気付いたら、豪傑系悪役令嬢になっていた SE
復讐者編 プロローグ 始まりの夜
俺の名前はルクス・アルマール。
国衛院の本部へ帰る馬車の中。
俺は一人。
窓の外を眺めながら、椅子に座っていた。
見えるのは夜の闇だ。
仕事が終わったので、これからイノスを迎えに行ってから自宅へ帰る予定だ。
今日の俺は、国衛院の第三部隊隊長として王都にある第三部隊の支部の視察に回っていた。
第三部隊は王都の治安維持を目的とした部隊であり、その規模は他の部隊と比べても大きい。
ちなみに、第一部隊は主に国家反逆罪や反乱準備罪などの国家を対象とした事件を担当し、第二部隊は国内国外問わずの諜報活動を担当している。
王都は広く、その全域をカバーするため、第三部隊は王都の各所に支部を設けている。
俺が支部を回ったのは、それぞれの支部が正しく機能しているか確認するための業務だ。
今までそういう仕事は、イノスと一緒にしていたが……。
俺ももう子供じゃない。
苦手な仕事だから、と彼女に頼り続けるのは嫌だった。
今の俺には責任がある。
王都を守る責任と家族を守る責任だ。
今までみたいにただ家業を継いだから、という惰性じみた考えでい続けるべきではないと思った。
だから最近は、出来うる限りイノスに頼らないよう心がけている。
その方があいつの負担も減るだろうから。
イノスは本部にいる。
今頃、書類仕事を片付けて俺の帰りを待っているだろう。
そんな彼女と一緒に、娘の待つ家へ帰るんだ。
愛する妻と愛する娘。
早く彼女達と団欒の時間を過ごしたい。
それにしても、一人というのは寂しいもんだな。
馬車の中で揺られる時間が、妙に長く感じる。
きっと、イノスと一緒にいる事に慣れすぎてしまったからだろう。
それとも、これから家族に会えるという待ち遠しさのせいか。
俺は苦笑した。
その時だ。
馬車全体を衝撃が襲う。
体が投げ出され、馬車の中を転がる。
体中を強くぶつけた。
衝撃はしばし続き、やがて止まる。
「何……だ?」
体中が痛い。
体を起こす。
頭がふらふらして、めまいを覚えた。
頭を打ったのだろうか……。
不意に、視界がぬるりと生暖かい液体に遮られる。
額に手を当てると、手の平に赤い物がついた。
出血……。
切れたか。
辺りを見回す。
すると、馬車の中が逆さまになっていた。
「横転したのか……。御者は無事か?」
馬車の御者台を見るための小窓を見る。
けれど、そこには誰の姿もない。
そして、扉が外から強かに蹴り開けられた。
一人の男が馬車の中へ入ってくる。
フードを来た男だ。
男は右目に眼帯をして、三角に折った布で口元を隠していた。
まともに見えるのは、左目だけだ。
「お前は、何者だ?」
「ただの復讐者だ。お前へ……アールネスへ苦しみを与えに来た」
「何だと?」
訊ねる声に答えず、男は俺のそばまで寄る。
両手で襟首を掴み、顔を寄せる。
「ビッテンフェルトの恐怖をこの国にも振り撒いてやる」
男は言うと、俺の顔を強く殴った。
俺はその一撃で、意識を手放した。
国衛院の本部へ帰る馬車の中。
俺は一人。
窓の外を眺めながら、椅子に座っていた。
見えるのは夜の闇だ。
仕事が終わったので、これからイノスを迎えに行ってから自宅へ帰る予定だ。
今日の俺は、国衛院の第三部隊隊長として王都にある第三部隊の支部の視察に回っていた。
第三部隊は王都の治安維持を目的とした部隊であり、その規模は他の部隊と比べても大きい。
ちなみに、第一部隊は主に国家反逆罪や反乱準備罪などの国家を対象とした事件を担当し、第二部隊は国内国外問わずの諜報活動を担当している。
王都は広く、その全域をカバーするため、第三部隊は王都の各所に支部を設けている。
俺が支部を回ったのは、それぞれの支部が正しく機能しているか確認するための業務だ。
今までそういう仕事は、イノスと一緒にしていたが……。
俺ももう子供じゃない。
苦手な仕事だから、と彼女に頼り続けるのは嫌だった。
今の俺には責任がある。
王都を守る責任と家族を守る責任だ。
今までみたいにただ家業を継いだから、という惰性じみた考えでい続けるべきではないと思った。
だから最近は、出来うる限りイノスに頼らないよう心がけている。
その方があいつの負担も減るだろうから。
イノスは本部にいる。
今頃、書類仕事を片付けて俺の帰りを待っているだろう。
そんな彼女と一緒に、娘の待つ家へ帰るんだ。
愛する妻と愛する娘。
早く彼女達と団欒の時間を過ごしたい。
それにしても、一人というのは寂しいもんだな。
馬車の中で揺られる時間が、妙に長く感じる。
きっと、イノスと一緒にいる事に慣れすぎてしまったからだろう。
それとも、これから家族に会えるという待ち遠しさのせいか。
俺は苦笑した。
その時だ。
馬車全体を衝撃が襲う。
体が投げ出され、馬車の中を転がる。
体中を強くぶつけた。
衝撃はしばし続き、やがて止まる。
「何……だ?」
体中が痛い。
体を起こす。
頭がふらふらして、めまいを覚えた。
頭を打ったのだろうか……。
不意に、視界がぬるりと生暖かい液体に遮られる。
額に手を当てると、手の平に赤い物がついた。
出血……。
切れたか。
辺りを見回す。
すると、馬車の中が逆さまになっていた。
「横転したのか……。御者は無事か?」
馬車の御者台を見るための小窓を見る。
けれど、そこには誰の姿もない。
そして、扉が外から強かに蹴り開けられた。
一人の男が馬車の中へ入ってくる。
フードを来た男だ。
男は右目に眼帯をして、三角に折った布で口元を隠していた。
まともに見えるのは、左目だけだ。
「お前は、何者だ?」
「ただの復讐者だ。お前へ……アールネスへ苦しみを与えに来た」
「何だと?」
訊ねる声に答えず、男は俺のそばまで寄る。
両手で襟首を掴み、顔を寄せる。
「ビッテンフェルトの恐怖をこの国にも振り撒いてやる」
男は言うと、俺の顔を強く殴った。
俺はその一撃で、意識を手放した。
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