超絶コミュ力の妹と陰キャの俺、そんな妹に突然告白され、俺の高校生活がとんでもない事になった。 

新名天生

美智瑠との出会い


「あいつ誰!?」

「え?」
 俺と妹は家に帰ると毎日リビングで一緒にコーヒーを飲むと決めた。
 そこで他愛も無い話を毎日しようと。
 そうやって毎日過ごせば妹も勘違いだったと少しずつ気付くかも知れない。

「あの銀髪の女子は誰?」
 何か言いたそうにしていたが、妹は黙ってコーヒーを用意し、俺の前に座って二口
「え? えっと……小学校の時の友達?」

「……あいつか」

「え?」

「ううん、こっちの事、あの銀髪と、どういう仲なの!」

「銀髪って見てたのかよ!」
 怖! やっぱりこの妹怖!
 怯える俺に追い討ちをかける様に睨み付ける妹……。

「えっと、相棒?」

「何よ相棒って!」

「相棒って言ってたら相棒なのさ」
 小学生の時、あいつは俺の……親友だった。


◈◈◈


 俺がまだ友達とサッカーをやっていた時の事だった。
 サッカー出来る程友達いたんだよ、なんだよそのこの世の物とは思えない顔は?

 将来はサッカー選手になりたいなんて思ってた若い頃の俺……。

 近所の公園にある金網に取り囲まれた場所、俺達は通称監獄と読んでいた球技場でサッカー、というよりはフットサルをよくしていた。

 ここは早い者勝ちで、中学生や高校生よりも授業時間が短い小学生の俺達が独占していた。
 子供の時というのは少し残酷な所がある。
 独占状態だった公園の球技場は俺達の物だ、なんて勘違いを皆していた。

 仲良く使えば良い物を……俺はなんとなくそんな友人達の考え方に、子供ながら違和感を覚えていた。

 上級生や少し遠い学校の連中が来ても、中々退かない。
 人数に物を言わせ、威嚇なんかをしていた者もいた。

 そんなある時、金網の外にサッカボールを持った少年がこっちを羨ましそうにじっと見つめていた。
 銀色の髪、そして碧い瞳の綺麗な少年だった。
 シャツから出ていた腕、半ズボンから伸びる足が真っ白だった事を良く覚えている。
 外国の子供……俺はそう思った。
 
「えっと、ドコカラキタンデスカ?」
 俺は興味本位でそう声をかける。

「僕は日本人だ!」
 少し怒り気味にそう言い返されたが、日本人と聞いて俺は安心して彼に話しかけた。

「この辺に住んでるの?」

「……ううん違う」

「ふーーん、サッカーやりたいの?」
 大事そうにサッカーボールを抱えていたので俺はそう訪ねると、彼は少し恥ずかしそうに「うん」と一言言ってコクりと頷いた。

「そか、良いよ一緒にやろう、入って来いよ」
 俺は入口を指差し彼を招き入れる。

「なあなあ、あの子が入りたいって」
 俺がそう言うと、皆一斉に彼を見つめ、そして全員が顔をしかめた。

「何あいつ、白髪じゃん? おじいちゃんか?!」
「外人だ外人の子供だ」
「目が変な色、ビームとか出そう」
「言葉通じんの? 何語喋るんだ?」

 皆口々に彼の外見を揶揄した。

「平気だよ、日本人だって言ってたし」
 
「嫌だよ気持ち悪い」
 リーダー格の友人が俺の後ろに隠れている彼を見て、本当に嫌そうにそう言ったのが決め手だった。

「ああ、そうか、わかったよ」
 俺は振り向き彼を見る。
 さぞかし怒っているに違いない、俺はそう思った。
 でも違っていた。彼の目は寂しそうに、俺達ではなくどこか遠くを見ていた。
 諦めの目だった。全てを諦めた様な目。

「行こう」

「え?」

「こんなに檻じゃなくもっと広い所へ行こう」
 俺は彼の手を掴むと、監獄の外に出る。

「ま、待てよ」
 数人が俺を呼び止めようとするも俺は彼に変わって言った。

「お前らとなんか二度とやらねえ! バーーカ、本物に檻に入ってろ!」
 そう言って彼の手を強く握ると、二人で走った。
 情けないけど多勢に無勢、全員と喧嘩しても勝てる筈が無い。
 捨て台詞を吐き捨て、俺は彼と走った。

「ちょっと、えええ?」
 彼は驚きつつもそれ以上何も言わずに俺と一緒に走り出した。



「はあ、はあ、はあ、はあ、な、なんでこんな事」

「はあ、はあ、はあ、当たり前だろ」

「で、でも、僕の為に君が仲間はずれになんて」

「仲間はずれじゃねえよ、俺の方が離れたんだ、愛想が尽きたって奴だよ」

「で、でも」
 俺よりも早く息を整えた彼は、心配そうな顔でこっちを見つめる。

「友達をあんな風に言われたら、誰だってこうする」

「と、友達!?」

「なんでびっくりするんだ? 嫌なのか?」

「い、いい、いやそんな事無い」
 ブンブンと千切れそうなくらい早く何度も首を振る。
 日の明かりに照らされた彼の銀色の髪がキラキラと宝石の様に輝きだした。

「そか、じゃあもう友達だな! 俺は祐だ、宜しく」
 そう言って彼に向かって手を出す。

「ぼ、僕は……み、みつるだ」

「そっか、みつるこれから宜しくな!」
 俺とみつるはこうやって知り合った。

 そしてそれから毎日の様に色々な場所でサッカーをやった。
 みつるはサッカーが凄く上手く、俺は自信を無くすも、彼と一緒にやりたい為に、一生懸命練習した。

 毎日毎日一緒に走りボールを蹴る。
 そして毎日毎日色んな話をした。

 そして俺は聞いた。みつるはその容姿のせいで、ずっと友達が出来なかったって事を。

「じゃあ俺がみつるの友達第一号だな?」

「全然いなかったわけじゃねえよ」

「そか、じゃあ親友第一号だな」

「親友って、なんだかこそばゆいな」

「うーーん、じゃあ相棒は?」

「相棒?」

「そうそう、テレビでやってた奴」

「相棒か……いいなそれ!」

「だろ?」

「「あははははは」」
 相棒で俺の親友、それからは毎日の様に一緒に遊んだ。


 しかしそんなみつるは突然俺の前から姿を消す。

 親友に、相棒何があったのかと俺は毎日いつもの待ち合わせ場所に赴くも一向に姿を見せない。
 俺はいてもたってもいられずみつるを探すが、誰も彼の事を知る者はいなかった。
 悲しい、俺の相棒が、親友がいなくなってしまって、そして悔しい何も言ってくれなくて。

 ひょっとした外国に帰ってしまったのか? それとも実は違う世界から来て連れ戻されたのか? その後もずっと気がかりだった。

 そして今日全ての謎が解けた、

◈◈◈

「そりゃそうだよな? 俺はあいつが男だって思ってて、そう周囲に聞き回ってたんだから、見つかるわけがないよな」
 妹に笑ってそう言う。
 しかし栞は笑う事なく俺を真剣に見つめて言った。

「それってお兄ちゃんの初恋?」

「だーーかーーら俺はあいつが男だって思ってたって言ってるだろ? 俺にそんな趣味はない、それに俺の初恋はあのお姉さ…………いや、なんでも無い」
 
「お兄ちゃん今聞き捨てならぬ事を言ったよね? 誰? だーーーれーーーなーーーのーーー!」

「だ、誰でも無い、違う、し、栞!」

 栞が俺に飛びかかってくる。そして俺の首に腕を回しグイグイと絞め始めた。

「お兄ちゃんのバカ!」

「ま、待て、栞、気持ちいい、じゃなくて苦しい!」
 柔らかい感触が後頭部に当たる。そして甘い香りに包まれつつ、俺の意識はどんどん遠くなって行った。



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