死の床に、エッセイの価値を、教わった。

越庭 風姿【 人は悩む。人は得る。創作で。】

秋の気配を感じる虫の声

 8月20日頃からコオロギが鳴き始める。
 昼間は蝉が鳴き、夜は秋の虫が鳴くという塩梅だ。
 家の中にカマドウマも入ってきた。足と触角が異様に長い、不気味な虫だ。
 小学生のときには、平気で虫を触っていたが、中学生くらいから触るのが苦手になってきた。
 虫を見て嫌だとは思わないのだが、何となく触りたくない。
 小学生のとき、田園地帯に住んでいたので、バッタやイナゴ、カマキリなどが子どものおもちゃになっていた。
 捕まえるとよく、足がもげた。
 青っぽい体液が出て、宇宙人のようだと思った。
 大人でも真顔で、
「昆虫は他の生物と体の構造がまるで違う。外骨格だし複眼など動物にない器官がある。宇宙から隕石に乗ってやって来たからだ」
 という人がいる。
 論理的には正しい気がするが、地球外生命体が昆虫だったらちょっとガッカリだ。
 火星人がタコであったほうが、まだ親しみが持てる。
 そんな、違和感満載の昆虫たちの中には、他の動物よりも小さいものが多いが、声が大きく、ずっと泣き続けるものがいる。
 幼児も気分で1,2時間泣き続けることがあるが、一晩中鳴くコオロギには敵わないだろう。
 よく聞くと、コオロギの中にスズムシの声が混じっている。
 とても良い声で鳴くので虫かごに入れて数匹飼った。
 虫の声の風情が、秋がきたことを印象付けてくれる。

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