episode　２　新婚生活は蜂蜜みたいに

どれくらいの時間会話をしていただろう。

夕方に辿り着いた蒼空の部屋かの窓から見えていたのは、ほんのりオレンジがかった空であったが、今ではもう真っ暗で何も見えない。

それほどの時間をかけたのだから、私にとって得るものは大きかった。

蒼空は広告代理店に就職してキャリアを積み、二年前に独立したばかり。

激務であるとされている広告代理店だが、各専門の担当を置きマーケティングをすることで、働きやすさの改善に努めているのだとか。

今は大きなプロジェクトのプレゼンが目前らしく、かなり忙しいのだとか。

それでも新婚生活を大切にするために、今後はさらに働き方を改善するつもりだと断言していた。

職業柄、常にトレンドの最先端に敏感でいなければならないのは大変だが、リサーチ業務は好きなので苦痛にはならないとのこと。

それを言えば私もリサーチは好きだし、流行りを上手く取り入れて結婚式を作り上げているので、夫婦ともに利点があると思う。

性格的なことに至っては詳しく掘り下げて聞くことはしなかったが、蒼空の話し方や伝え方に人柄が出ていて、本当に大らかで誠実なことが十分に感じ取れた。

恋愛結婚カップルの濃さに比べたらペラペラであるかもしれないけれど、なぜかこのまま蒼空との結婚生活をスタートさせても問題ないように感じた。

昨日から本当に何の確証もない『大丈夫』なのだが、そう感じてしまうのだから仕方ない。

それに何よりも。

「由華ちゃんを諦めきれなくて本当によかった。一年間で絶対に結果を出して見せるから」

何度も何度も私に対する愛情を伝えてくれる蒼空の気持ちが本物だと十分に伝わるからだ。