金髪紅眼の後輩が彼女になりました!(ただし、彼女の正体は地上最強の人妖とする)

チョーカー

天王けあきの七不思議退治①

「さて、授業も終わったし、今日も1日……うわっ!」

「それでは参りましょうか? 正道翔くん?」

「っ!? 天王……さん!?」

「あら、もっと気軽に『けあき』と呼んでください」

「いや、そんな事より……」

「はい? なんですか?」

「いきなり、後ろから腕を絡めてくるな!」

「あらあら、顔が真っ赤。あの狐とは、まだそこまでの仲ではないのかしら?」

「違っ……初対面のはずが、仲良くしてたらクラスで変な噂になるだろ?」

「えぇ、新しい学友の方々、みなさんは驚愕の表情を浮かべてましたね」

「はぁ、だよな? どうやって言い訳したら良いだよ」

「別に元からの知り合い。旧知の仲と言うことしましょうか?」

「……そう改めて言われると、昨日俺と会ったばかりだよな? きみ、コミュニケーション能力高過ぎない?」

「職業柄、情報収集の訓練を受けていますので」

「へぇ~ じゃこれも特殊な交渉術ってやつ?」

「そうですね。何か事件が起きれば、現場周辺のコンビニに行って

『最近、奇妙な出来事はなかったか?』

 なんて聞く日常を送っていますので」

「それは大変そうだな。うっかり、俺が同情してしまいそうになるくらいには」

「きっちり、同情してくれても構いませんよ?」

「……そうか、ところでどこに向かっているんだ?」

「お忘れですか? 賀茂先生から放課後は学校案内を頼まれたでしょ?」

「いや、聞いてないけど」

「そうですか。ちなみにコチラがリストになります」

「リスト? ってなんのリストだよ?」

「学校案内で周って貰う箇所を事前にピックアップしました」

「それ、もう学校案内必要か?」

「必要ですよ。貴方も図書委員がない日は暇でしょ? それとも用事がない日も、狐と一緒に過ごしているのかしら」

「過ごしてるよ、彼女なんだから」

「おやおや……あっ、最初はここですね」

「音楽室か。どうして、ここを一番に? 音楽が好きなのか?」

「音楽を聴くのは好きですよ。音痴なので歌うのは苦手ですが」

「それじゃ演奏する趣味があるのか?」

「いいえ、私の目的は別にあります。早く入ってください」

「?」

「今、結界を張りました」

「……何のために?」

「ご存じありません? 放課後、誰もいないはずの音楽室からピアノの演奏が聞こえてくるって話」

「誰もいないのにピアノの演奏って、誰かが音楽室に入って来たから恥ずかしくて隠れただけじゃないのか? そもそも、普通は吹奏楽部がいそうなもんだが?」

「まぁ、それが真相でしょうね。ですが……そこ!」

「うわぁ! 急にジャンプするな……って、ベートーベンの肖像画?」

「ここに隠れていました!」

「何が!?(……って空中で停止してる! そのまま肖像画から、何か引き剥がそうしてる?)」

「いろんな名前がありますが、一番わかりやすいの悪霊ですね」

(うわぁ! 黒い物体を引き剥がして、そのまま地面に投げつけた!?)

「悪霊って大丈夫なのか? それ!?」

「簡単な処置は賀茂先生が行っていたのでしょうが……完璧な処置とは言えませんね」

「コイツを倒すつもりなのか? おっ! 黒い影が巨大化し始めて……ピアノの怪物になった!?」

(無機物が急に生物になって動き出すと、凄いグロテスクな怪物になってる! うわぁ気持ち悪い!! そして、何よりもデカい!)

「おそらく、賀茂先生は暇ができたら倒すつもりだったのでしょう。でも、私が来たからには素早く排除します!」

『斬』

「腰の日本刀を抜いた……と思った次の瞬間に、ピアノの怪物が真っ二つに!?」

 先ほどまでいたピアノの怪物。 

 像のようにデカく、昆虫のような脚。 鍵盤部分は生物を捕食するための口になっていた。

 グロテスク過ぎる怪物は瞬時に斬り倒されていたのだ。

「……へぇ、翔君? 今の私の動きが見えましたか?」

「ん? そりゃ速過ぎて見えなかったよ」

「……」

「なんだ? 急に黙りこくって考え事を?」

「いえ、それでは次に行きましょう」

「次?」

「先ほどお渡ししました紙ですが、学校案内の目的は七不思議と言われている場所で巣を作る悪霊を滅ぼす事です」

「学校の七不思議……って、今みたいなのが6か所も起こり得るのか!」

「起こり得るではなく、無理やり叩き起こして討伐するが正しいですね」

「勘弁してくれよ。そもそも、学校の七不思議なんで高校であるものなのかよ。普通が中学でも卒業するのが遅いくらいの噂話だろ?」

「まぁ、原因には鳥羽あかりと名乗る存在に在るのですが」

「あかりに?」

「おや、急に真剣な表情になりましたね」

「当たり前だろ? 彼女が関わっているなら」

「そう……ですか。 彼女が私たちが呼んでいるように人妖の神。それが長い間、学校で封印されている事で、本来なら可愛い噂話で済む『学校の七不思議』なんてものに強い力を与えています」

「――――っ! わかったよ」

「おや? 私は、何も言っていませんが?」

「あかりが原因で、この学校の生徒が怪我をしたとか起きたら、アイツが悲しむだろ?」

「ん~ 悲しみますかね? そんなタイプには見えませんでした」

「傷付きやすいよ。見た目にでないから、分かり難いだけで、彼女は……」

「だから、協力すると? 随分と彼女想いな彼氏さんですね」

「ふん、当たり前の事を当たり前にやるだけさ。それで?」

「?」

「それで、なんの力もない俺に何の……どうやって協力をすれば良いんだ?」

「それは――――」

「それは?」

「ごめんなさい。考えてませんでした」

「……はぁ?」


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