金髪紅眼の後輩が彼女になりました!(ただし、彼女の正体は地上最強の人妖とする)

チョーカー

番外編? 鳥羽あかりの戦闘

賀茂 あすかは抜き身の剣――――天羽々斬を月夜に照らす。

 月明かりを浴び、薄く青く煌めく霊剣 天羽々斬《あめのはばきり》。

 果して本物だろうか? ――――いや、そんなはずはない。

 その剣は、幾つもの別名を持つ神話の剣だからだ。

 十握剣、十拳剣、十掬剣から始まり――――

 『天羽々斬剣』

 『布都斯魂剣』

 『天十握剣』

 『蛇之麁正』

 『蛇之韓鋤』

 『天蠅斫剣』

 これほどまで多くの別名を持つまで有名な剣。

 その剣は有名な理由は――――

「龍殺しの剣か。それも日本産の龍殺しを相手するのは、流石に初めてかな?」

「そうですか。それは他国の龍殺しとなら戦闘経験があると言う事ですね……少し、驚きました。でも――――」

「むっ! 出よ蒼き狐火! 仇名す者を焼き払え!」

「一瞬で10を超える妖力の炎!? ですが私の技、居合に対しては遅すぎです」

「こ、コイツ、わっちの狐火を走りながら避け! そのまま剣を――――」

「抜刀! まずは脛斬りを狙わせていただきます」

「痛っ!」と声を出すあかり。しかし、それだけ……追撃はこなかった。

「む? なぜ離れる? わざわざ、わっちの足を斬るためだけに高速で接近したわけでもあるまい。 うまくいけば、この素っ首を切り落とせたかも知れぬぞ?」

「ご謙遜を……この地に封じられたとはいえ、貴方は人妖の神。そもそも妖力の5割も出していないでしょ?」

「くっくっく……正解だ。妖力の擬態……弱者と侮った者を『こんなはずではなかった』と惨めに殺すために身に着けたのだが……」

「くっ! 妖力で狐火を纏って――――いいえ、これは! 体そのものが火に変わっている」 

「正解だが、少し付け加えさせてもらうと、5割どころか1割も力を発揮していないがな」

「なっ! 封印されてるはずなのに、これほどの力を!」

「ほれ、その顔じゃ……こんなはずではなかった。表情が叫んでおるわ!」

「――――っ!(見誤った。先走った。このままでは、私1人の力では勝てない。せめて京の組織に――――天王家の人間を呼ばなければ)」

「判断がいい。重心が僅かに後ろへ。逃走に専念したか」

「っ! そこまで読みますか。では――――逃げさせてもらいます」

「速いな。切り込む速度よりも後退する速度の方が速い。脆い人間が人妖と戦うために考えた技術。ヒット&アウェイってやつか……だが、させぬよ!」

「私の後退速度に一歩で追いついて――――え!? ちょっと、何をする気ですか?!」

「いや、高速で後退中に足をひっかけると、どうなるかなぁ? って思って」

「どうなるかなぁ? じゃありませんよ! ちょっと、やめ! 止めてくだ――――あぁぁぁぁ!」

「うわぁ、そのまま廊下の端まで吹っ飛んでいったわ。大丈夫? 生きておるか?」

「――――そう簡単に討伐できるとは思っていませんでしたが……まさか子供扱いされるなんて」

「おぉ、生きてる! 生きてる! 凄い生命力じゃなぁ」

「どういうつもりですか?」

「どう? ……とは?」

「今がチャンスですよ? 私を殺さないのですか?」

「戯け! 殺されたいのか? じゃが、今のわっちは気分が良い。すこぶる気分が良い。わかるじゃろ? 宝くじが当たった日は、戯れに人を殺すのは止めておこうって感覚?」

「感覚が違い過ぎてわかりません。ですが――――」

「まさか……ですが、後悔しますよ。なんて言うつもりじゃあるまい」

「くっ!?」

「せっかく拾った命をありきたりのつまらぬ言葉で捨てるか?」

 それだけ言うと人妖は、姿を鳥羽あかりの物に戻り、夜の学校に消えて行った。

「敵とすら見られなかった。せめて、私の眼の効力が生かせれば――――あるいは!」

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

「なんて事があったのです! どうにかしてください翔くん!」

「そんなバトル漫画みたいな話、本当にやったんですか!? あかりの口調、途中でラスボスみたいになってたじゃないですか!」

(土曜日に賀茂先生から電話があったから、何の用かと思ったら……)

「封印されてるから退治は簡単と思ったのですが、逆ですね。退治する方法が見つからなかった封印された部類ですね」

「うそ! 私の彼女、強過ぎじゃない? カッコいい///」

「いえ、本当に強すぎて困っているのでふざけないでください」

「はい、すいませんでした。……でも」

「はい? でも、なんですか?」

「本当にアイツを退治する必要ありますか?」

「はい!?」

「だって、昔は悪かったのかもしれませんが、今は……少なくとも俺が感じてる鳥羽  あかりは普通の女の子です」

「……」

「先生?」

「翔くん、確かに翔くんの前では、彼女は普通の女の子かもしれません。でもね―――― 例え普通の女の子でも、世界を滅ぼしかねない力を持っていれば、排除しようとするのが普通の人間じゃないですか?」

「――――っ!」と息を飲む。電話越しの声に威圧されるも翔は、

「俺は、それ……正しくないと思います」

「そう……ですか。わかりました。それじゃ試してみましょう」

「試す? どうやって、あかりを試すつもりですか?」

「今度の日曜日、私は隠れて貴方たちを尾行します!」

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