気付いたら、豪傑系悪役令嬢になっていた SE
二十四話 クロエ式知識チート限定解除
マリノーと先生の関係を取り持つ事になった私は、その具体的な方法を思案する事にした。
正直に言って、私には色恋なんてものはわからない。
私の知っているイロコイなど、プリスキンぐらいのものである。
なので経験からなるアドバイスなど持ち合わせておらず、具体的な方法なんて物は早々に思いつくものではなかった。
そこで私が参考にしようと思ったのは、ゲームの知識だ。
私と先生は、マリノーが誤解してしまう程度には仲がいい。
だからといって、私が「マリノーと付き合ってよ」なんてストレートに言った所で聞き入れられないだろう。
というか、どれだけ仲の良い相手から急に誰かと付き合えと言われても、普通は聞き入れないな。
そんな方法では成功しない。
だから私は、成功した事例から解決の糸口を探ろうと思ったのだ。
ゲームでの彼女は先生の心を射止めているので、それを参考にするつもりである。
まず、先生のルートから参考にする。
カナリオとぶつかり合い、先生を射止めたケースだ。
と言っても、これは参考にならない。
何故なら、ミニゲームでの勝敗以外でシナリオに変化があるわけではないからだ。
順調に先生と仲良くなっていたはずなのに、気付いたら最後に先生とマリノーがくっついていた、という物になっている。
彼女と先生がどういう経緯でくっついてしまったのかは明かされていない。
あくまでもバッドエンドだ。
ゲームのエンディングなんてそんなものだろう。
もう一つは、別の人間のシナリオで後日譚的な描写をされた時の物。
これはリオン王子のシナリオだ。
ゲームから数年後、学園卒業を待ってカナリオと王子が結婚式を挙げる。
その時、式にはグラン一家が出席している。
ティグリスとマリノー、それからマリノーに手を引かれるアルエットちゃんだ。
その時のスチルで見る限り、三人は良好な関係を築いているようだった。
ちなみに、ゲームの攻略対象とライバル令嬢はだいたいスチルに描かれているが、アードラーだけいない。
この時にはもう、追放されているからだ。
しかし、やっぱりこれも参考にならない。
プレイヤーからしたら、気付けば二人が夫婦になっていたわけである。
その間にあった事などわかるはずがない。
そこまで考えて、どうやらゲームの知識から二人の仲を取り持つ方法のヒントは得られない事に気付いた。
あれ? 実は私、思った以上に頼りにならない?
もしかして私、全然マリノーの恋を成就させる力がないのではないか?
と、残念な事実に気付いてしまった。
でも約束だからなぁ。
これは知識に頼るのではなくて、地道に情報を集めて解決策を模索する以外に方法はないかな。
その後に、改めて傾向と対策を考えよう。
私は勉強が嫌いだが、傾向と対策を考える事に頭を使うのは大好きだ。
格闘ゲームに関する事ならなお良い。
「何を考えているの?」
声をかけられて、私は思考の世界から引き戻された。
気付けば、先ほどまで行われてはずの授業が終わっていた。
タイムリープかもしれない。
「アードラー」
アードラーが前の席の机に座って、私の顔を覗き込んでいた。
彼女がいるという事は、今は休み時間なのだろう。
しかし、私の来客はいつも私の前の席に座るので、その席の持ち主がいつも気を使って休み時間は外へ行くようになってしまったんだよね。
その最有力たるアードラーが公爵家だから文句も言えないだろうし、譲らざるを得ないのだろうけど。
今度、お詫びに菓子折りでも渡そうかな。
「私が会いに来ているのだから、私の相手をしなさいよ」
「ああ、ごめん。ちょっと考え事していた」
「それは見ればわかるわよ。で、何考えていたのかしら?」
「それは友達の秘密だから言えないんだ。ごめんね」
「友達?」
アードラーはムッと眉根を寄せる。
「誰?」
「マリノー」
「フカールエル家の子? ふぅん」
アードラーは黙り込む。
「まぁいいわ。それより、そんなにずっと考え込んでちゃ授業も頭に入っていないんじゃないかしら?」
「まぁ、さっきの授業はそうだね。ノートも取ってないや」
授業中に考え出して、アードラーが来た事にも気付かなかったわけだし。
ちなみに前の授業は計算の授業だ。
「じゃあ、私が教えてあげましょうか?」
目をそらしながら、アードラーが提案する。
ちょっと顔が赤い。
「ノートを貸してもらうより、誰かに教えてもらった方がわかりやすいでしょ?」
「計算の授業は得意だから、別にいいや」
けれど、私はそれを断った。
私は基本的に勉強できない方だ。
だけど、この計算の授業だけは別だ。
だって、この学園での数の授業は数学じゃなくて計算なんだよ。
小学生で習う算数と同じようなものだ。
この国における数学というものは専門知識であり、設計や研究などでしか使われないらしい。
学園に通う貴族は領地経営に関する知識や魔法の使用などを学びに来ているため、数字の授業はこの程度でいいようだ。
授業が進んで難しくなっていっても、それは数の単位が増えていく程度であんまり変わらない。
歴史や国語などの授業はあんまり頭に入らないけれど、計算だけはサボってもいいくらいに理解できている。
「そう……そうなの。ならいいわ。後悔しなければいいけれどね」
辛辣な言葉を残して、アードラーはぷいと踵を返した。
そのまま教室を出て行く。
勇気を出して誘ってみたのに、断られた事が恥ずかしくてついカッとなって憎まれ口をたたいてしまった。って所だろうか。
悪い事をしたな。
アードラーの事だ。
あの後、「何であんな事言っちゃったんだろう」ってなるんだろうな。
彼女はこれまでも、少しでも仲良くなった相手にはあんな態度だったんだろうか?
だから友人ができなくて、いつも一人だったんだろうか?
ゲーム内では、シナリオが違っても別のルートのライバル令嬢が出てくる事があった。
たとえば私は、マリノーの料理対決の審査員として出ていたりする。
けれど、アードラーが他の攻略対象のシナリオに出る事はなかった。
それって、やっぱりそういう事なんだろうか?
彼女はいつも孤独だ。
まぁでも、もう一人にはさせないけどね。
正直に言って、私には色恋なんてものはわからない。
私の知っているイロコイなど、プリスキンぐらいのものである。
なので経験からなるアドバイスなど持ち合わせておらず、具体的な方法なんて物は早々に思いつくものではなかった。
そこで私が参考にしようと思ったのは、ゲームの知識だ。
私と先生は、マリノーが誤解してしまう程度には仲がいい。
だからといって、私が「マリノーと付き合ってよ」なんてストレートに言った所で聞き入れられないだろう。
というか、どれだけ仲の良い相手から急に誰かと付き合えと言われても、普通は聞き入れないな。
そんな方法では成功しない。
だから私は、成功した事例から解決の糸口を探ろうと思ったのだ。
ゲームでの彼女は先生の心を射止めているので、それを参考にするつもりである。
まず、先生のルートから参考にする。
カナリオとぶつかり合い、先生を射止めたケースだ。
と言っても、これは参考にならない。
何故なら、ミニゲームでの勝敗以外でシナリオに変化があるわけではないからだ。
順調に先生と仲良くなっていたはずなのに、気付いたら最後に先生とマリノーがくっついていた、という物になっている。
彼女と先生がどういう経緯でくっついてしまったのかは明かされていない。
あくまでもバッドエンドだ。
ゲームのエンディングなんてそんなものだろう。
もう一つは、別の人間のシナリオで後日譚的な描写をされた時の物。
これはリオン王子のシナリオだ。
ゲームから数年後、学園卒業を待ってカナリオと王子が結婚式を挙げる。
その時、式にはグラン一家が出席している。
ティグリスとマリノー、それからマリノーに手を引かれるアルエットちゃんだ。
その時のスチルで見る限り、三人は良好な関係を築いているようだった。
ちなみに、ゲームの攻略対象とライバル令嬢はだいたいスチルに描かれているが、アードラーだけいない。
この時にはもう、追放されているからだ。
しかし、やっぱりこれも参考にならない。
プレイヤーからしたら、気付けば二人が夫婦になっていたわけである。
その間にあった事などわかるはずがない。
そこまで考えて、どうやらゲームの知識から二人の仲を取り持つ方法のヒントは得られない事に気付いた。
あれ? 実は私、思った以上に頼りにならない?
もしかして私、全然マリノーの恋を成就させる力がないのではないか?
と、残念な事実に気付いてしまった。
でも約束だからなぁ。
これは知識に頼るのではなくて、地道に情報を集めて解決策を模索する以外に方法はないかな。
その後に、改めて傾向と対策を考えよう。
私は勉強が嫌いだが、傾向と対策を考える事に頭を使うのは大好きだ。
格闘ゲームに関する事ならなお良い。
「何を考えているの?」
声をかけられて、私は思考の世界から引き戻された。
気付けば、先ほどまで行われてはずの授業が終わっていた。
タイムリープかもしれない。
「アードラー」
アードラーが前の席の机に座って、私の顔を覗き込んでいた。
彼女がいるという事は、今は休み時間なのだろう。
しかし、私の来客はいつも私の前の席に座るので、その席の持ち主がいつも気を使って休み時間は外へ行くようになってしまったんだよね。
その最有力たるアードラーが公爵家だから文句も言えないだろうし、譲らざるを得ないのだろうけど。
今度、お詫びに菓子折りでも渡そうかな。
「私が会いに来ているのだから、私の相手をしなさいよ」
「ああ、ごめん。ちょっと考え事していた」
「それは見ればわかるわよ。で、何考えていたのかしら?」
「それは友達の秘密だから言えないんだ。ごめんね」
「友達?」
アードラーはムッと眉根を寄せる。
「誰?」
「マリノー」
「フカールエル家の子? ふぅん」
アードラーは黙り込む。
「まぁいいわ。それより、そんなにずっと考え込んでちゃ授業も頭に入っていないんじゃないかしら?」
「まぁ、さっきの授業はそうだね。ノートも取ってないや」
授業中に考え出して、アードラーが来た事にも気付かなかったわけだし。
ちなみに前の授業は計算の授業だ。
「じゃあ、私が教えてあげましょうか?」
目をそらしながら、アードラーが提案する。
ちょっと顔が赤い。
「ノートを貸してもらうより、誰かに教えてもらった方がわかりやすいでしょ?」
「計算の授業は得意だから、別にいいや」
けれど、私はそれを断った。
私は基本的に勉強できない方だ。
だけど、この計算の授業だけは別だ。
だって、この学園での数の授業は数学じゃなくて計算なんだよ。
小学生で習う算数と同じようなものだ。
この国における数学というものは専門知識であり、設計や研究などでしか使われないらしい。
学園に通う貴族は領地経営に関する知識や魔法の使用などを学びに来ているため、数字の授業はこの程度でいいようだ。
授業が進んで難しくなっていっても、それは数の単位が増えていく程度であんまり変わらない。
歴史や国語などの授業はあんまり頭に入らないけれど、計算だけはサボってもいいくらいに理解できている。
「そう……そうなの。ならいいわ。後悔しなければいいけれどね」
辛辣な言葉を残して、アードラーはぷいと踵を返した。
そのまま教室を出て行く。
勇気を出して誘ってみたのに、断られた事が恥ずかしくてついカッとなって憎まれ口をたたいてしまった。って所だろうか。
悪い事をしたな。
アードラーの事だ。
あの後、「何であんな事言っちゃったんだろう」ってなるんだろうな。
彼女はこれまでも、少しでも仲良くなった相手にはあんな態度だったんだろうか?
だから友人ができなくて、いつも一人だったんだろうか?
ゲーム内では、シナリオが違っても別のルートのライバル令嬢が出てくる事があった。
たとえば私は、マリノーの料理対決の審査員として出ていたりする。
けれど、アードラーが他の攻略対象のシナリオに出る事はなかった。
それって、やっぱりそういう事なんだろうか?
彼女はいつも孤独だ。
まぁでも、もう一人にはさせないけどね。
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