天壌無窮の守人

兎月あぎ

第八幕 天壌無窮の守人

ドサッと空中からノックが落ちてくる、体を見れば大部分が変色しており左腕に至っては変な方向を向いている。体に相当な負担がかかっていることは見るからに分かるであろう。そんなノックを近づいてきたミリーは首根っこを掴みズルズルと引っ張るのであった、怪我人にする仕打ちではない。
ミリーに引きずられ着いた先は紫乃や吾蔵研究員たちが集まっているところだった。吾蔵研究員は何やら端末を取り出して何者かと連絡を取り合っているようだ、恐らく各国のお偉方なのだろう。眉間にしわを寄せながら話している姿が見て取れる。
痛む体に気を使いながらノストラダムスの方を見る、まばゆい光を放っていた体は今では淡い光を放つ程度になっており、その巨体が徐々に消えていっているのが見える。
「見つけたぞ」
ノストラダムスの体の上からそんな声が聞こえる、声のする方に顔を向けるとそこにはCcが立っておりパワードスーツは一部が欠けてしまっている。そんなCcの右腕の先に四肢を失っているノスの姿があった。
「さて…どうするかな」
そうCcがノスの処分に悩んでいると吾蔵研究員のいた方から焦った声が聞こえる。何やら早口でまくし立てるように喋っている様なので離れた位置にいるここからでは内容は聞き取れない。しばらくして代理戦争用兵器の間を縫うようにして吾蔵研究員がこちらに急いで向かってきた。
「世界で起こっている異常現象が未だ止まっていないらしい、いったいどういう事なんだ!説明しろノストラダムス!」
吾蔵研究員がそうノスに問いただす。ノスは閉じていた眼をゆっくりと開け答えだした。
「お前たちは現状首の皮一枚で留まっている、だが首の皮一枚だけでなんとかなると思ったか?他の世界との繋がりが残っているのはお前の持っているその機械だけだ。言っただろう?今守ったところで徐々に壊れていくと」
「貴様!」
Ccが胸ぐらをつかみ怒りをあらわにするも吾蔵研究員が制する。
「じゃあ何も手立てはないと?」
「………そういやお前もイレギュラーの一つだったな、本来の輪廻転生の輪から外れたにも関わらず無理に輪廻の輪に入り…お前の様なイレギュラーが多ければ多いほど世界を保つことを不可能にする。それが増えすぎた、分かるだろう?」
そう言いノスは吾蔵研究員の後ろに目をやる、そこには大量の代理戦争用兵器。全てゼロポイントの力が大なり小なり使われている。吾蔵研究員は頭をガシガシとかきながらどうにかできないかと思案する。
ずりずりとノックがノスの近くまで這い寄る。向こうもこちらを認識したらしくじっとこちらを見てくる。
「なぁノス、本当に何もないのか?」
「…ないと言ったらない」
そっぽを向いて答えるノスにノックはじっとノスの顔を見つめる。
「なぁ…お前が消えたらどうなるんだ?いやまぁこのままだと…世界が滅ぶのは分かってんだが」
「核もお前に壊された、もう転生することも出来ん。大人しくこの世界が消えるのと一緒に消えるさ、まぁこのままだと私の方が先に消えそうだがな。それに守人の役目ももう無いしな」
ノスの体も徐々に消えかかっているこうして話しできるのもあと少しだけだろう。何を言おうかノックが考えていると…大地震が発生した。世界の終わりが近いのだろう世界でこのようなことが同時多発しているのは先ほどの吾蔵研究員の発言で分かっている。
するとノック達のいる地面がぱっかりと割れた、先ほどの戦闘で地盤はがたがたになっていたのだろう。ノックとノスの真下に地割れが出来る。
「「なっ!?」」「ノック!!」「捕まるアル!」
急いで吾蔵研究員たちが手を伸ばすもあと少し及ばず、ノックとノスは地割れの中に飲み込まれていったのだ。






世壊まで 残す所1分

地球のあちこちから光の柱が上がる




数日後、地割れの中に飲み込まれていったノックとノスの探索が行われていた。実はあれから世界の崩壊は止まり今は各国で事後処理が行われている、因みに何が原因なのかは全く分かっていない。そんな中数日間地割れの中を探しているのだが一向にノックの姿が見つからないのである。
ノスに関してはすでに消滅済みと決定づけられているのだがノックについては再生能力は失われていないはずなので生きているはずなのである。そのため一部の代理戦争用兵器の力を借りて探しているのだが未だ見つかっていない。
地割れに飲み込まれた後すぐに動けるような体ではないことは見るからにも分かる状態だった上に、力の使用限界を超えていたためより回復まで時間を要するはずである。移動したにしても痕跡が一つもないのはおかしい。
こういう時一番手伝って欲しい吾蔵研究員は事後処理に追われているため手を借りることが出来ない。捜査も期限的に本日が最後である、紫乃やミリーも手伝ってくれており現場指揮はCcが取っている。
紫乃やミリーが地割れの中から登ってくる
「だめや…どれだけ響かせてもノックの影は全くないわ」
「どれだけ呼んでも返事が無いアル、一体どこ行ったアルカ?」
2人とも収穫無しのようだ、他の面々からも情報は一切ない。
『そうか…みんなすまない、本日にて探索を打ち切る。手伝ってくれてありがとう』
そうCcが捜索を手伝ってくれた皆々に話しかける。その言葉を聞いた後様々な思いを抱きながらその場を後にするのだった。残ったのはCcを含め紫乃とミリーの三人、後から用をある程度済ませた吾蔵研究員がやってくる。吾蔵研究員はやってくるなり皆の顔を見て察したのか暗い顔をしていた。日も沈み星々がきらめく時間となってきた、研究所の再建もしなくてはならない。そのためここも埋められる、願わくばどこかで生きているといいのだが…そう考えていると。

4人の背後に巨大な裂け目が出来上がる。いきなり何事かと振り向く4人の目の前に、
「うおわっ…とと。みんなすまねぇ、遅くなった」
ずっこけながらも出てきたその声の主は、
「ちょっくら守人になってきたぜ!」
「「「『はぁぁあああああああああああ!?』」」」
ノックだった。

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