ。そう、君達だ。そして、寿命を書いてい
なかったが、現在のルイリア人の寿命は人為的だ。50歳で殺処分される。
君達の学校は49歳が最高学年だろう。50歳までに人は高人になれるから、少なくとも、
50歳で老化が「発現」するからと教え込まれているだろうが、実際は高人とは別人種
であり、高人になる事はない。老化や病気とは、君達の思うようなものではない。
高人になる時の身体変化ではなく、単に壊れていっているだけだ。人の死は老化や寿命が
定めている。、老化によって死亡する平均年齢は83歳だ。君達は老いた者を見たことが
ないのだろう。そして、君達は不幸だ。
食事の量は少なく、慢性的な栄養不足、一日10時間にもわたる肉体労働、
本来なら苦痛である筈だが、幼少期からの洗脳によって抑え込まれている。
また、世界観も虚構だ。上民、中民、下民などという区別もないし、世界の形や発生も
全てが嘘だ。私達は他の人種よりも知的だ。だからこそ、知識があれば安心してしまう、
矛盾していない知識で安心してしまう。思考なんていうものは、所詮、経験、知識を
根底に、本質にしている。この世界が夢でないことを証明することができないように
、得られる情報や経験の全てを操作されたこの世界で、私達の知性は弱い。
一日五時間にも渡る勉強は、知的な生物である私達の精神を安定させるためだ。
一日十時間にも渡る労働は、君達よりも上位階層の人種が資源を得るためだ。
その資源で朝や昼に配られる食事が作られている。].........[そんな、私達の楽しみと
言えば、精神安定として設けられた学習くらいなものだ。
第三階層人種ルェサリア。オス、身長1.74~2m、体重59~90kg。
メス、身長1.62~1.86m、体重42~63kg。老化によって死亡する平均年齢は96歳だ。
肌は東南アジア色。髪は茶色で、瞳孔はパステルパープル。彼らは、君達が高人と呼んで
いるものだ。ルェサリアは直接的生産以外の仕事、ルイリアの管理や、第二階層人種の為
の労働、ソドゥゼルに死体を運ぶなどの労働を行っている。少なくともルイリアよりは
楽な仕事で、満足な食事、それなりの住宅で生活している。蔑称は愚働グド
第二階層人種トルロトリアル。オス、身長1.8~2.07、体重100~152。
メス、身長1.68~1.93m、体重71~108kg。老化によって死亡する平均年齢は111歳。
肌はコーカソイド(白)色。髪は深紫で瞳孔はオレンジ色。ルイリアやルェサリアに
よって、働かずに生きている。君達が天人と呼んでいる人種だ。
また、詳しい事はわからない。我々との直接的な接点が
少ないためだ。蔑称は愚富グフ
そして、最高階層人種エグザドゥゼルマ。これは、そもそも、最低階層から第二階層まで
の差は大きく異なり、根本的な差がある。トルロトリアルも、ソドゥゼルも、
エグザドゥゼルマに、等しく絶対的な力で支配されている。エグザドゥゼルマが接触する
人種はトルロトリアルだけである。そのため、見た目などの詳細は不明であり、
絶対的な力の関係があると言い伝えられている。また、別称に支強人ツキトというもの
がある。この様な支配関係、人種階層がいつからあるのかはわからない。
ただ、ツァリア暦の始まりがそうであるとも言われている。
そして、私は、君達に力を授ける。力、それは、知識だ。公域Hの中心に一本の大きい鉄製
の棒が刺さっている。その下を掘ると、私が埋めた大きな箱があるだろう。その中には膨大
な書物がある。ぜひ、見つけてくれ。5000kmの旅を遠い過去から応援している。
そして、そんな所に埋めたのに、理由はない。面白半分だ。]
.....トウァは信じてくれる?」アリシアが少し不安そうに聞く。
トウァ「信じるよ、ずっと疑ってたんだ、この世界を、その答えがこれだと思うんだ。」
アリシア「そっか、良かった。ずっと前に見せた友達が...親友が一人いたんだけど、
すっごく怒っちゃってさ......良かった、信じてくれて。...ねぇ、トウァ、旅に出ない?
ここじゃない何処かに、ここじゃない世界に。この世界が無限に続いているわけ
じゃないんだから、きっと、ずっとずっと、遠くに行けば、この世界じゃない何処かが、
この世界よりも自由で幸せな世界があると思うの。だから、まず、そのための知識を
得るために...私と...公域HBに行ってくれない?」
ここじゃない何処か。ここよりも自由で幸せな、きっと何処かにある未知の世界。
それをアリシアと探しに旅をするのは、どれだけ楽しい事だろう。どれだけ、幸せな夢
だろう。トウァ「うん、いいよ。アリシアと、そんな旅に出られるなら幸せだよ。」
アリシアは、夢心地で幸せそうな表情をしている。アリシア「トウァ...ありがとね。
トウァを選んでほんとうによかったよ。」トウァ「自分もアリシアと出会えてすっごく
幸せだよ。ありがとうね、自分を選んでくれて。」アリシアと一緒にいられるなら何が
あっても幸せだ。トウァ「公域HBって、端から中心まで5000kmだっけ?」
アリシア「んー、それがね、公域って全部、正方形でしょ?ここから公域HBまで
直線距離で300kmくらいあるんだけど、ちょうどそこって、正方形のかどっこなの。
わかるでしょ?」斜辺か。トウァ「斜線の定理だから.........7071kmだね。」
アリシア「でしょ?だから、ごはんどか持って行かなきゃいけないの。
1日、250km歩けば、28日で着くから、28日分の食料を持って行かなきゃ
いけないの。」トウァ「250kmも歩けるかな、1日で。」
アリシア「歩けるよ、私は。私、長距離走、得意なの。」
アリシアは笑顔で得意げに言う。
トウァ「話変わるけどさ、人永時真伝にアリシアの耳の事書いてなかったね。」
アリシア「んー、これ書いてなかったね。埋めたっていう箱の中の書物には書いて
あるのかな。」アリシアは「これ」と言いながら獣耳をピョコピョコ動かす。
トウァ「ねぇ、それ触りたい。」アリシア「えぇ、これ、こちょばしそうなんだだよね、
触られると。触られたことないんだけど」
アリシアは癖なのか耳を時折、ピクピクと動かす。
トウァ「ピョコピョコ動いてるの見ると可愛くてさ、すっごく触りたくなるんだよね。」
アリシア「う、うん。」アリシアは少し恥ずかしそうにしている。
アリシア「そういえば、今日、森の中で会った時も、「すっごいじっと見つめてくる
なぁ」って思ってたら突然「可愛い」って言いだしたからびっくりしたよ......可愛い?」
トウァ「うん。」改めて言われるとこっちも恥ずかしくなる。
アリシア「耳...触りたい?」アリシアは少し顔を赤くして微笑みながら聞いてくる。
トウァ「う、うん。」アリシアは恥ずかしそうに、落ち着かない様子でキョロキョロ
している。アリシア「そっとだよ?あと耳の内側は本当にこちょばしいからダメ
だからね?」トウァ「うん。」膝立ちで歩いてアリシアに向かい合う形で近づく。
距離が近いとちょっと、緊張する。改めて間近で見てみると、大きくて、耳の表面は、
サラサラして、綺麗で短い毛に覆われてる。耳の内側は縦長の毛がフサフサと
立っている。トウァ「触るね。」アリシア「うん。」アリシアは下を見る形で、
耳を自分の方に向け、上目遣いで、心配そうに自分の事を見ている。ゆっくり、
アリシアの耳に手を伸ばす。指先でそっとアリシアの耳のとがっている部分に触れる。
トウァ「大丈夫そう?」アリシア「うん。」そのまま、指をスーッと撫でながら
後ろ側の、耳の下に下していく。
アリシア「あ、トウァ、下のところはこちょばしいの。」
赤い顔で、弱々しそうにしているアリシアを見ているといたずら心が出てきた。
トウァ「ここがこちょばしいの?」アリシアの耳の下、付け根近くをサッと撫でる。
アリシア「あっ!...そこは駄目だよ。」アリシアは、ちょっと怒っているような感じで、
見つめてくる。なんとなく、耳の後ろ側に手を当ててみる。撫でてみると凄くサラサラ
していて触り心地がいい。アリシア「ちょっと...撫でないでよ。」アリシアは撫でる度に、
体をビクッと降るわす。唇も声を出さないように、強く閉じている。
アリシア「もう、満足した?」手を止めると、アリシアは少し疲れた様子で聞いてくる。
トウァ「んー、じゃあ、最後にさぁ...」この獣耳を見た時からずっとしたかった。
口を開けて、そっと、優しく、ハムっとアリシアの耳を唇で挟んでみた。
アリシア「んー!?だめぇ、ほんとに、だめ!ちょっと、だめ...」
アリシアは耳をずっとバタバタさせている。
アリシア「ダメ...だってば......ん......はぁ、はぁ」だんだん慣れてきたのか、アリシアは
少しはぁはぁしながらも落ち着いてきた。なので、もうちょっと奥まで口の中に入れて
みた。アリシア「ちょっ!...ダメ...だから。...いい加減にしないと怒るよ。」
下を見ると、不機嫌そうなアリシアが見つめていた。ちょっと、舌を動かしてみる。
アリシア「あぅ、あぅ、あっ、ダメ...あぁ、ダメ...ダメだってば...」
アリシアははぁはぁしながら声を震わせて、泣きそうな様子で見つめてくる。
アリシアが自分の肩に手を乗っけて強くつかんできた。最後にチューって吸って、
アリシアがビクッてしたのを見て、口を放してあげた。
アリシア「はぁ、はぁ、はぁ、...もう一生、触らせないから,,,。」
アリシアは怒っている様子で言う。
トウァ「怒ってる?」なんだかおかしくて軽く笑いながら聞く。
アリシア「酷いよ、触りたいって言うから、信用して触らせてあげたのに。
もう、触れせて上げないからね。」トウァ「へへ、ごめん。」
アリシア「はぁー」アリシアは大きなため息をつく。
アリシア「疲れちゃったよ。それに、もう、寝る時間じゃん。」
アリシア「私、もう寝るから。おやすみ。」アリシアはそそくさと
冷たくそう言ってベッドの中に潜り込んでしまった。
獣耳だけが、ぴょこんと出ている。ちょっと触ってみる。
アリシア「ねぇ...本当に、怒るよ。」アリシアは低い声で言う。本当に怒ってる。
凄く不安になる。
トウァ「あ、ごめん。怒んないで、もうしないから。......嫌わないでね?」

~アリシアが寝て暇になった。さっきから、ずっとボーっと、
アリシアの寝顔を見ている。起きたら機嫌を直してくれているだろうか。
嫌われていないか不安になる。暇なので、人永時真伝をもう一度読んでみる。
~読んでない場所がある。アリシアは何でここを読まなかったのだろうか。
不思議に思いながらも読んでみる。
[...そして、語るのも嫌な特別労働。君達は、同種族での性行為をしない。
本来はするのだがそうゆう欲求も洗脳によってなくされたのだろう。ルイリアの性欲は、
現実よりも観念、本能的ではなく感情的だ。そして、本能よりも感情の方が操作は簡単
なのだ。そもそも、君達は性行為が何なのかもわかっていないだろう。
そもそも、人という生物がどのように繁殖しているのかすらも知らないのだろう。
人は本来、その特別労働。性行為によって、妊娠し出産する。...と、そもそも妊娠も
出産も知らないのだろうな。とりあえず、性的行為で人は誕生する。だが、特別労働では
そうならないようになっている。人の生成には精液が必要なのだが、
モッドノックmodnocという古代科学文明時代に反出生主義の者達が自分の種族を絶滅
させようと作ったものを装着して性行為をすることで精液を採取できる。
その精液を元に作っているわけだ。本来、異種族との性行為はめったに行われない。
性行為とは、厳選した対象、好みの者としかしたくないようにできており、その厳選の
条件に自己同一性があるからだ。そして、そうでない対象との性行為は苦痛なのだが、
それに関しても洗脳が行われているのだろう。また、私達、ルイリアは、人種の中で
珍しく、性に羞恥を感じのだが、それも洗脳でなくなっているのだろう。]
思えば、自分は、特別労働が始まる年齢の時、性殖能力に関する情報を学籍に登録
する為にアンケートを受けたがなんとなくEDを偽った。それから、一度も特別労働を
したことはない。ふと、酷く嫌な想像をして、自分も眠くなったから、横になって
その嫌な想像を振り払うように目をつぶる。アリシアは例外だ、きっとそうだ。
そう振り払って、アリシアの近くでゆっくり、色々あった1日を思い出しながら、
アリシアの事を想った。

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