気付いたら、豪傑系悪役令嬢になっていた SE
閑話 必殺技を試してみた
その日の私は、庭で色々な必殺技を試行錯誤していた。
折角、ゲームのような技が自在に出せる世界に来たのだ。
私だって、私だけの新しい必殺技が欲しい。
236+Pとかのお手軽コマンドで出る、牽制用の飛び道具みたいな奴じゃなく、本当の意味で「必殺」と呼べる凄い技が欲しいのである。
というわけで、色々な漫画やゲームの技を参考に色々と試していたわけだ。
今は、少年漫画系の技を順当に試している最中だ。
とりあえず真っ先に思いついたのは、開いた花のように合わせた両手からビームを出す技。
次いで、空中から連続で魔力の火弾を乱れ撃ちしてみた。
標的は鍛錬用の丸太だったが、一応「やったか?」と言ってみる。
それから、関節を外して白色で痛みを和らげながら腕を伸ばしたり、手の平で回転する魔力球を作ってみたり、四十八の殺人技を使ってみたり、ギリギリ太るカレーセットを使ってみたりした。
で、その次に、石へ素早い二連撃を加えて粉々に粉砕する技を使ってみる事にした。
多分、あの漫画を読んだ人は誰もが真似したであろう技だ。
アーッ!
前世でも真似してみたが当然出来なかった。
だけど、普通に石を殴り潰せるこの体ならば不可能では無いかもしれない。
そう思って、チャレンジしてみたのだ。
しかし、普通に石が砕けるだけだった。
これでは普段と変わらない。
理屈では最初に衝撃を与え、次の一撃の衝撃で最初の衝撃とかち合わせて粉砕させる、という物だった。
今の体ならその衝撃という物を把握し、かち合わせる事はできるのだが、結果はこの通りだ。
多分、打撃による衝撃がそもそも弱すぎるからだ。
なら、普通の衝撃ではなく魔力の衝撃でやってみてはどうだろうか。
思い立ち、試してみる。
すると、石の中で衝撃同士がぶつかり合った瞬間、石が真っ二つに割れた。
どうやら、衝撃同士がぶつかった部分で爆発的な衝撃が生まれるためにこうなるようだ。
私の求めていた物と何か違うが、なかなか興味深い現象だ。
でも、よく考えてみるとこれは危険な技じゃないだろうか?
この現象が人体で起こった場合を想像して欲しい。
ひでぶである。
明治の剣客浪漫を追及したら、何故か世紀末になってしまったでござる。
確かに必殺技だが、ここまでの威力は要らねぇ。
オーバーキルだ。
私は何て技を生み出してしまったんだろうか……。
少し怖くなった私は、父上へ相談する事にした。
丸太で実演して見せる。
「という技を編み出してしまったんですけど……。どうしましょう?」
「なるほどなぁ。確かにたいした威力だ。だが、実戦に使えるかはわからないな」
「そうなのですか?」
「説明はできんぞ。魔力関係は苦手でな。あまり詳しくない。私より、お前の方が余程器用に使いこなせるくらいだしな」
「そういえばそうですね」
かなり自由自在な力だと思うんだけどね。
「人と物では魔力の効き目も違う。だから、実際にどうなるかわからん。私よりも、もっと魔力に詳しい人間へ訊ねてみたらどうだ? 使える技ならば、軍の戦術部が喜ぶだろうさ」
「はぁ、そうですか。じゃあ、詳しそうな人に聞いてみます」
学園の休み時間。
私はムルシエラ先輩に会いに行った。
私の知り合いの中で、一番魔法に詳しいのはムルシエラ先輩だ。
なので、先輩に聞くのが手っ取り早いと思った。
「そうですか……」
私が技の概要を説明すると、先輩は思案深げに呟いた。
そして私の顔を見ると、一言答える。
「では、一度その技を私に使ってみてください」
「ヴェッ! 本気ですか?」
「ええ。多分、大丈夫だと思いますから」
本当だろうか?
魔術に詳しい先輩の言う事だから大丈夫なのかもしれないけれど。
使った結果「そうでしょう…これ!?」とか言って体中から血が噴き出したら嫌だしなぁ。
そんな心配をよそに、先輩は落ち着いた様子で私の前に立った。
少し懐疑的な気持ちはあったが、私は先輩の言う通り技を使う事にした。
先輩の体に触れて、魔力波を二回放つ。
これで衝撃がぶつかり合い、強い衝撃を発生させる。
はずだったのだが……。
「あれ?」
触れていた手から、先輩の中で起こった事が伝わってくる。
放たれた魔力は先輩の体の中を走ると、ぶつかり合う寸前で消えた。
「どういう事ですか?」
私が問うと、先輩は説明してくれる。
「魔力という物は他人が使った物でもある程度操る事ができる力なのですよ。つまり、私はあなたが伝えた魔力を体内で操り、無効化したのです」
「そうだったのですか」
「本来これは高等技術なのですが、事が体内である場合は誰でも同じ事ができるでしょう」
なんだ、そうなのか。
そこまでたいした技でもなかったのか。
「じゃあ、対人戦ではあんまり役に立たない技って事ですか」
「そうとも言えませんよ。力量に差があれば、強引に体内の魔力を操る事もできるでしょうから」
なるほど。
強敵《とも》が相手の時はあまり効かないが、モヒカンが相手ならよく効く感じか。
「これはあなたが考えたのですか?」
「はい」
本当は漫画の技が元ですけど。
「あなたは独創的な考え方ができるのですね」
褒められているんだろうか?
と思っていると、先輩はどこからか手帳を取り出して何やら書き始めた。
「何を書いているのですか?」
「面白い技だったので、書き留めているのですよ。これでも我が家は、魔術指南も務めさせていただいている家。新しい魔術は修めておきませんと」
先輩は勉強熱心なんだな。
ヴェルデイド家だもんね。
こうして私は対物に効果ばつぐんの必殺技を手に入れた。
物に対してだけなので「必殺」ではないんだけどね。
折角、ゲームのような技が自在に出せる世界に来たのだ。
私だって、私だけの新しい必殺技が欲しい。
236+Pとかのお手軽コマンドで出る、牽制用の飛び道具みたいな奴じゃなく、本当の意味で「必殺」と呼べる凄い技が欲しいのである。
というわけで、色々な漫画やゲームの技を参考に色々と試していたわけだ。
今は、少年漫画系の技を順当に試している最中だ。
とりあえず真っ先に思いついたのは、開いた花のように合わせた両手からビームを出す技。
次いで、空中から連続で魔力の火弾を乱れ撃ちしてみた。
標的は鍛錬用の丸太だったが、一応「やったか?」と言ってみる。
それから、関節を外して白色で痛みを和らげながら腕を伸ばしたり、手の平で回転する魔力球を作ってみたり、四十八の殺人技を使ってみたり、ギリギリ太るカレーセットを使ってみたりした。
で、その次に、石へ素早い二連撃を加えて粉々に粉砕する技を使ってみる事にした。
多分、あの漫画を読んだ人は誰もが真似したであろう技だ。
アーッ!
前世でも真似してみたが当然出来なかった。
だけど、普通に石を殴り潰せるこの体ならば不可能では無いかもしれない。
そう思って、チャレンジしてみたのだ。
しかし、普通に石が砕けるだけだった。
これでは普段と変わらない。
理屈では最初に衝撃を与え、次の一撃の衝撃で最初の衝撃とかち合わせて粉砕させる、という物だった。
今の体ならその衝撃という物を把握し、かち合わせる事はできるのだが、結果はこの通りだ。
多分、打撃による衝撃がそもそも弱すぎるからだ。
なら、普通の衝撃ではなく魔力の衝撃でやってみてはどうだろうか。
思い立ち、試してみる。
すると、石の中で衝撃同士がぶつかり合った瞬間、石が真っ二つに割れた。
どうやら、衝撃同士がぶつかった部分で爆発的な衝撃が生まれるためにこうなるようだ。
私の求めていた物と何か違うが、なかなか興味深い現象だ。
でも、よく考えてみるとこれは危険な技じゃないだろうか?
この現象が人体で起こった場合を想像して欲しい。
ひでぶである。
明治の剣客浪漫を追及したら、何故か世紀末になってしまったでござる。
確かに必殺技だが、ここまでの威力は要らねぇ。
オーバーキルだ。
私は何て技を生み出してしまったんだろうか……。
少し怖くなった私は、父上へ相談する事にした。
丸太で実演して見せる。
「という技を編み出してしまったんですけど……。どうしましょう?」
「なるほどなぁ。確かにたいした威力だ。だが、実戦に使えるかはわからないな」
「そうなのですか?」
「説明はできんぞ。魔力関係は苦手でな。あまり詳しくない。私より、お前の方が余程器用に使いこなせるくらいだしな」
「そういえばそうですね」
かなり自由自在な力だと思うんだけどね。
「人と物では魔力の効き目も違う。だから、実際にどうなるかわからん。私よりも、もっと魔力に詳しい人間へ訊ねてみたらどうだ? 使える技ならば、軍の戦術部が喜ぶだろうさ」
「はぁ、そうですか。じゃあ、詳しそうな人に聞いてみます」
学園の休み時間。
私はムルシエラ先輩に会いに行った。
私の知り合いの中で、一番魔法に詳しいのはムルシエラ先輩だ。
なので、先輩に聞くのが手っ取り早いと思った。
「そうですか……」
私が技の概要を説明すると、先輩は思案深げに呟いた。
そして私の顔を見ると、一言答える。
「では、一度その技を私に使ってみてください」
「ヴェッ! 本気ですか?」
「ええ。多分、大丈夫だと思いますから」
本当だろうか?
魔術に詳しい先輩の言う事だから大丈夫なのかもしれないけれど。
使った結果「そうでしょう…これ!?」とか言って体中から血が噴き出したら嫌だしなぁ。
そんな心配をよそに、先輩は落ち着いた様子で私の前に立った。
少し懐疑的な気持ちはあったが、私は先輩の言う通り技を使う事にした。
先輩の体に触れて、魔力波を二回放つ。
これで衝撃がぶつかり合い、強い衝撃を発生させる。
はずだったのだが……。
「あれ?」
触れていた手から、先輩の中で起こった事が伝わってくる。
放たれた魔力は先輩の体の中を走ると、ぶつかり合う寸前で消えた。
「どういう事ですか?」
私が問うと、先輩は説明してくれる。
「魔力という物は他人が使った物でもある程度操る事ができる力なのですよ。つまり、私はあなたが伝えた魔力を体内で操り、無効化したのです」
「そうだったのですか」
「本来これは高等技術なのですが、事が体内である場合は誰でも同じ事ができるでしょう」
なんだ、そうなのか。
そこまでたいした技でもなかったのか。
「じゃあ、対人戦ではあんまり役に立たない技って事ですか」
「そうとも言えませんよ。力量に差があれば、強引に体内の魔力を操る事もできるでしょうから」
なるほど。
強敵《とも》が相手の時はあまり効かないが、モヒカンが相手ならよく効く感じか。
「これはあなたが考えたのですか?」
「はい」
本当は漫画の技が元ですけど。
「あなたは独創的な考え方ができるのですね」
褒められているんだろうか?
と思っていると、先輩はどこからか手帳を取り出して何やら書き始めた。
「何を書いているのですか?」
「面白い技だったので、書き留めているのですよ。これでも我が家は、魔術指南も務めさせていただいている家。新しい魔術は修めておきませんと」
先輩は勉強熱心なんだな。
ヴェルデイド家だもんね。
こうして私は対物に効果ばつぐんの必殺技を手に入れた。
物に対してだけなので「必殺」ではないんだけどね。
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