気付いたら、豪傑系悪役令嬢になっていた SE
七十話 ビッテンフェルト家族会議
ビッテンフェルト家、父の書斎。
そこには父上と私、そして母上とアードラーがいた。
私の目の前には父上がいて、険しい顔で私を睨んでいる。
きっと、私のしでかした事に怒っているのだろう。
王子に不敬を働き、アードラーを連れ出した私は、一度ビッテンフェルト家へ立ち寄った。
そのまま最低限の荷物を持ち出し、両親に挨拶してから次にはフェルディウス家へアードラーの荷物を取りに行こうと思ったのだが……。
自室で自分の荷物(生活用品の入ったカバンと変身セット)を用意して外に出ると、父上が廊下で仁王立ちして待っていた。
多分、家の召使いの誰かが父上に報告したのだろう。
「たいした大荷物だが、どこへ行くつもりだ?」
「ちょっと国外に」
素直に答えたら、書斎に連行された。
書斎には母も呼ばれ、そこで洗いざらい事の顛末を話す事になった。
私が話し終えると、父上は自分の顎を撫でながら小さく唸った。
難しい顔をしている。
「ごめんなさい、父上。こんな事になってしまって……」
「それは気にするな。前にも言ったはずだぞ。たとえ王族と喧嘩する事になっても構わんと。むしろ許せんのは、そのまま一人で出て行こうとした事だ」
「はい、解かってます。でも、謝りたかったんです」
私が言うと、父上はくしゃくしゃと私の頭を撫でた。
「謝る事でもない。人への情で無茶をしでかす所はきっと私譲りだろうからな」
「まったくですね」
母上が賛同する。
そうだね。
父上は母上と結婚するために、隣国の王を追い掛け回した人だからね。
その性分が、私《クロエ》の体に受け継がれていたとしてもおかしくない。
でも私の場合は、父上と違って悪い方向にその性分が発揮されてしまった。
「父上、お願いがあります」
「何だ?」
「私を勘当してください。そうすれば、ビッテンフェルト家への処分も少しは――」
言っている途中で、父上の拳骨が私の頭頂で炸裂した。
超痛い……。
「やっぱりお前は何も解かっとらんじゃないか」
「でも、このままじゃ、家が取り潰されるかも……」
何せ、王子にあんな暴力行為と不敬をやらかしたのだ。
追放処分を受けたアードラーならともかく、こっちは下手をすれば一家全員の処刑すらあり得る。
だからその前に、私をビッテンフェルト家と関係のない人間にしてほしかったのだ。
そうすれば、家の処分も少しは緩和されるのではないかと考えた。
だが、父上はそんな私の考えが気に入らないらしい。
「お前が出て行くと言うのなら、私達も共に行く」
確かに言っていたけれど……。
私としては、それでも二人に迷惑はかけたくなかったんだろう。
そんな私の心情を察してか、父上は小さく笑う。
「言ったはずだ。どこでだってやっていける。どこへ行こうとも、お前達に不自由をさせるつもりはない」
父上は力強い口調で言い切った。
「私も、二人のいない人生なんて考えられませんからね。どこへだって一緒ですよ」
母上も優しく笑みを浮かべながら言う。
父上……。
母上……。
ごめんなさい。
大好きだよ。
パパとママ、だーい好きだよ。
「いい家族ね……」
アードラーがそんな呟きを漏らした。
「フェルディウス嬢。あなたも、それで良いですか?」
「え、はい?」
父上がアードラーに話を向ける。
「国外追放を言い渡されたのなら、私達家族と同行した方が都合は良いと思うのですが?」
「それは……そうかもしれません。でも、私がご一緒しても良いのですか?」
「家族が一人増えるぐらい、何の問題もないでしょう。その程度なら、私の手が届く範囲。守る事など容易い事です」
「……ありがとう、ございます。よろしくお願いします」
アードラーは深く頭を下げ、礼を言った。
「なら、これからは態度を改めさせてもらうが構わないか?」
「構いません。私はもう、公爵家ではありませんから」
「しかし、クロエ。派手にやらかしたものだな」
「まったくです。脛を蹴り上げて髪を引っ掴んだ時もそうですけど、大勢の前であんな大声で王子を罵るんですから」
父上がやや楽しげに呟き、アードラーが賛同する。
「そりゃあ「人を褒めるときは大きな声で、悪口を言うときにはより大きな声で」がビッテンフェルト家の家訓だからね」
「うちにそんな物は無い」
父上にきっぱりと否定される。
あれ? なかったっけなぁ……。
あったと思うんだけどなぁ……。
そこには父上と私、そして母上とアードラーがいた。
私の目の前には父上がいて、険しい顔で私を睨んでいる。
きっと、私のしでかした事に怒っているのだろう。
王子に不敬を働き、アードラーを連れ出した私は、一度ビッテンフェルト家へ立ち寄った。
そのまま最低限の荷物を持ち出し、両親に挨拶してから次にはフェルディウス家へアードラーの荷物を取りに行こうと思ったのだが……。
自室で自分の荷物(生活用品の入ったカバンと変身セット)を用意して外に出ると、父上が廊下で仁王立ちして待っていた。
多分、家の召使いの誰かが父上に報告したのだろう。
「たいした大荷物だが、どこへ行くつもりだ?」
「ちょっと国外に」
素直に答えたら、書斎に連行された。
書斎には母も呼ばれ、そこで洗いざらい事の顛末を話す事になった。
私が話し終えると、父上は自分の顎を撫でながら小さく唸った。
難しい顔をしている。
「ごめんなさい、父上。こんな事になってしまって……」
「それは気にするな。前にも言ったはずだぞ。たとえ王族と喧嘩する事になっても構わんと。むしろ許せんのは、そのまま一人で出て行こうとした事だ」
「はい、解かってます。でも、謝りたかったんです」
私が言うと、父上はくしゃくしゃと私の頭を撫でた。
「謝る事でもない。人への情で無茶をしでかす所はきっと私譲りだろうからな」
「まったくですね」
母上が賛同する。
そうだね。
父上は母上と結婚するために、隣国の王を追い掛け回した人だからね。
その性分が、私《クロエ》の体に受け継がれていたとしてもおかしくない。
でも私の場合は、父上と違って悪い方向にその性分が発揮されてしまった。
「父上、お願いがあります」
「何だ?」
「私を勘当してください。そうすれば、ビッテンフェルト家への処分も少しは――」
言っている途中で、父上の拳骨が私の頭頂で炸裂した。
超痛い……。
「やっぱりお前は何も解かっとらんじゃないか」
「でも、このままじゃ、家が取り潰されるかも……」
何せ、王子にあんな暴力行為と不敬をやらかしたのだ。
追放処分を受けたアードラーならともかく、こっちは下手をすれば一家全員の処刑すらあり得る。
だからその前に、私をビッテンフェルト家と関係のない人間にしてほしかったのだ。
そうすれば、家の処分も少しは緩和されるのではないかと考えた。
だが、父上はそんな私の考えが気に入らないらしい。
「お前が出て行くと言うのなら、私達も共に行く」
確かに言っていたけれど……。
私としては、それでも二人に迷惑はかけたくなかったんだろう。
そんな私の心情を察してか、父上は小さく笑う。
「言ったはずだ。どこでだってやっていける。どこへ行こうとも、お前達に不自由をさせるつもりはない」
父上は力強い口調で言い切った。
「私も、二人のいない人生なんて考えられませんからね。どこへだって一緒ですよ」
母上も優しく笑みを浮かべながら言う。
父上……。
母上……。
ごめんなさい。
大好きだよ。
パパとママ、だーい好きだよ。
「いい家族ね……」
アードラーがそんな呟きを漏らした。
「フェルディウス嬢。あなたも、それで良いですか?」
「え、はい?」
父上がアードラーに話を向ける。
「国外追放を言い渡されたのなら、私達家族と同行した方が都合は良いと思うのですが?」
「それは……そうかもしれません。でも、私がご一緒しても良いのですか?」
「家族が一人増えるぐらい、何の問題もないでしょう。その程度なら、私の手が届く範囲。守る事など容易い事です」
「……ありがとう、ございます。よろしくお願いします」
アードラーは深く頭を下げ、礼を言った。
「なら、これからは態度を改めさせてもらうが構わないか?」
「構いません。私はもう、公爵家ではありませんから」
「しかし、クロエ。派手にやらかしたものだな」
「まったくです。脛を蹴り上げて髪を引っ掴んだ時もそうですけど、大勢の前であんな大声で王子を罵るんですから」
父上がやや楽しげに呟き、アードラーが賛同する。
「そりゃあ「人を褒めるときは大きな声で、悪口を言うときにはより大きな声で」がビッテンフェルト家の家訓だからね」
「うちにそんな物は無い」
父上にきっぱりと否定される。
あれ? なかったっけなぁ……。
あったと思うんだけどなぁ……。
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