カモフラ婚~CEOは溺愛したくてたまらない!~

伊吹美香

episode 2 新婚生活は蜂蜜みたいに

私は蒼空の首元に、自分の腕をゆっくりと回した。

どうしてこんな行動に出たのか、私自身もわからない。

けれど少しでも蒼空との物理的距離を縮めたいと思ってしまった。

優しく、愛おしく、力強く、思いきり抱きしめてほしいと思ったのだ。

もっというなれば、その先も……。

「由華ちゃんって、そんな表情して誘うんだね」

「え……」

「由華ちゃんの表情、ゾクゾクする」

額にかかった髪を指で払われただけで、私の身体がピクリと反応した。

「あどけない女の子の表情しか知らなかったのに。大人になった由華ちゃんにそんな目で誘われたら堪らない」

喉を鳴らす音がかすかに聞こえ、私こそ堪らなくなった。

「それを言うなら蒼空のほうだよ」

「俺が?」

「昔から私のこと好きだったって言うわりには、なにもできないままだったくせにさ。今頃になって表れて、強引にこんなことになっちゃうんだもの。その目で迫られたら、何でも言うこと聞いちゃいそうになる……」

私が今ここにこうやっているのは全部蒼空のせいだと思っていた。

「なんでも……ね」

しかしそう言って妖しく笑った蒼空を見つめたら、そうじゃないのかもと思えてしまった。

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