気付いたら、豪傑系悪役令嬢になっていた SE
閑話 父上とおでかけしました
「クロエ」
私が家の廊下を歩いていると、後ろから声をかけられた。
振り返ると、そこには母上が立っていた。
「なんですか? 母上」
「お父さんの事、そろそろ許してあげられませんか?」
私はそっぽを向いた。
陛下にまで私の黒歴史を披露していた父上。
その事実が露見した翌日から、父上は部屋から出てこなくなった。
原因は、私が「パパ、大っ嫌い! もう二度と口聞かないから! あと、私の洗濯物とパパの洗濯物を一緒に洗わないで!」と父上に口走った事だ。
それ以来、父上はショックを受けて部屋から出てこなくなった。
「もう少しいいんじゃないですか?」
国内の狭い範囲で伝わる事は仕方ないとは思ったが、外の国やら王様にまでこの話が伝わっているとなると私もショックが大きかったのだ。
顔も知らぬ誰かが、今もどこかで笑い話として私の話をしているのではないかと思うと恥ずかしくてならない。
もう少しばかり孤独と友達になってもらってもいいと思うのだ。
「そうも行きません」
けれど、母上はきっぱりと却下した。
「軍の関係者にあなたの顔見せをする、と前から話は通してあったでしょう?」
そういえばそんな話をされた気がする。
私はまだ自分の将来を決めていない。
軍人になるかどうかはまだわからないが、とりあえず軍の関係者と面識を持っておいた方がいいんじゃないかという話になったのだ。
学園の卒業後にはアルディリアとの結婚も決まっているし、専業主婦でもいい気はするのだが……。
知らないよりも知っておいた方がいいだろう。
ちなみに、アルディリアは軍人になる事が決まっているらしい。
今回の顔見せにも出席するそうだ。
どちらかというと、私の顔見せと言うより将来のビッテンフェルト家夫妻の顔見せみたいな意味が強いのかもしれないね。
「そういえばそうでした。……確か、明後日の夜ですね」
「そうです。だから、早くお父様と仲直りしてきなさい」
「はぁい」
父上が引きこもって、そろそろ一ヶ月近い。
そんな父の部屋に私は足を踏み入れた。
父上はたまに、家の人間が寝静まった頃にお風呂へ入りに行っていたらしい。
その間にメイド達が掃除などをしていたため、前に引きこもっていた時に比べると汗臭さはあまりない。
季節のおかげで涼しくなりつつあった事も幸いしているのだろう。
父上は、部屋の床に座禅みたいな感じで座っていた。
「父上……」
「クロエか……」
閉じられていた父上の瞳がゆっくりと開く。
今の父上には、前の時のようなギラギラとした雰囲気がない。
むしろ、とても穏やかな様子だ。
「何してるんですか?」
「考え事をしていた」
「そうですか」
「孤独は人を強くする。だが、私は気付いたのだ。強くなった所で、それを向ける相手も、守る対象もなければ、強さに何の意味があるだろう」
「そうですか」
孤独は父上に強さだけでなく、悟りを与えたらしい。
「父上、明後日は軍の方への顔見せがあるのでそろそろ出てください」
「……そうだったな。そのような事もあった」
「あと、パパの事は大好きです。でも、あの事はできれば、いいえ、絶対言いふらさないでほしいなぁ、と思ってます」
「そうか……すまなかったな」
「あと、やっぱりちょっと汗臭いので、お風呂に入ってください」
「ああ。わかった。……一緒に入るか?」
「母上を誘ってあげてください」
「そうしよう」
それから明後日《みょうごにち》。
私は父上と一緒に、町にある一軒の大きな酒場へ赴いた。
そこが顔見せの場所である。
軍のお偉いさん方が集まるのだから、貴族の屋敷でパーティかと思われたかもしれないが、今回は平民出身の部下達も参加しやすいように酒場を貸し切って行われる事となった。
父上と仲の良い人間は、貴族だろうが平民出身の元傭兵だろうが全員格式ばった事に拘らない人間ばかりなのだそうだ。
簡単に言えば、脳き……げふんげふん。
さばさばとした豪傑系おじ様達ばかりなのだ。
「今日は酒を飲まぬつもりだ」
「そうなんですか?」
「酒を飲むと、どうしても妻と娘の自慢をしたくなってな」
父上は私との約束を守ろうとしてくれているようだ。
「ありがとうございます」
酒場に入ると、中ではすでに出来上がって騒がしくしている屈強な男達が数人騒がしくしていた。
みんな筋骨隆々とした体で、顔が傷だらけの人や、武将髭(造語)の人も何人かいた。
本職の軍人だけあって、みんな強そうだ。
酒場は、二階建てだった。
広い一階フロアと中央が吹き抜けになった二階フロアがあり、二階からは一階が見下ろせるようになっていた。
「隊長だ!」
一人が父上に気付いて声を上げる。
すると、店内にあった視線が一斉に私達へ向いた。
厳つい顔の男達に注目されて少し怯む。
「お待ちしてました! ビッテンフェルト隊長!」
敬礼して、男達は父上を出迎えた。
お待ちしていた割には、みんな出来上がってますよね。
顔真っ赤ですよ。
「隊長、そちらがお嬢ですかい?」
「ああ、ジャック。娘のクロエだ」
「娘のクロエです。よろしくお願いします」
紹介され、私は挨拶する。
「あれがお嬢か……」
「お嬢……」
「お嬢……」
みんな、私を見ながら口々に呟いている。
こんなにマジマジと注目されたら何か恥ずかしい。
周囲から注目される中、私は父上に連れられて何人かに引き合わされた。
父上と同じ将軍の地位にある人達だ。
みんな指揮官というよりも、武人という感じの人間ばかりだった。
思った通り、さばさばとして豪快な人達だ。
みんな筋肉の塊みたいな体格で、父上が細身に見えるくらいである。
あと一つわかった事がある。
顔見せという話だったけれど、これはただの宴会である。
主賓であるはずの私やアルディリアが来ていないのに、すでにみんな出来上がってしまっているのである。
これは顔見せに託《かこつ》けて、騒ぎたかっただけなのだろう。
しばらくすると、アルディリアが父親と一緒に来店した。
「あれが坊《ぼん》か……」
「坊……」
「坊……」
副長の息子だからなぁ。
アルディリアも偉いさんの息子って事になるんだよね。
注目されて、居たたまれなさそうだ。
アルディリアは私を見つけると、安心したように強張った表情を解した。
彼も何人かに挨拶を交わしてから、私の所へ来る。
「クロエ!」
「こんばんは、アルディリア」
「こんばんは」
挨拶を交し合う。
「せっかくだ。二人でいるといい。私はラーゼンフォルトと話をしている」
「はい。わかりました」
父上は、アルディリアの父親と一緒に私達から離れて入った。
そのまま、酒場の二階へ上がる。
取り残される私達。
あとは若い二人で、という考えなのだろうが、正直保護者がいなくなって心細かった。
なんて思っていると、私の手をアルディリアが握った。
アルディリアも心細いのかな。
そう思って彼の顔を見る。
若干強張っているが、彼が作る表情は笑顔だった。
「どこかに座ろうか、クロエ」
エスコートしてくれるつもりらしい。
御世辞にも頼もしいとは言えないが、勇気を振り絞って私を導こうとしてくれる姿が嬉しかった。
「お嬢、坊、こっちあいてますぜ」
と、そんな時に父上の部下らしき人が声をかけてくれた。
壁の端にあった長椅子の席を示してくれる。
多分、あいていたのではなくあけてくれたんだろうな。
「折角だから、そこに座ろうか」
「う、うん。そうだね」
案内された席に二人で座ると、私達を挟むように屈強な男達が座った。
「お嬢、何にしやしょうか? ワインなんぞどうです?」
「エールもありやすぜ、坊」
がたいのいいお兄様とおじ様方が、厳しい笑顔で接待をしてくれる。
これは新手のホストクラブだろうか?
「じゃあ、あの、ワインのお湯割りをお願いします。クロエも同じのでいい?」
どうしようかと思っていたら、アルディリアが率先して聞いてくれた。
「うん」
お酒は苦手だが、せっかくアルディリアが気を利かせてくれたのだからいただいておく。
それに、たまには飲みたいという時だってある。
複雑な乙女心だ。
「任せてくだせぇ」
部下の人が店員に注文を伝えに行く。
そのままお酒を持って、戻ってきた。
「どうぞ」
テーブルに置かれたワインをアルディリアが私に渡す。
「はい。どうぞ」
可愛らしく微笑まれる。
やっぱり、ホストクラブじゃなくてキャバクラだったのかもしれない。
「お嬢は、あんまりお酒は飲まれないんですかい?」
「苦手なんです。飲んでも酔えないし、頭が痛くなるんです」
「そいつは、飲む量が足りねぇんじゃないですかい? あの隊長の娘さんなんだ。きっと酒にも強ぇに決まってます。一杯ぐらいじゃあ、中途半端に酔って頭が痛くなっちまうんですよ」
そういう物だろうか?
前世ではお酒の飲める歳じゃなかったから、わからないんだよね。
今でもそうなんだけど……。
試した事もなかったし、今日はとことん飲んでみようかな。
そう思って、私はワインを一気飲みした。
「おかわり、お願いします」
「よろこんで!」
部下の人が威勢よく応じて、店員さんに注文を伝えに行った。
「大丈夫なの?」
「わかんない。けど、一回試してみるよ」
心配そうなアルディリアに答える。
そんな時だった。
栗色の髪のマッシブな大男が私達の前に現れた。
テーブルを挟んで、正面に立つ。
誰だろうか?
そう思っていると、アルディリアが声を上げる。
「兄上」
ヴェッ!
「始めまして、クロエ嬢。アルディリアの兄です。名前は――」
自己紹介を交し合う。
いるのは知っていたけれど、会うのは初めてだ。
この人は、ラーゼンフォルト家の次期当主になる人だ。
なので、アルディリアはビッテンフェルト家へ婿養子になる事になっていた。
しかし、お兄さんか。
兄弟だと思って見てみると、確かに似て……。
いや、ごめんなさい。
そう思って見ても全然似てません。
一致している部分と言えば、髪と目の色が同じというぐらいだ。
お兄さんはアルディリアの父親と同じぐらいの巨体で、顎も割れている。
まるでハリウッドで活躍していそうなマッチョマンである。
私が来た! とか言い出しそうな人だ。
アルディリアと共通となる点を探そうとすればするだけ、その差異が目立った。
「似てないでしょう?」
「……はい」
お兄さんに問われ、若干迷ったが正直に感想を述べた。
「素直な方だ。弟をよろしくお願いします。この子は心根の良い子ですから」
深く頭を下げられた。
「兄上! 恥ずかしいです!」
アルディリアが赤面して抗議する。
「お兄さん、それは知っています」
と、アルディリアの言葉を無視して私はお兄さんに答えた。
「それはよかった」
お兄さんがアメリカンなほっこり笑顔で返した。
「くぅぅ……」
アルディリアは恥ずかしそうに顔を俯けて唸った。
部下の人が言っていた事は正しかったらしい。
私は今まで、中途半端に飲んでいたせいで酔いの境地に達する事ができなかったのだ。
ワインのお湯割りを十杯ほど飲んだ今、私はかつてないほどの気分の良さを覚えていた。
初めての酔いである。
気持ちいい……。
「ねぇ、アルディリアぁ」
私はアルディリアの首に腕を回し、絡む。
「な、何?」
「「ドラゴンシュート!」って叫んでみて」
「何で?」
「聞きたいから」
「えっと、恥ずかしいよ」
「んー、じゃあ「体が熱い! 力が目覚める!」でもいいよ」
「いや、だから何で?」
「聞きたいからだってばよ。ねー、お願いだってばよー」
抱きつく力を強めながら迫る。
ぐいぐいと胸部でアルディリアの背中を押す。
アルディリアの顔がこれ以上ないくらいに赤くなっている。
偶然だと思った? 残念! 当ててんのよ!
「こ、今度ね。二人の時だったらいいよ」
恥ずかしげに答える。
むふふ、可愛いぜ。
アルディリア、可愛いっ!
「お前が好っきや!」
私は大きな声で言って、アルディリアのおでこにキスした。
人を褒める時は大きな声でーっ!
「ク、クロエ!?」
「アッハッハッハッハ!」
アルディリアも、アードラーも、アルエットちゃんも、アから始まる名前のちっちゃい子はみんな好き!
みんなちゅっちゅしたいっ!
そうしてアルディリアの顔が混乱と酔いで真っ赤になり、目がグルグルし始めた頃だ。
酒場の真ん中で、腕相撲大会が始まった。
「何あれ? 楽しそう」
私はテーブルを跳躍で飛び越した。
腕相撲大会の舞台と化したテーブル席へまっすぐに進む。
「私も混ぜてーっ!」
「お嬢!?」
「混ぜろーっ!」
参加者が顔を見合わせる。
「じゃあ、俺が相手させていただきやす」
そう言ったのは、確かパパがさっきジャックとか呼んでた人だ。
「ドーモ! ジャック=サン! クロエ・ビッテンフェルトです! 貴様、ソウカイヤの人間か!」
「いえ、ビッテンフェルト隊の百人隊長をしております。ジャックと申しやす。苗字はございません」
緊張した面持ちで、ジャックさんがテーブルに腕を置く。
私もその手を取って、肘をテーブルに着けた。
「始め!」
合図の声がかかる。
全力でジャックさんの手をテーブルに叩き付けた。
一瞬でついた決着に、みんな私を驚いた目で見ていた。
私強いやろぉ!
ドヤァ!
得意げに見回すと、彼らの目に闘志が湧いているのが見えた。
「俺が相手します」
「俺も!」
「次、お願いします」
おお、私、超大人気だ。
いいぜいいぜ、じゃんじゃん来なっ!
全員可愛がってやるぜ、ベイベーッ!
そうして十人ぐらいの部下の人達を蹴散らした。
最後に勝った相手はこの中で一番の力自慢だったらしく、それ以降挑む人がいなくなった。
相手がいなくなって、つまらん!
ってなっていた時だ。
「嘗《な》めた事言うな、このガキが!」
「本当の事言っただけじゃねぇか!」
怒声が上がり、そちらを向くと喧嘩が始まっていた。
一人が相手を殴り倒す所が見えた。
殴られた方が立ち上がり、服に手をかけた。
そのまま引っ張ると、服がバサッと一瞬で脱げる。
ヤクザ脱ぎだっ!
カッケー!
もう一人の方も同じように脱ぐ。
「つべこべ言わずかかってこいや!」
「上等じゃボケェ!」
罵声を飛ばしあい、二人が殴り合いを始める。
周囲の人達もそれを止めるでもなく、楽しげに煽っている。
あー楽しそうだー。
私もやりたい。
私は喧嘩を始めた二人の方へ歩いていった。
「混ぜてーっ!」
「お嬢っ!?」
「混ぜろーっ!」
私は叫び、自分の服に手をやった。
バッと、上着だけが脱げる。
だが、変身セットとの兼ね合いで上着は無糸服だが、シャツは普通のシャツなので脱げなかった。
仕方ないので、ボタンを外して脱ごうとする。
「いけやせん、お嬢! こんな所で脱がないでください!」
「んー、わかった」
よく考えれば恥ずかしいから止めとこう。
このままやろう。
「じゃあ、やろうか」
私は喧嘩をする二人に飛び掛った。
一人を首相撲からの膝蹴りで体をカタカナのクの字に曲げ、もう一人の背骨をロンドンの橋みたいに折り曲げ、二人を倒した。
……あんまり強くない。
パパの方が強いもん。
そういえば、パパどこだろう?
パパどこー?
クロエのだーい好きなパパどこー?
そういえば、アルディリアのお父さんと一緒に二階に行ったんだ。
パパー♪
私は一階フロアから跳躍し、吹き抜けから二階へ上った。
「「「お嬢っ!?」」」
一階から驚く声が聞こえる。
パパどこかなー?
吹き抜けの手すりに乗って、辺りを見渡す。
あ、パパみーっけ!
フロアでパパの後姿を見つける。
後ろからこっそりと近づいていく。
何か、楽しそうにアルディリアのお父さんと話をしてるみたいだ。
何話してるのかなー?
「でな、その時に私の首にじゃれつくように抱きついて、甘えてきたんだ。「パパ、だーい好き」とな。あの時の娘の愛おしさたるや」
あ……? あ……?
父上、それ何の話?
私は、手近な席の椅子を掴んで引き摺る。
そうして、父上の背後で椅子を振り上げた。
アルディリアのお父さんが私に気付く。
その表情の変化を不審に思ったのか、パパが振り返った。
パパは、ほんのりと頬を赤く染めて、手にはエールの入ったジョッキを持っていた。
「……クロエ……誤解だ」
「何が誤解じゃあ!」
言いふらしとったやないけぇ!
私は思い切り、父上へ椅子を振り下ろした。
あの日の酒場で何があったのか……。
私は全然憶えていない。
その場に居合わせた人間に聞いても、誰もが皆口を閉ざして語らなかった。
ただ確かな事は、酔った私と父上が店の中をめちゃくちゃに壊して修繕費を請求された事。
その拳はテーブルを裂き、蹴りは床を割り、そのせいで酷い有様にしてしまったらしい。
倒壊は免れたが、何本かの柱がポッキリと折れていたという。
そしてその事で母上からこっぴどく叱られてしまった。
母上は賠償金を支払い、なおかつ店を買い取ってビッテンフェルト家の経営する店にしてしまった。
今後、宴会を開く時はこの店を使い、他の店へ迷惑をかけないように、との事だ。
本当に私と父上は何をしたのだろうか?
ただ、それ以来私は父上の部下から二代目と呼ばれるようになった。
まだ、軍人になると決めたわけじゃないのだけど……。
あと、どういうわけか二人きりの時にアルディリアが好きなゲームの技名を私の前で叫んでくれた。
彼の声でその技名を聞けたのは嬉しかったが、何で彼がそれを知っていて、叫んでくれたのかはわからなかった。
そして私はそれ以来、二杯以上の飲酒を禁じられた。
私が家の廊下を歩いていると、後ろから声をかけられた。
振り返ると、そこには母上が立っていた。
「なんですか? 母上」
「お父さんの事、そろそろ許してあげられませんか?」
私はそっぽを向いた。
陛下にまで私の黒歴史を披露していた父上。
その事実が露見した翌日から、父上は部屋から出てこなくなった。
原因は、私が「パパ、大っ嫌い! もう二度と口聞かないから! あと、私の洗濯物とパパの洗濯物を一緒に洗わないで!」と父上に口走った事だ。
それ以来、父上はショックを受けて部屋から出てこなくなった。
「もう少しいいんじゃないですか?」
国内の狭い範囲で伝わる事は仕方ないとは思ったが、外の国やら王様にまでこの話が伝わっているとなると私もショックが大きかったのだ。
顔も知らぬ誰かが、今もどこかで笑い話として私の話をしているのではないかと思うと恥ずかしくてならない。
もう少しばかり孤独と友達になってもらってもいいと思うのだ。
「そうも行きません」
けれど、母上はきっぱりと却下した。
「軍の関係者にあなたの顔見せをする、と前から話は通してあったでしょう?」
そういえばそんな話をされた気がする。
私はまだ自分の将来を決めていない。
軍人になるかどうかはまだわからないが、とりあえず軍の関係者と面識を持っておいた方がいいんじゃないかという話になったのだ。
学園の卒業後にはアルディリアとの結婚も決まっているし、専業主婦でもいい気はするのだが……。
知らないよりも知っておいた方がいいだろう。
ちなみに、アルディリアは軍人になる事が決まっているらしい。
今回の顔見せにも出席するそうだ。
どちらかというと、私の顔見せと言うより将来のビッテンフェルト家夫妻の顔見せみたいな意味が強いのかもしれないね。
「そういえばそうでした。……確か、明後日の夜ですね」
「そうです。だから、早くお父様と仲直りしてきなさい」
「はぁい」
父上が引きこもって、そろそろ一ヶ月近い。
そんな父の部屋に私は足を踏み入れた。
父上はたまに、家の人間が寝静まった頃にお風呂へ入りに行っていたらしい。
その間にメイド達が掃除などをしていたため、前に引きこもっていた時に比べると汗臭さはあまりない。
季節のおかげで涼しくなりつつあった事も幸いしているのだろう。
父上は、部屋の床に座禅みたいな感じで座っていた。
「父上……」
「クロエか……」
閉じられていた父上の瞳がゆっくりと開く。
今の父上には、前の時のようなギラギラとした雰囲気がない。
むしろ、とても穏やかな様子だ。
「何してるんですか?」
「考え事をしていた」
「そうですか」
「孤独は人を強くする。だが、私は気付いたのだ。強くなった所で、それを向ける相手も、守る対象もなければ、強さに何の意味があるだろう」
「そうですか」
孤独は父上に強さだけでなく、悟りを与えたらしい。
「父上、明後日は軍の方への顔見せがあるのでそろそろ出てください」
「……そうだったな。そのような事もあった」
「あと、パパの事は大好きです。でも、あの事はできれば、いいえ、絶対言いふらさないでほしいなぁ、と思ってます」
「そうか……すまなかったな」
「あと、やっぱりちょっと汗臭いので、お風呂に入ってください」
「ああ。わかった。……一緒に入るか?」
「母上を誘ってあげてください」
「そうしよう」
それから明後日《みょうごにち》。
私は父上と一緒に、町にある一軒の大きな酒場へ赴いた。
そこが顔見せの場所である。
軍のお偉いさん方が集まるのだから、貴族の屋敷でパーティかと思われたかもしれないが、今回は平民出身の部下達も参加しやすいように酒場を貸し切って行われる事となった。
父上と仲の良い人間は、貴族だろうが平民出身の元傭兵だろうが全員格式ばった事に拘らない人間ばかりなのだそうだ。
簡単に言えば、脳き……げふんげふん。
さばさばとした豪傑系おじ様達ばかりなのだ。
「今日は酒を飲まぬつもりだ」
「そうなんですか?」
「酒を飲むと、どうしても妻と娘の自慢をしたくなってな」
父上は私との約束を守ろうとしてくれているようだ。
「ありがとうございます」
酒場に入ると、中ではすでに出来上がって騒がしくしている屈強な男達が数人騒がしくしていた。
みんな筋骨隆々とした体で、顔が傷だらけの人や、武将髭(造語)の人も何人かいた。
本職の軍人だけあって、みんな強そうだ。
酒場は、二階建てだった。
広い一階フロアと中央が吹き抜けになった二階フロアがあり、二階からは一階が見下ろせるようになっていた。
「隊長だ!」
一人が父上に気付いて声を上げる。
すると、店内にあった視線が一斉に私達へ向いた。
厳つい顔の男達に注目されて少し怯む。
「お待ちしてました! ビッテンフェルト隊長!」
敬礼して、男達は父上を出迎えた。
お待ちしていた割には、みんな出来上がってますよね。
顔真っ赤ですよ。
「隊長、そちらがお嬢ですかい?」
「ああ、ジャック。娘のクロエだ」
「娘のクロエです。よろしくお願いします」
紹介され、私は挨拶する。
「あれがお嬢か……」
「お嬢……」
「お嬢……」
みんな、私を見ながら口々に呟いている。
こんなにマジマジと注目されたら何か恥ずかしい。
周囲から注目される中、私は父上に連れられて何人かに引き合わされた。
父上と同じ将軍の地位にある人達だ。
みんな指揮官というよりも、武人という感じの人間ばかりだった。
思った通り、さばさばとして豪快な人達だ。
みんな筋肉の塊みたいな体格で、父上が細身に見えるくらいである。
あと一つわかった事がある。
顔見せという話だったけれど、これはただの宴会である。
主賓であるはずの私やアルディリアが来ていないのに、すでにみんな出来上がってしまっているのである。
これは顔見せに託《かこつ》けて、騒ぎたかっただけなのだろう。
しばらくすると、アルディリアが父親と一緒に来店した。
「あれが坊《ぼん》か……」
「坊……」
「坊……」
副長の息子だからなぁ。
アルディリアも偉いさんの息子って事になるんだよね。
注目されて、居たたまれなさそうだ。
アルディリアは私を見つけると、安心したように強張った表情を解した。
彼も何人かに挨拶を交わしてから、私の所へ来る。
「クロエ!」
「こんばんは、アルディリア」
「こんばんは」
挨拶を交し合う。
「せっかくだ。二人でいるといい。私はラーゼンフォルトと話をしている」
「はい。わかりました」
父上は、アルディリアの父親と一緒に私達から離れて入った。
そのまま、酒場の二階へ上がる。
取り残される私達。
あとは若い二人で、という考えなのだろうが、正直保護者がいなくなって心細かった。
なんて思っていると、私の手をアルディリアが握った。
アルディリアも心細いのかな。
そう思って彼の顔を見る。
若干強張っているが、彼が作る表情は笑顔だった。
「どこかに座ろうか、クロエ」
エスコートしてくれるつもりらしい。
御世辞にも頼もしいとは言えないが、勇気を振り絞って私を導こうとしてくれる姿が嬉しかった。
「お嬢、坊、こっちあいてますぜ」
と、そんな時に父上の部下らしき人が声をかけてくれた。
壁の端にあった長椅子の席を示してくれる。
多分、あいていたのではなくあけてくれたんだろうな。
「折角だから、そこに座ろうか」
「う、うん。そうだね」
案内された席に二人で座ると、私達を挟むように屈強な男達が座った。
「お嬢、何にしやしょうか? ワインなんぞどうです?」
「エールもありやすぜ、坊」
がたいのいいお兄様とおじ様方が、厳しい笑顔で接待をしてくれる。
これは新手のホストクラブだろうか?
「じゃあ、あの、ワインのお湯割りをお願いします。クロエも同じのでいい?」
どうしようかと思っていたら、アルディリアが率先して聞いてくれた。
「うん」
お酒は苦手だが、せっかくアルディリアが気を利かせてくれたのだからいただいておく。
それに、たまには飲みたいという時だってある。
複雑な乙女心だ。
「任せてくだせぇ」
部下の人が店員に注文を伝えに行く。
そのままお酒を持って、戻ってきた。
「どうぞ」
テーブルに置かれたワインをアルディリアが私に渡す。
「はい。どうぞ」
可愛らしく微笑まれる。
やっぱり、ホストクラブじゃなくてキャバクラだったのかもしれない。
「お嬢は、あんまりお酒は飲まれないんですかい?」
「苦手なんです。飲んでも酔えないし、頭が痛くなるんです」
「そいつは、飲む量が足りねぇんじゃないですかい? あの隊長の娘さんなんだ。きっと酒にも強ぇに決まってます。一杯ぐらいじゃあ、中途半端に酔って頭が痛くなっちまうんですよ」
そういう物だろうか?
前世ではお酒の飲める歳じゃなかったから、わからないんだよね。
今でもそうなんだけど……。
試した事もなかったし、今日はとことん飲んでみようかな。
そう思って、私はワインを一気飲みした。
「おかわり、お願いします」
「よろこんで!」
部下の人が威勢よく応じて、店員さんに注文を伝えに行った。
「大丈夫なの?」
「わかんない。けど、一回試してみるよ」
心配そうなアルディリアに答える。
そんな時だった。
栗色の髪のマッシブな大男が私達の前に現れた。
テーブルを挟んで、正面に立つ。
誰だろうか?
そう思っていると、アルディリアが声を上げる。
「兄上」
ヴェッ!
「始めまして、クロエ嬢。アルディリアの兄です。名前は――」
自己紹介を交し合う。
いるのは知っていたけれど、会うのは初めてだ。
この人は、ラーゼンフォルト家の次期当主になる人だ。
なので、アルディリアはビッテンフェルト家へ婿養子になる事になっていた。
しかし、お兄さんか。
兄弟だと思って見てみると、確かに似て……。
いや、ごめんなさい。
そう思って見ても全然似てません。
一致している部分と言えば、髪と目の色が同じというぐらいだ。
お兄さんはアルディリアの父親と同じぐらいの巨体で、顎も割れている。
まるでハリウッドで活躍していそうなマッチョマンである。
私が来た! とか言い出しそうな人だ。
アルディリアと共通となる点を探そうとすればするだけ、その差異が目立った。
「似てないでしょう?」
「……はい」
お兄さんに問われ、若干迷ったが正直に感想を述べた。
「素直な方だ。弟をよろしくお願いします。この子は心根の良い子ですから」
深く頭を下げられた。
「兄上! 恥ずかしいです!」
アルディリアが赤面して抗議する。
「お兄さん、それは知っています」
と、アルディリアの言葉を無視して私はお兄さんに答えた。
「それはよかった」
お兄さんがアメリカンなほっこり笑顔で返した。
「くぅぅ……」
アルディリアは恥ずかしそうに顔を俯けて唸った。
部下の人が言っていた事は正しかったらしい。
私は今まで、中途半端に飲んでいたせいで酔いの境地に達する事ができなかったのだ。
ワインのお湯割りを十杯ほど飲んだ今、私はかつてないほどの気分の良さを覚えていた。
初めての酔いである。
気持ちいい……。
「ねぇ、アルディリアぁ」
私はアルディリアの首に腕を回し、絡む。
「な、何?」
「「ドラゴンシュート!」って叫んでみて」
「何で?」
「聞きたいから」
「えっと、恥ずかしいよ」
「んー、じゃあ「体が熱い! 力が目覚める!」でもいいよ」
「いや、だから何で?」
「聞きたいからだってばよ。ねー、お願いだってばよー」
抱きつく力を強めながら迫る。
ぐいぐいと胸部でアルディリアの背中を押す。
アルディリアの顔がこれ以上ないくらいに赤くなっている。
偶然だと思った? 残念! 当ててんのよ!
「こ、今度ね。二人の時だったらいいよ」
恥ずかしげに答える。
むふふ、可愛いぜ。
アルディリア、可愛いっ!
「お前が好っきや!」
私は大きな声で言って、アルディリアのおでこにキスした。
人を褒める時は大きな声でーっ!
「ク、クロエ!?」
「アッハッハッハッハ!」
アルディリアも、アードラーも、アルエットちゃんも、アから始まる名前のちっちゃい子はみんな好き!
みんなちゅっちゅしたいっ!
そうしてアルディリアの顔が混乱と酔いで真っ赤になり、目がグルグルし始めた頃だ。
酒場の真ん中で、腕相撲大会が始まった。
「何あれ? 楽しそう」
私はテーブルを跳躍で飛び越した。
腕相撲大会の舞台と化したテーブル席へまっすぐに進む。
「私も混ぜてーっ!」
「お嬢!?」
「混ぜろーっ!」
参加者が顔を見合わせる。
「じゃあ、俺が相手させていただきやす」
そう言ったのは、確かパパがさっきジャックとか呼んでた人だ。
「ドーモ! ジャック=サン! クロエ・ビッテンフェルトです! 貴様、ソウカイヤの人間か!」
「いえ、ビッテンフェルト隊の百人隊長をしております。ジャックと申しやす。苗字はございません」
緊張した面持ちで、ジャックさんがテーブルに腕を置く。
私もその手を取って、肘をテーブルに着けた。
「始め!」
合図の声がかかる。
全力でジャックさんの手をテーブルに叩き付けた。
一瞬でついた決着に、みんな私を驚いた目で見ていた。
私強いやろぉ!
ドヤァ!
得意げに見回すと、彼らの目に闘志が湧いているのが見えた。
「俺が相手します」
「俺も!」
「次、お願いします」
おお、私、超大人気だ。
いいぜいいぜ、じゃんじゃん来なっ!
全員可愛がってやるぜ、ベイベーッ!
そうして十人ぐらいの部下の人達を蹴散らした。
最後に勝った相手はこの中で一番の力自慢だったらしく、それ以降挑む人がいなくなった。
相手がいなくなって、つまらん!
ってなっていた時だ。
「嘗《な》めた事言うな、このガキが!」
「本当の事言っただけじゃねぇか!」
怒声が上がり、そちらを向くと喧嘩が始まっていた。
一人が相手を殴り倒す所が見えた。
殴られた方が立ち上がり、服に手をかけた。
そのまま引っ張ると、服がバサッと一瞬で脱げる。
ヤクザ脱ぎだっ!
カッケー!
もう一人の方も同じように脱ぐ。
「つべこべ言わずかかってこいや!」
「上等じゃボケェ!」
罵声を飛ばしあい、二人が殴り合いを始める。
周囲の人達もそれを止めるでもなく、楽しげに煽っている。
あー楽しそうだー。
私もやりたい。
私は喧嘩を始めた二人の方へ歩いていった。
「混ぜてーっ!」
「お嬢っ!?」
「混ぜろーっ!」
私は叫び、自分の服に手をやった。
バッと、上着だけが脱げる。
だが、変身セットとの兼ね合いで上着は無糸服だが、シャツは普通のシャツなので脱げなかった。
仕方ないので、ボタンを外して脱ごうとする。
「いけやせん、お嬢! こんな所で脱がないでください!」
「んー、わかった」
よく考えれば恥ずかしいから止めとこう。
このままやろう。
「じゃあ、やろうか」
私は喧嘩をする二人に飛び掛った。
一人を首相撲からの膝蹴りで体をカタカナのクの字に曲げ、もう一人の背骨をロンドンの橋みたいに折り曲げ、二人を倒した。
……あんまり強くない。
パパの方が強いもん。
そういえば、パパどこだろう?
パパどこー?
クロエのだーい好きなパパどこー?
そういえば、アルディリアのお父さんと一緒に二階に行ったんだ。
パパー♪
私は一階フロアから跳躍し、吹き抜けから二階へ上った。
「「「お嬢っ!?」」」
一階から驚く声が聞こえる。
パパどこかなー?
吹き抜けの手すりに乗って、辺りを見渡す。
あ、パパみーっけ!
フロアでパパの後姿を見つける。
後ろからこっそりと近づいていく。
何か、楽しそうにアルディリアのお父さんと話をしてるみたいだ。
何話してるのかなー?
「でな、その時に私の首にじゃれつくように抱きついて、甘えてきたんだ。「パパ、だーい好き」とな。あの時の娘の愛おしさたるや」
あ……? あ……?
父上、それ何の話?
私は、手近な席の椅子を掴んで引き摺る。
そうして、父上の背後で椅子を振り上げた。
アルディリアのお父さんが私に気付く。
その表情の変化を不審に思ったのか、パパが振り返った。
パパは、ほんのりと頬を赤く染めて、手にはエールの入ったジョッキを持っていた。
「……クロエ……誤解だ」
「何が誤解じゃあ!」
言いふらしとったやないけぇ!
私は思い切り、父上へ椅子を振り下ろした。
あの日の酒場で何があったのか……。
私は全然憶えていない。
その場に居合わせた人間に聞いても、誰もが皆口を閉ざして語らなかった。
ただ確かな事は、酔った私と父上が店の中をめちゃくちゃに壊して修繕費を請求された事。
その拳はテーブルを裂き、蹴りは床を割り、そのせいで酷い有様にしてしまったらしい。
倒壊は免れたが、何本かの柱がポッキリと折れていたという。
そしてその事で母上からこっぴどく叱られてしまった。
母上は賠償金を支払い、なおかつ店を買い取ってビッテンフェルト家の経営する店にしてしまった。
今後、宴会を開く時はこの店を使い、他の店へ迷惑をかけないように、との事だ。
本当に私と父上は何をしたのだろうか?
ただ、それ以来私は父上の部下から二代目と呼ばれるようになった。
まだ、軍人になると決めたわけじゃないのだけど……。
あと、どういうわけか二人きりの時にアルディリアが好きなゲームの技名を私の前で叫んでくれた。
彼の声でその技名を聞けたのは嬉しかったが、何で彼がそれを知っていて、叫んでくれたのかはわからなかった。
そして私はそれ以来、二杯以上の飲酒を禁じられた。
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