死の床に、エッセイの価値を、教わった。

越庭 風姿【 人は悩む。人は得る。創作で。】

年賀状(2020年のつぶやき)

「来年は丑年だから、牛の写真を撮ろう」
 昔は10月になると、写真入り年賀状を頼んだものだ。
 早期割引で30%引きになるからだ。
 そして、去年来た年賀状の数を数えて、必要枚数を予測する。
 もっと昔は、はがきサイズの版画を作ったこともある。
 彫刻刀で「賀正」と干支などと彫るのである。
 市販のスタンプやシールを使ったこともある。
 はがきサイズの中に、エネルギーを込めて作ることが恒例行事であった。
 しかし、最近は年賀状が極端に減った。
 職場でも「個人情報を守る」という名目で、年中行事も一緒に抹殺された。
 多くの人がパソコンのデータベースを印刷して、宛名を一気に作る。
 そしてボールペンで一言書きもしないと、
「もう年賀状はやめましょう。お互いのために」
 と暗に言っている。
 ここまでの話は親しい間柄や、普段顔を合わせる機会がある人とのやり取りが多い。
 もう一つ別の問題がある。
 フォーマルな付き合いで送る年賀状である。
 例えば取引先企業や、顧客への挨拶である。
 これは、やめると影響が大きいので、なかなかやめられない。
 だが受け取った側は、
「今年も送ってくれた。ありがたい」
 とは、決して思わない。
 だからと言って、メールやSNSでは、年賀状よりも読まれないだろう。
 減っていくことは否定できない事実である。

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