超絶コミュ力の妹と陰キャの俺、そんな妹に突然告白され、俺の高校生活がとんでもない事になった。
生徒会長見参
昨日の事を思い出すとまだ泣けてしまう俺は「きょ、今日ちょっと用事があるから先行くわ」と、キッチンにいる妹にそう告げた。
「用事って? お兄ちゃん、お兄ちゃんってばああぁ」
同じ学校同じクラスだと俺に用事が無いのは一目瞭然だが、俺は妹からの追及を振り切るように急ぎ家を後にする。
朝食の準備の途中で悪いなとは思ったが、今妹の顔を見るとまた涙腺が崩壊してしまうのは必死だ。
とりあえず落ち着こう、学校に行けばいつもの日常に戻せるだろう。
俺はそう願い一人学校に向かった。
そして学校着くと急ぎ教室に向かう。
目的は麻紗美と話す為に。
歩くのに時間がかかるからか? 麻紗美は毎日早く登校しているのだ。
麻紗美と話せば、あの癒しのテンポで会話出来れば俺の気持ちも一度リセット出来るのではないだろうか?
そう考えつつ教室に向かって廊下を歩いていると、正面から3人組の女子が歩いて来る。
制服の胸のリボン色が黄色なので恐らく上級生なのだろう、そして近付くに連れ、なにかオーラのような物をその3人に感じた。
その中でも一際輝いていた人物に俺は思わず注視する。
身長は高いが細身の身体、大きくも小さくもない形の良い胸、細く括れたウエスト、日本人離れしたヒップ。
いや、恐らくハーフなのだろう、まるで海外のあの有名な人形のような、そんな印象を受ける。
どこか気品漂うお姫様のようだなと……そんな事を思いつつ俺は思わず立ち止まってその彼女をジッと見ていると、3人と喋りながら前から歩いている彼女は俺に気付き視線をこっちに向けた。そして俺を見るなり驚きの表情を浮かべる。
その表情、その目、どこかで見たような気がする……しかも最近…………。
「ああああああああああああああああああああ!! おおお、お前! き、昨日の観覧車の!」
俺がそう叫ぶとその女子は俺に素早く駆け寄ると、そのまま俺の腕を力一杯掴んだ。
「ああ、お、お久しぶりね、ちょ、ちょっとこっちで話そうか」
「会長?」
残りの二人がこっちを見て不思議そうな顔でそう言った。 会長?
「こっちで、こっちに、いいから来なさい! あ、さ、先に入ってて頂戴」
二人にそう言い残し、俺の腕を強く引っ張り階段をかけ上がる。
そして、そのまま閉鎖されている屋上の手前の、よく内緒で付き合ってるカップルの定番のいちゃつき場所である階段の踊り場に連行された。
「な、ななな、なんでわかったの?!」
「あ、俺視力は良いんです」
「へえ、頭は悪そうなのにね!」
「うるせえよ」
わかってるけど、人に言われると腹が立つ。
「と、とにかく、昨日の事は誰にも言うんじゃ無いわよ!」
「な、何故?」
「……せ、生徒会長が実は金髪でイケメン社会人と付き合ってるなんて知られたら、今度の選挙で再選出来ないでしょ!?」
「生徒会長……あんたが?」
入学式で美人生徒会長がっていう俺の妄想は正しかった。
「そうよ! ってか上級生をあんた呼ばわりとか」
「まあ、でも、ああやって人に見せ付けながら……行為をするような変態に生徒会長は似合わな、うぎゃあああ!」
俺がそう言うや否や、生徒会長は俺の脛を強く蹴りあげた。
「うっさい! あんただって同じことしていた変態じゃない!」
「し、してねえええええ! 妹とそんなことするかああああ! ………………あ」
俺がそう言うと生徒会長は凄惨な顔で笑った。
「へえ、妹……」
「あ、えっと、いや……」
「へえええええええ、あんた妹と二人きりで観覧車なんて乗って、キス……しようとしてたんだああ、へえええええ」
「いや、あ、あれは、なんかの間違いって言うか、えっと……そう揺れたんだ、か、風で揺れて、それで」
「と、に、か、く……私のこと、バラしたら、たたじゃおかないから」
会長は俺のネクタイを掴むと、自分の顔に引き寄せる。
長いまつげ、大きな瞳、そしてニヤリと笑った口元から綺麗な白い歯が光る。
彼女の口から、そして身体から発せられたとてつもなく良い匂いが俺の鼻腔をくすぐった。
「た、ただじゃって……?」
俺がネクタイを絞められ、苦しみながらそう聞くと彼女はさらに口元を歪ませ悪魔のように笑った。
そして俺のネクタイを離し、そのまま両手で俺を壁まで弾き飛ばす。
俺は背中を壁に強く打ちつけ、そのままズルズルと尻餅をついた。
見た目と違い力強い会長の腕力に怯えつつ俺は会長を見上げる。
会長は俺を見下ろし睨み付けながら言った。
「もし、言ったら……生徒会長の力を全て使って、あんたが妹と付き合ってる嘘を学校中に広めてあげるわ」
会長はそう言うと、踵を返し階段を降りて行く。
俺は背中の痛みに耐えつつ、ゆっくりと立ち上がる。
そしていなくなった会長に向かって言った。
「いや、まあ……嘘じゃ無いんだけどなあ……」
とりあえず……おかげで昨日の事が、栞に対しての感情が全部吹き飛んだので、まあよしとしておこう……。
俺は痛む背中をさすりながらいつもの教室といつもの日常に戻って行った。
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