死の床に、エッセイの価値を、教わった。

越庭 風姿【 人は悩む。人は得る。創作で。】

魚は殿様に焼かせよ

「日経平均が30,248.81か」

 リーマンショックのときに投資を始めた。始めたときは8千円台だった株価がこんなに上がるとは思わなかった。

 証券会社に行くのは抵抗があり、銀行の投資信託を買ってしまった。同じ失敗をした人は多いはずだ。

 案の定、損が出た。

 銀行で買う投資信託は、手数料を何重にもとられる。媒介する銀行と証券会社に2重にとられるのだ。しかもそれが、売るとき、買うとき、その他とられたりすれば、利益を全部相殺どころかマイナスにされる。

 しかし、当時現物資産に目を付けていて、金を買った。ユーロの現ナマも買った。こちらは手数料が安い。

 金とユーロの利益がかなり出て、投資信託の失敗を埋めて余りあるほどだった。だから銀行を許すことができた。

 最近は投資するのが当たり前になりつつある。自国の通貨だけで資産形成しようとするのは、世界中から見れば大変珍しく、とてもリスクが高い。せめて米ドル建てて預金か保険かなにか将来へ向けた資産を積み立てておくべきだ。

 投資に関心が高まったのは、銀行に普通預金をしていても、利子がほとんどつかなくなったことと、イデコ(確定拠出年金)などが普及したせいである。

 イデコでは、自分で投資する対象を決めて運用する。株でも債権でも定期預金でも、自由に選べる。こう書くと、良いことだと思うかもしれないが、投資をすると損をする人もいる。

 つまり、年金を自ら減らす結果になりかねない。

 厚生年金や適格退職年金に新規加入できた時代の人は、プロが絶対損が出ないように運用してくれたので安心だった。

 素人が投資すると、短期的利益を狙いがちで、大損することもある。東南アジアの会社の株を買って、0円になった知人もいる。

 プロは10年後に数パーセント上がる、という具合に考えて分散投資するから失敗しないのだ。

 今、投資家の間では円離れが進んでいる。異次元の質的量的緩和(お金を増し刷りして借金を返すこと)を繰り返してきた日本は、日銀当座預金が目を覆うほどの額に膨れ上がっている。

 一部ではハイパーインフレを懸念する声が上がっている。少なくとも円が弱くなってきていること、物価が今後も上がり続けることは確かだろう。

 物価が上がれば、預金額が変わらなくても相対的に預金が減る。同じ額の買い物ができなくなるのだから。

 個人的に究極の投資だと思っているものがある。それは土地と家だ。背伸びをして良い物件を手に入れた。金利が安い今、最長の35年ローンを組み、様々な特典を受けながら暮らしている。

 自分が死ぬまで払い続けるわけではない。まとまったお金が手元にできたときに繰り上げ返済してしまえばよい。

 良い物件なら価値があまり下がったりしないから、いざとなったら家と土地を売るとか、賃貸することも可能だ。

 あと仮想通貨も買った。これも人の性格が出るものである。

 大損をだす人は、我慢ができない人だ。売り買いしていじくりまわすので、取引所にたくさんお金をとられてしまう。

 上手くいく人は、何があっても「動かざること山の如し」と決め込んでいる。暴落したとき損切りをした人は、仮想通貨をこき下ろそうとする。

 だが自分は何もしなかった。コツは「何があっても5年間は手を付けない」と決めることである。たとえ資産が5分の1になっても何もしない。案の定5倍以上に跳ねあがった。

 盗難事件があっても「慌てず、騒がず、たじろがず」である。噂話や専門家の意見にも馬耳東風を決め込んだ。

 また下がるだろうが、それでも何もしない。

 「魚は殿様に焼かせよ」の要領である。

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