気付いたら、豪傑系悪役令嬢になっていた SE
十五話 元気にしてるかな……
調理科の授業は、最初にこれから行われる調理の説明をして、その後に実技という順番で行われる。
今日はクリームシチューだ。
前もってルウを作っておけば具材を煮込むだけなので、意外と戦地で重宝する料理らしい。
ただ今回は、普通に固形じゃないルウを作って普通にシチューを作るだけだ。
固形ルウは数日前に行われた一時間授業の時に作ったので、今回も作る必要は無いとの事だ。
生徒の健康面に配慮して、前のルウは各自早めに使うよう指示された。
食中毒なんて問題だもんね。みんな権力者の子供だから余計に怖いよ。
ちなみに、私が作ったルウは母上に渡してその日の食卓に出してもらった。
可愛いワイフとドーターの合作料理に、ダディは大喜びしていた。
調理は、五人一組のグループで行われる。
私の班は、私、アルディリア、アードラー、カナリオ、マリノーの五人だ。
カナリオとマリノー?
そりゃいるよ。
だってカナリオは作品の都合上、攻略対象と接する科目は全部取ってるし、マリノーの得意分野は料理だもん。
だからマリノーがライバルとなった時、ミニゲームは料理対決になる。
肉、野菜、魚、調味料に分けられた各種の牌を合わせて料理(役)を作り、その点数によって勝敗を決める料理対決だ。
どう見てもドンジャラだけどな!
「材料、取ってきましょうか?」
カナリオが申し出る。材料と鍋は各自、前に行って先生から貰ってくる事になっていた。
水と火は魔法で出す。この辺りは実に魔法学園らしい。
あとカナリオ、もしかしてアードラーから離れたいだけなんじゃない?
明らかに警戒してるよね。
互いに口聞かないし。
「あ、だったら私も」
マリノーが申し出る。
「いえ、二人は調理の準備をしていてください。多分重いでしょうから私が一人で行ってきます」
さらに私が申し出る。こういう時こそ、腕力家としての力を行使せねば。
それに、思う所があってあまりカナリオとティグリス先生を接近させたくない。
「でも……」
「あなた方二人の細腕では、おちおち任せてもいられません。途中で落とされては困ります」
ああ、またちょっと素っ気無いし。しかもマリノーまで巻き込んじゃった。
クロエ静まれぇ……。
「そうですか……。じゃあ、お願いします。ビッテンフェルト様」
「そうですね……」
ちょっとしょんぼりする二人。
ごめんね。
前まで行って先生に声をかける。
「四代目」
「誰の話だ?」
貴族としては一代目ですものね。
返事してくれませんよね。
「材料と鍋をいただきにあがりやした」
「ビッテンフェルト。何故お前は俺に話しかける時にちょっとおかしくなるんだ? 友人にはもっとまともに話しているだろう」
友好の印ですよ。
材料を持って、グループに戻る。
「じゃあ、作ろうか」
エプロンを着けたアルディリアが言う。
アルディリア、すっごいエプロン似合うね。
女子力が滲み出てるよ。
「湯は沸かしておいたわ」
エプロンを着けたアードラーが言う。
アードラー、すっごいエプロン似合わないね。
ドリルとドレスがゴージャス過ぎて、学園支給の質素なエプロンがまったく馴染んでないよ。
五人で食材を調理し始める。
「ビッテンフェルト様はお休みください」
「あとは私共にお任せください」
「そうだね。クロエは材料を持ってきてくれたからね。休んでてよ」
「そうね。クロエは休んでいなさいよ」
何でお前ら、私を料理から遠ざけようとする。
イメージ的に解かるけど、私が料理できないと思っているな?
できるよ、料理。
炒飯ぐらいなら。調味料がないけど。
結局、色々やんわりと断られて、私は料理に参加できなかった。
しばらくして、先生が各グループの様子を見回りに来た。
「お湯を切る」
「シチューの湯を切るな! ダシが勿体無いだろう。あと、明らかに俺の方を見て言ったな? 何か意味があるのか?」
「いえ、特にありませんけど」
釈然としない様子で、先生は別のグループを見に行った。
それからしばらくして、無事にシチューは完成した。
完成した料理は、昼食になる予定だ。
だから調理実習は昼休み前と決まっているのだ。
「じゃあ、これで実習は終わりだ。各自、昼休みに入っていいぞ」
先生の言葉を合図に、私達も昼食を取る事にした。
シチューを一口啜る。
ああ、美味しい。
五人の力を合わせた料理だと思うと余計に美味しい。
私?
材料を運ぶ時に力使ったろ?
本当に美味しくて、シチューがあっと言う間に無くなった。
おかわりする。
好きだな、こういうの。
おかわりする。
はふはふ……。
おかわりする。
「ちょっと、おかわりしようとしたらシチューがないのだけど?」
「嘘だろぉ、アードラー。だって、さっきは確かにあったんだぜ。あら、本当。本当にないわ。ミステリーね」
「クロエが食べちゃったんでしょうが!」
ちょっと食べ過ぎた。
この体、燃費悪いんだよね。
どれだけ食べても満足できないし、すぐお腹が空になっちゃうんだ。
生まれ変わる前は、家族でラーメンを食べに行った時、すぐにお腹がいっぱいになってお父さんに食べてもらってたんだけどね。
そのせいでお父さん、太っちゃったんだよね。
ごめんね、お父さん。
今も、元気にしてるのかな?
今日はクリームシチューだ。
前もってルウを作っておけば具材を煮込むだけなので、意外と戦地で重宝する料理らしい。
ただ今回は、普通に固形じゃないルウを作って普通にシチューを作るだけだ。
固形ルウは数日前に行われた一時間授業の時に作ったので、今回も作る必要は無いとの事だ。
生徒の健康面に配慮して、前のルウは各自早めに使うよう指示された。
食中毒なんて問題だもんね。みんな権力者の子供だから余計に怖いよ。
ちなみに、私が作ったルウは母上に渡してその日の食卓に出してもらった。
可愛いワイフとドーターの合作料理に、ダディは大喜びしていた。
調理は、五人一組のグループで行われる。
私の班は、私、アルディリア、アードラー、カナリオ、マリノーの五人だ。
カナリオとマリノー?
そりゃいるよ。
だってカナリオは作品の都合上、攻略対象と接する科目は全部取ってるし、マリノーの得意分野は料理だもん。
だからマリノーがライバルとなった時、ミニゲームは料理対決になる。
肉、野菜、魚、調味料に分けられた各種の牌を合わせて料理(役)を作り、その点数によって勝敗を決める料理対決だ。
どう見てもドンジャラだけどな!
「材料、取ってきましょうか?」
カナリオが申し出る。材料と鍋は各自、前に行って先生から貰ってくる事になっていた。
水と火は魔法で出す。この辺りは実に魔法学園らしい。
あとカナリオ、もしかしてアードラーから離れたいだけなんじゃない?
明らかに警戒してるよね。
互いに口聞かないし。
「あ、だったら私も」
マリノーが申し出る。
「いえ、二人は調理の準備をしていてください。多分重いでしょうから私が一人で行ってきます」
さらに私が申し出る。こういう時こそ、腕力家としての力を行使せねば。
それに、思う所があってあまりカナリオとティグリス先生を接近させたくない。
「でも……」
「あなた方二人の細腕では、おちおち任せてもいられません。途中で落とされては困ります」
ああ、またちょっと素っ気無いし。しかもマリノーまで巻き込んじゃった。
クロエ静まれぇ……。
「そうですか……。じゃあ、お願いします。ビッテンフェルト様」
「そうですね……」
ちょっとしょんぼりする二人。
ごめんね。
前まで行って先生に声をかける。
「四代目」
「誰の話だ?」
貴族としては一代目ですものね。
返事してくれませんよね。
「材料と鍋をいただきにあがりやした」
「ビッテンフェルト。何故お前は俺に話しかける時にちょっとおかしくなるんだ? 友人にはもっとまともに話しているだろう」
友好の印ですよ。
材料を持って、グループに戻る。
「じゃあ、作ろうか」
エプロンを着けたアルディリアが言う。
アルディリア、すっごいエプロン似合うね。
女子力が滲み出てるよ。
「湯は沸かしておいたわ」
エプロンを着けたアードラーが言う。
アードラー、すっごいエプロン似合わないね。
ドリルとドレスがゴージャス過ぎて、学園支給の質素なエプロンがまったく馴染んでないよ。
五人で食材を調理し始める。
「ビッテンフェルト様はお休みください」
「あとは私共にお任せください」
「そうだね。クロエは材料を持ってきてくれたからね。休んでてよ」
「そうね。クロエは休んでいなさいよ」
何でお前ら、私を料理から遠ざけようとする。
イメージ的に解かるけど、私が料理できないと思っているな?
できるよ、料理。
炒飯ぐらいなら。調味料がないけど。
結局、色々やんわりと断られて、私は料理に参加できなかった。
しばらくして、先生が各グループの様子を見回りに来た。
「お湯を切る」
「シチューの湯を切るな! ダシが勿体無いだろう。あと、明らかに俺の方を見て言ったな? 何か意味があるのか?」
「いえ、特にありませんけど」
釈然としない様子で、先生は別のグループを見に行った。
それからしばらくして、無事にシチューは完成した。
完成した料理は、昼食になる予定だ。
だから調理実習は昼休み前と決まっているのだ。
「じゃあ、これで実習は終わりだ。各自、昼休みに入っていいぞ」
先生の言葉を合図に、私達も昼食を取る事にした。
シチューを一口啜る。
ああ、美味しい。
五人の力を合わせた料理だと思うと余計に美味しい。
私?
材料を運ぶ時に力使ったろ?
本当に美味しくて、シチューがあっと言う間に無くなった。
おかわりする。
好きだな、こういうの。
おかわりする。
はふはふ……。
おかわりする。
「ちょっと、おかわりしようとしたらシチューがないのだけど?」
「嘘だろぉ、アードラー。だって、さっきは確かにあったんだぜ。あら、本当。本当にないわ。ミステリーね」
「クロエが食べちゃったんでしょうが!」
ちょっと食べ過ぎた。
この体、燃費悪いんだよね。
どれだけ食べても満足できないし、すぐお腹が空になっちゃうんだ。
生まれ変わる前は、家族でラーメンを食べに行った時、すぐにお腹がいっぱいになってお父さんに食べてもらってたんだけどね。
そのせいでお父さん、太っちゃったんだよね。
ごめんね、お父さん。
今も、元気にしてるのかな?
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