天壌無窮の守人

兎月あぎ

第七幕 紅き願いはロッシュ限界となりて

世界各国が様々な自然現象による弊害に悩まされる中、日本のとある研究所にて。
「さて…そろそろかな、準備はいいかCc?」
『言われずとも、次こそ仕留めてやるさ』
吾蔵研究員とCcが何かしらの装置をいじりながら話し合っていた、全ては数時間後にやってくる敵についてだ。まもなく日が暮れる、空にはすでに一番星が瞬いていた。




日本に到着したノス一行、目的地の研究所まで残り少しと言ったところである。約半年ノックとノスは共に行動してきた、その間にも様々なことがあった。…大変なことばかりではあったが中々に楽しかったのではとノックは考えている。
ノスの方をちらりと見る、何を考えているのかは分からないものの決意に満ちた顔をしている。前回はCcとやら人物に大敗を喫することとなったがあの様子であれば何か算段があるのだろう、そう考えたノックは次にミリーの方をちらりと見る。ミリーは先ほど寄った店で購入したハスカップをほおばっていた、呑気なものだ。そう、現在の位置は北海道なのである。
気候が荒れ狂い思うように目的地に到着するのが遅くなった上に、サジタリウスの端末の電源が切れ使い物にならなくなってしまったハプニングなどがあったもののようやくここまで来たというわけである、日も暮れ始めまもなく夜が来る。そこからが本番だ、空にはすでに一番星が輝いていた。

「この辺りだ…時空の歪みがある」
そう言うノスの言う通りよくよく目を凝らして見なければいけないのだが、一か所だけ陽炎のように空間が揺らいでいる部分があった。またよくよく感覚を研ぎ澄ませると同じような揺らぎが複数個所にあるのが分かる、恐らく研究所への入り口は複数あるのだろう。ノスは躊躇なくそこに手を突っ込みごそごそと何かを探すかのように手を動かしている、しばらくするとガコンと音がし軽い衝撃波と共にそこに扉が現れた。
ノスはその現れた扉へと歩いていき中に入る、そこは一直線の通路だった。不気味なほど静かで重々しい空気が漂っている。靴音が嫌に響く、先には一枚の大扉恐らくこの先にいるのだろう、覚悟を決め3人はその中へと足を踏み入れたのであった。




だだっ広い空間、無機質と言っていいほどの空間である。その空間の先、そこにはCcと一人の男が立っていた。
「やぁ、初めましてだな、私の名前は吾蔵研究員とでもよんでくれ。普通の人が来るような場所ではないのだがお三方は一体何しにここに来たのか説明願いたいな」
そうおどけた様子で吾蔵研究員が聞いてくる。ノスが一歩前へ出てその返答をする。
「ここにあるチ…お前たちがゼロポイントと呼んでいる代物を壊しに来た。そして、世界を守りに来た」
その声はどこか苛立ちを覚えてるかのようにも聞こえた、そしていつもより一段と低い声でまるでノスのものでは無いように聞こえる。そしてノックとミリーにとっては初めて聞くノスの本当の目的を聞くこととなった。
「残念ながら壊されては困る、それこそ世界が終わりかねん」
そう吾蔵研究員言う、その言葉にノックが聞き返す。ミリーは頭に?を浮かべていた。
「世界が終わる…?一体どういうことなんだ?」
『何も知らないのに手伝っていたのか?全く…』
Ccが頭を抱える、吾蔵研究員が前に出ようとするCcを制する。
「ここの施設には確かにゼロポイントがある、だがその情報をどこから仕入れたのか知りたいところではあるが教えては…くれないようだな。いいだろう、分かってない者もいるようだしこの際説明しようではないか。」
『いいのか…?』
「ここの施設にあるゼロポイントはとんでもないほどのエネルギーを内包している。その力はビックバンに匹敵するほどのエネルギーだともな…、そしてそんな代物を無理にでも壊そうものならこの世界は消滅しかねないのだ、いいな?。またこれだけの莫大なエネルギーを人類のために使おうと試行錯誤しているのだ、それを邪魔しようというのであればここで始末させてもらおう」
そう言い吾蔵研究員は銃器を取り出すのだがノスがさらに一歩前へと進み話し出す。
「やはりなにも分かってはいないようだな、それはこの世界にはもう必要なものでは無いんだ。それがあるせいで…」
そう言うとカバンの中から紅い珠を取り出す。それは過去に戦った双紅の核だった、するとノスの腕が光り核へと流れ込むそして…ノスは不敵に笑い握りつぶしたのだ。
あたりに女性の悲鳴のようなものが響き渡る。
「なっ、なんだ!?」
「何アル!?」
『何事だ!』
ノスが空を見上げる、それに釣られて他の面々も空を見上げる。グラスシーリングの天井の先から見えるのは…紅い色に染まった巨大な彗星だったのだ、先ほどまでそんなものは見えていなかった。となると急にそこに召喚されたとしか考えられない、そしてその彗星は徐々にこちらへと近づいてきている様子だった。
『吾蔵研究員!』
「分かっている!そちらを頼むぞ!」
急にCcと吾蔵研究員が慌ただしく動き出す、何かしらの装置をいじっているようだ。それに対して上を見上げるノスとパニックに陥っているノックとミリー、彗星が衝突するまであと少しというところでバリアの様なものが突然現れた。
『防護フィールドを3重にかけたぞ!』
「あとはこちらで調整する!奴を仕留めろ!」
そうCcと吾蔵研究員が会話する。Ccはすぐさま白衣を脱ぎ棄てノスへ飛び掛かる、のだがすべての攻撃が避けられる、以前戦った時とはまるで別人のようだ、その様子を見てノックとミリーは呆気に取られている。すぐさま距離を取り大量の銃弾を浴びさせるのだがすべて空間が歪み裂けその中へと飲み込まれていった。ブレスレットが無いのにもかかわらずである。
中遠距離の攻撃は通用しないと分かった途端すぐさままた近距離攻撃を仕掛けるのだが一向に攻撃が当たる気配がしない、それどころかノスは先ほどからチラチラと上を見ている余裕すらあるのである。そして戦っていると頭上からとんでもない衝撃音が響いてきた、とうとう彗星が頭上の防護フィールドの一枚目にぶつかったのである。
パラパラと様々なものが降り注ぐ中すぐさま仕留めようとCcが次々と攻撃を行うのだがやはり一発もくらわすことが出来ないでいた。一旦体制を整え直そうと距離を取る。
するとバキンと音がした、防護フィールドが一枚割られてしまったのである。しかも徐々にその防護フィールドの形は歪みはじめ真ん中が押されるような形となっている。
『吾蔵研究員何をしている!』
「ダメだ!このままでは威力を殺しきれない、研究所が吹っ飛んでしまう!いや!それどころか日本ごと吹っ飛ぶぞ!」
「なっ!?おいノス止めてくれ!このままじゃ大量の人間が死んじまう!」
ノックがノスに止めるように頼むも返答は帰ってこない。それどころか上の空状態であり話を聞いている様子がない!
「命が勿体ないアル、早く止めるアル!」
ノックの反対側からミリーが止めるよう促すもやはり聞いていない様子だった。
上空からさらにガラスが割れたような音がする、それと同時に天井が落ちてきた。とうとう2枚目の防護フィールドが天井が壊れると同時に割られてしまったのだ、絶体絶命と言わんばかりの状態である。
「Cc手伝え!力の流れをこの研究所だけにとどめるぞ!」
『くっ!』
すぐさまCcは吾蔵研究員の隣にある計器盤に取り掛かり防護フィールドに変化を加えていく。そして変化が加わった次の瞬間轟音、彗星がとうとう最後の防護フィールドを破ったのだ。そして何も聞こえなく見えなくなってしまった。

煙が晴れていく、彗星が直撃はしたものの防護フィールドによりなんとか被害は最小限に抑え込むことが出来た。しかし、研究所内のほとんどがむき出しになっておりゼロポイントを保管していた部屋は何とか無事ではあるものの露出してしまっていた。Ccと吾蔵研究員はゼロポイントの力を使い何とか無傷でいることが出来ていた。一方のノスたちもミリーの展開した炎の壁で軽傷で済んでいた、が周辺を見渡すと跡形もなくぼろぼろになっていた。この程度の被害で済んだのは奇跡的と言ってもいいほどである。
すると突然ノスがゼロポイントにめがけて走り出したのだ。
『やばいっ!』
「くっ!」
「どこ行くアル!」
「おい、ノス!」
4名の静止を聞く暇もなくノスはゼロポイントの中へと飛び込んでいったのだ。Ccや吾蔵研究員はゼロポイントが破壊される、そう考えたがその後に起きた事象は全く違ったものとなった。ノスがゼロポイントへ消えて言った瞬間轟音が鳴り響く、ゼロポイントからは大量のエネルギーの流れが生まれ上空へと伸びていく、糸と糸が編み込まれるようにそしてそれは冠を付けた巨大な人間の形を構成していく。数秒もすればそこには光り輝く巨人の姿がそこにあった、またその巨人の出で立ちはどこかノスを彷彿とさせる。
するとその巨人が口を開く。
「私はノス、真の名は…ノストラダムス。この世界線の守り人であり終焉を告げるものである。この世は汚れすぎた今から世壊せかいを行おう」
その声は重く響く声であり、畏怖すら感じさせる声だった。

世壊まで 残す所あと1時間





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