気付いたら、豪傑系悪役令嬢になっていた SE
閑話 二人の出会い
俺の名はグリフォン・アールネス。
レオン・アールネスとカナリオ・アールネスの息子。
キャナリィ・アールネスの双子の兄貴だ。
ある事故をきっかけに、両親はアールネスを離れざるをえなくなったらしく。
その旅先で、俺と妹は生を受けた。
それから十数年経ち、俺達は両親の故郷であるアールネスへ帰り着く事となった。
アールネスに帰ってきた両親は嬉しそうに日々を過ごしているが、俺にとってこのアールネスという国は窮屈に思えてならなかった。
正直、俺の性分には合わなかった。
通う事になった学園にも馴染めない。
学園の生徒は品が良すぎて、鼻につく奴ばかりだ。
何人か品の良くない奴らもいるが、そいつらはそいつらで気に入らないから叩きのめしてしまった。
こんな事なら家族揃って旅をしていた時の方が、俺は居心地がよかった。
少なくともあの頃には、自由があった。
そんな生活を今は、懐かしく思う。
この国は俺にとって、狭すぎた。
一人でこの国を出ようか。
ぼんやりとそう思い始めた頃だ。
俺は奴に出会った。
「じゃあ、出かけてきますね。兄さん」
「またあの公爵の所に行くのか?」
最近の妹は、ヴェルデイドという公爵の家に入り浸っている。
どうやら魔法について詳しい人間らしく、いろいろ教わりたいのだとか。
そのわりに毎日ずいぶんとめかし込んでいるが……。
親父よりも年上のおっさんのどこがいいんだろうか。
俺にはわからんね。
今日は休日で、家から直接行くそうだ。
ちなみに、この家は親父の別荘だ。
本当の家は領地にあって、両親が滞在する時だけ利用している場所だ。
そこを俺達が学園へ通うための家として利用しているのである。
「俺も出かけるか……」
家に一人でいても仕方がない。
元来俺は、室内にいるよりも外にいる方が好きだ。
野宿が多かったせいか、屋根があると落ち着かない。
特にあてはないが、俺は町へ出かける事にした。
適当に露店の店で手軽な食い物を買って、広場のベンチに座る。
ぼんやりと辺りを眺めた。
行き交う住人達は、忙しそうにしていたり、楽しそうにしていたり、様々だ。
けれどみんな安心し切った様子で、そこからは厳しさの欠片も感じられない。
不意に訪れる危機を警戒するような素振りは一切ない。
きっとそれだけ、ここが安全な国だからなんだろう。
そしてその中に、今の俺は組み込まれている。
広場には、野菜を買いに来た子供連れの主婦がいて、荷車を運ぶ男がいて、日向ぼっこをする老人がいる。
きっとここにいる連中は、毎日同じ事を繰り返しているんだろう。
それをつまらないと思わないんだろうか?
俺も、これから先、同じ事を繰り返しながら生きていくんだろうか?
そう思うと億劫になる。
「はぁ……」
やっぱり、俺にこの国は合わない。
本当に、出て行ってしまおうか……。
そんな事を思いつつ、ベンチから立ち上がる。
道を歩き出す。
なんとはなしに小道へ入った。
そんな時だ。
曲がり角から、小柄な人間が飛び出した。
避け損なって、その人間が俺の胸にぶつかってくる。
ぶつかってきた人間が倒れこんだ。
「いてて」
その人間は、金髪の少年だ。
「おい、大丈夫かよ」
声をかけると、少年が俺を見上げた。
綺麗な碧眼だ。
驚くほどに整った顔の少年だった。
手足が細く、白く……。
女にも見えるような中性的な顔立ちである。
「君は?」
少年に問われる。
「ただの通りすがりだよ」
そう答えた。
「あ、それどころじゃない」
「あ?」
少年が立ち上がって、飛び出してきた曲がり角へ目を向けた。
そちらからは、スーツ姿の男達が三人走って来ていた。
「早く逃げないと……。ぶつかってごめんね」
少年は言って、走り出そうとする。
が……。
「つ……」
走り出せなかった。
顔を歪ませ、足を押さえる。
どうやら、足を挫いたようだ。
「追われてるのか?」
「そ、それは……」
「何とかしてやるよ」
「え?」
こいつが何をして、何で追われているのかはわからない。
ただ……。
久し振りの荒事。
そいつに乗っかりたいと思った。
少しでもこの窮屈な日常を紛らわせられるように……。
追いついた男達の前に立ち塞がる。
「何だ貴様は?」
男の一人が高圧的に訊ねてくる。
「そんな事はどうでもいいんだよ。最近、どうも気分が晴れなくてなぁ……。悪いが、憂さ晴らしになってもらうぜ」
そう言って、構えを取った。
数分後。
男達を叩きのめした俺は、地面に座り込んだ少年に目をやった。
少年は、呆然とした表情で俺を見上げていた。
「大丈夫か?」
声をかけると、ハッとなって言葉を返す。
「だ、大丈夫。君、強いんだな。びっくりしたよ」
「まぁ、この程度の相手なら」
これでも、両親には一度も勝った事がないんだけどな。
少年が立とうとする。
けれど、痛みで立てないようだった。
「ここに長くいるのはよくないな」
俺は、少年を抱き上げた。
……びっくりするくらい軽いな。
「な、何するんだ!」
顔を赤くして少年が叫ぶ。
そりゃあ、男に抱き上げられたら恥ずかしいわな。
でも、少し我慢しろ。
「とりあえず、ここから離れるんだよ。こいつらが目を覚ましても困るだろ?」
「それは……そうだけど」
俺は少年を抱き上げたままその場を離れた。
それからすぐに……。
「見つけた! あそこにいるぞ!」
スーツ姿の男達に見つかる。
あれはさっきの連中じゃない。
こいつ、思ったよりも大人数に追われているようだ。
路地に逃げ込む。
が……。
「いたぞ!」
前方からも男達が現れた。
「どんだけいるんだよ!」
思った以上に多い。
方向転換し、小道にそれる。
「待て!」
男達が追いかけている。
「ちっ……」
こういうトラブルは楽しくはあるんだが、度を越しても煩わしいな。
俺は少年を抱え上げたまま、走って逃げる。
そして……。
前方にさらなる人影があった。
あれは……。
俺は、内心ホッとする。
「クロエおばさん」
前方にいたのはクロエおばさんだった。
クロエおばさんは、母さんと互角に戦えるやたらと腕っ節の強いおばさんだ。
旅の間、しばらく行動を共にしていた人だ。
「グリフォンくんか。……私は気にしないけど、あんまり妙齢の女性におばさんって言わない方がいいよ」
「ごめん。でも、緊急事態なんだ」
言うと、おばさんは俺が抱き上げている少年を見た。
「クロエ・ビッテンフェルト……」
少年が呟いた。
その声には、驚きが含まれていた。
知っているのか?
「ふぅん」
おばさんは目を細める。
そして、俺達の後ろを見た。
スーツの男達が、迫って来ていた。
「わかった。ここは任せて先に行け」
「助かった」
おばさんが前に出て、男達の前に立ち塞がった。
クロエおばさんに助けてもらってから、男達が追ってこなくなった。
どうやら、逃げ切れたようだ。
人目のない所を見つけて、少年を座らせる。
「足」
「え?」
「捻ったんだろ? 見せてみな」
「う、うん」
少年が靴と靴下を脱いで、足を見せる。
足首が少し腫れている。
「あれくらいで捻るなんて、軟弱だな」
まぁ、これだけ細いと当然か。
「な、失礼だな君は。これでも僕は、運動には自信があるんだぞ。君にぶつかりさえしなければ……」
「わかったわかった」
俺は適当に返しながら、患部に手を当てる。
白色を流した。
みるみる内に、腫れが引く。
「ほら、治ったぞ」
「……ありがとう」
「それにしてもお前、何で追われてたんだ?」
「それは……。ちょっとね」
言いたくない理由でもあるのか?
なんか、胡散臭いな……。
「じゃあ、俺は行くぜ」
「あ、待ってくれ」
「何だ?」
「しばらく、一緒に行動しないか?」
「用心棒代わりにしようってか?」
「……そう思ってくれても構わない。なんなら、報酬を支払ってもいい。だから、一緒にいてほしい」
俺は少し考える。
胡散臭い奴だ。
でも、こいつからはトラブルの臭いがする。
一緒に行動すれば、いい退屈しのぎにはなりそうだ。
「いいぜ」
「ありがとう!」
少年は屈託なく笑った。
男とは思えない可愛らしい笑顔だ。
「俺の名はグリフォン。お前、名前は?」
「僕は……リーオーだよ」
リーオー、か。
「よろしくな」
「よろしく」
俺達は握手を交わした。
「それで、一緒に行動するって何をしたいんだ」
「え。えーと、町で遊ばないかなって……」
「え? 何か目的があるとかじゃねぇのか? 本当、何で追われてたんだよ、お前」
「まぁ、いろいろあるんだよ」
「ふぅん。まぁいいや。退屈していた所だしな」
それから、俺達は町に出て一緒に遊んだ。
話をしていてわかった事だが、どうやらリーオーはシュエット魔法学園の三年生。
先輩だったらしい。
小さいから、どうみても年下に見えるんだけどな……。
だが、そんな事など関係なく、俺はリーオーと仲良くなった。
こうして俺達は、友達になった。
そして、こいつの苗字がアールネスであると知ったのはもう少し後の事である。
どうやらリーオーは、俺の親戚だったらしい。
☆クロエ視点
私の視線の先では、二人が楽しそうに談笑していた。
グリフォンが連れていた子は、陛下の第二子。
リオン王子の兄弟に当たる方だ。
多分、今はリーオーと名乗っているはずだ。
量産型かな?
短い間だが、私とアードラーが面倒を見ていた子である。
二人を逃した私は、追って来ていた男達に事情を聞いた。
どうやらあの子は、お忍びで町へ遊びに来ていたらしい。
男達はあの子の護衛だったのだが、窮屈だという理由で逃げてしまったのだとか。
彼らには、あとの面倒は私が見ると言って帰らせた。
そして今、私は影ながら見守っているわけである。
「友達ができないってカナリオが心配していたみたいだけど……。よかったじゃないか」
グリフォンを見ながら呟く。
「でも……その友情はいつまで続くだろうね。もしかしたら、別のものに変わったりして」
私はもう一人を見る。
「ねぇ、アクイラ王女様」
彼女の本当の名はアクイラ。
この国のお姫様であり、プレイアブルキャラクターの一人である。
リオン王子と同じモーションが多いが、王子のようながっつりインファイターではなく豊富な魔法を織り交ぜた中距離戦を得意とするキャラクターである。
リオン王子よりも技の使い勝手がよく扱いやすいが、その分体力と火力が低いテクニカルなキャラクターだ。
ちなみに、チヅルちゃんから聞いた話によるとグリフォンくんは主人公で、彼女はメインヒロインなのだそうだ。
これから二人がどうなっているのか、ちょっと楽しみである。
レオン・アールネスとカナリオ・アールネスの息子。
キャナリィ・アールネスの双子の兄貴だ。
ある事故をきっかけに、両親はアールネスを離れざるをえなくなったらしく。
その旅先で、俺と妹は生を受けた。
それから十数年経ち、俺達は両親の故郷であるアールネスへ帰り着く事となった。
アールネスに帰ってきた両親は嬉しそうに日々を過ごしているが、俺にとってこのアールネスという国は窮屈に思えてならなかった。
正直、俺の性分には合わなかった。
通う事になった学園にも馴染めない。
学園の生徒は品が良すぎて、鼻につく奴ばかりだ。
何人か品の良くない奴らもいるが、そいつらはそいつらで気に入らないから叩きのめしてしまった。
こんな事なら家族揃って旅をしていた時の方が、俺は居心地がよかった。
少なくともあの頃には、自由があった。
そんな生活を今は、懐かしく思う。
この国は俺にとって、狭すぎた。
一人でこの国を出ようか。
ぼんやりとそう思い始めた頃だ。
俺は奴に出会った。
「じゃあ、出かけてきますね。兄さん」
「またあの公爵の所に行くのか?」
最近の妹は、ヴェルデイドという公爵の家に入り浸っている。
どうやら魔法について詳しい人間らしく、いろいろ教わりたいのだとか。
そのわりに毎日ずいぶんとめかし込んでいるが……。
親父よりも年上のおっさんのどこがいいんだろうか。
俺にはわからんね。
今日は休日で、家から直接行くそうだ。
ちなみに、この家は親父の別荘だ。
本当の家は領地にあって、両親が滞在する時だけ利用している場所だ。
そこを俺達が学園へ通うための家として利用しているのである。
「俺も出かけるか……」
家に一人でいても仕方がない。
元来俺は、室内にいるよりも外にいる方が好きだ。
野宿が多かったせいか、屋根があると落ち着かない。
特にあてはないが、俺は町へ出かける事にした。
適当に露店の店で手軽な食い物を買って、広場のベンチに座る。
ぼんやりと辺りを眺めた。
行き交う住人達は、忙しそうにしていたり、楽しそうにしていたり、様々だ。
けれどみんな安心し切った様子で、そこからは厳しさの欠片も感じられない。
不意に訪れる危機を警戒するような素振りは一切ない。
きっとそれだけ、ここが安全な国だからなんだろう。
そしてその中に、今の俺は組み込まれている。
広場には、野菜を買いに来た子供連れの主婦がいて、荷車を運ぶ男がいて、日向ぼっこをする老人がいる。
きっとここにいる連中は、毎日同じ事を繰り返しているんだろう。
それをつまらないと思わないんだろうか?
俺も、これから先、同じ事を繰り返しながら生きていくんだろうか?
そう思うと億劫になる。
「はぁ……」
やっぱり、俺にこの国は合わない。
本当に、出て行ってしまおうか……。
そんな事を思いつつ、ベンチから立ち上がる。
道を歩き出す。
なんとはなしに小道へ入った。
そんな時だ。
曲がり角から、小柄な人間が飛び出した。
避け損なって、その人間が俺の胸にぶつかってくる。
ぶつかってきた人間が倒れこんだ。
「いてて」
その人間は、金髪の少年だ。
「おい、大丈夫かよ」
声をかけると、少年が俺を見上げた。
綺麗な碧眼だ。
驚くほどに整った顔の少年だった。
手足が細く、白く……。
女にも見えるような中性的な顔立ちである。
「君は?」
少年に問われる。
「ただの通りすがりだよ」
そう答えた。
「あ、それどころじゃない」
「あ?」
少年が立ち上がって、飛び出してきた曲がり角へ目を向けた。
そちらからは、スーツ姿の男達が三人走って来ていた。
「早く逃げないと……。ぶつかってごめんね」
少年は言って、走り出そうとする。
が……。
「つ……」
走り出せなかった。
顔を歪ませ、足を押さえる。
どうやら、足を挫いたようだ。
「追われてるのか?」
「そ、それは……」
「何とかしてやるよ」
「え?」
こいつが何をして、何で追われているのかはわからない。
ただ……。
久し振りの荒事。
そいつに乗っかりたいと思った。
少しでもこの窮屈な日常を紛らわせられるように……。
追いついた男達の前に立ち塞がる。
「何だ貴様は?」
男の一人が高圧的に訊ねてくる。
「そんな事はどうでもいいんだよ。最近、どうも気分が晴れなくてなぁ……。悪いが、憂さ晴らしになってもらうぜ」
そう言って、構えを取った。
数分後。
男達を叩きのめした俺は、地面に座り込んだ少年に目をやった。
少年は、呆然とした表情で俺を見上げていた。
「大丈夫か?」
声をかけると、ハッとなって言葉を返す。
「だ、大丈夫。君、強いんだな。びっくりしたよ」
「まぁ、この程度の相手なら」
これでも、両親には一度も勝った事がないんだけどな。
少年が立とうとする。
けれど、痛みで立てないようだった。
「ここに長くいるのはよくないな」
俺は、少年を抱き上げた。
……びっくりするくらい軽いな。
「な、何するんだ!」
顔を赤くして少年が叫ぶ。
そりゃあ、男に抱き上げられたら恥ずかしいわな。
でも、少し我慢しろ。
「とりあえず、ここから離れるんだよ。こいつらが目を覚ましても困るだろ?」
「それは……そうだけど」
俺は少年を抱き上げたままその場を離れた。
それからすぐに……。
「見つけた! あそこにいるぞ!」
スーツ姿の男達に見つかる。
あれはさっきの連中じゃない。
こいつ、思ったよりも大人数に追われているようだ。
路地に逃げ込む。
が……。
「いたぞ!」
前方からも男達が現れた。
「どんだけいるんだよ!」
思った以上に多い。
方向転換し、小道にそれる。
「待て!」
男達が追いかけている。
「ちっ……」
こういうトラブルは楽しくはあるんだが、度を越しても煩わしいな。
俺は少年を抱え上げたまま、走って逃げる。
そして……。
前方にさらなる人影があった。
あれは……。
俺は、内心ホッとする。
「クロエおばさん」
前方にいたのはクロエおばさんだった。
クロエおばさんは、母さんと互角に戦えるやたらと腕っ節の強いおばさんだ。
旅の間、しばらく行動を共にしていた人だ。
「グリフォンくんか。……私は気にしないけど、あんまり妙齢の女性におばさんって言わない方がいいよ」
「ごめん。でも、緊急事態なんだ」
言うと、おばさんは俺が抱き上げている少年を見た。
「クロエ・ビッテンフェルト……」
少年が呟いた。
その声には、驚きが含まれていた。
知っているのか?
「ふぅん」
おばさんは目を細める。
そして、俺達の後ろを見た。
スーツの男達が、迫って来ていた。
「わかった。ここは任せて先に行け」
「助かった」
おばさんが前に出て、男達の前に立ち塞がった。
クロエおばさんに助けてもらってから、男達が追ってこなくなった。
どうやら、逃げ切れたようだ。
人目のない所を見つけて、少年を座らせる。
「足」
「え?」
「捻ったんだろ? 見せてみな」
「う、うん」
少年が靴と靴下を脱いで、足を見せる。
足首が少し腫れている。
「あれくらいで捻るなんて、軟弱だな」
まぁ、これだけ細いと当然か。
「な、失礼だな君は。これでも僕は、運動には自信があるんだぞ。君にぶつかりさえしなければ……」
「わかったわかった」
俺は適当に返しながら、患部に手を当てる。
白色を流した。
みるみる内に、腫れが引く。
「ほら、治ったぞ」
「……ありがとう」
「それにしてもお前、何で追われてたんだ?」
「それは……。ちょっとね」
言いたくない理由でもあるのか?
なんか、胡散臭いな……。
「じゃあ、俺は行くぜ」
「あ、待ってくれ」
「何だ?」
「しばらく、一緒に行動しないか?」
「用心棒代わりにしようってか?」
「……そう思ってくれても構わない。なんなら、報酬を支払ってもいい。だから、一緒にいてほしい」
俺は少し考える。
胡散臭い奴だ。
でも、こいつからはトラブルの臭いがする。
一緒に行動すれば、いい退屈しのぎにはなりそうだ。
「いいぜ」
「ありがとう!」
少年は屈託なく笑った。
男とは思えない可愛らしい笑顔だ。
「俺の名はグリフォン。お前、名前は?」
「僕は……リーオーだよ」
リーオー、か。
「よろしくな」
「よろしく」
俺達は握手を交わした。
「それで、一緒に行動するって何をしたいんだ」
「え。えーと、町で遊ばないかなって……」
「え? 何か目的があるとかじゃねぇのか? 本当、何で追われてたんだよ、お前」
「まぁ、いろいろあるんだよ」
「ふぅん。まぁいいや。退屈していた所だしな」
それから、俺達は町に出て一緒に遊んだ。
話をしていてわかった事だが、どうやらリーオーはシュエット魔法学園の三年生。
先輩だったらしい。
小さいから、どうみても年下に見えるんだけどな……。
だが、そんな事など関係なく、俺はリーオーと仲良くなった。
こうして俺達は、友達になった。
そして、こいつの苗字がアールネスであると知ったのはもう少し後の事である。
どうやらリーオーは、俺の親戚だったらしい。
☆クロエ視点
私の視線の先では、二人が楽しそうに談笑していた。
グリフォンが連れていた子は、陛下の第二子。
リオン王子の兄弟に当たる方だ。
多分、今はリーオーと名乗っているはずだ。
量産型かな?
短い間だが、私とアードラーが面倒を見ていた子である。
二人を逃した私は、追って来ていた男達に事情を聞いた。
どうやらあの子は、お忍びで町へ遊びに来ていたらしい。
男達はあの子の護衛だったのだが、窮屈だという理由で逃げてしまったのだとか。
彼らには、あとの面倒は私が見ると言って帰らせた。
そして今、私は影ながら見守っているわけである。
「友達ができないってカナリオが心配していたみたいだけど……。よかったじゃないか」
グリフォンを見ながら呟く。
「でも……その友情はいつまで続くだろうね。もしかしたら、別のものに変わったりして」
私はもう一人を見る。
「ねぇ、アクイラ王女様」
彼女の本当の名はアクイラ。
この国のお姫様であり、プレイアブルキャラクターの一人である。
リオン王子と同じモーションが多いが、王子のようながっつりインファイターではなく豊富な魔法を織り交ぜた中距離戦を得意とするキャラクターである。
リオン王子よりも技の使い勝手がよく扱いやすいが、その分体力と火力が低いテクニカルなキャラクターだ。
ちなみに、チヅルちゃんから聞いた話によるとグリフォンくんは主人公で、彼女はメインヒロインなのだそうだ。
これから二人がどうなっているのか、ちょっと楽しみである。
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