【第一部完結】超一流ヴィランの俺様だが貴様らがどうしてもというならヒーローになってやらんこともない!
第9話(4)叢雲の力
「そらっ!」
「ちっ!」
天ノ叢雲が鋭い踏み込みから剣を振るう。疾風迅雷は躱しきれず、左腕に傷を負う。
「今の程度の攻撃も躱せないなんて……鈍ったかい?」
「……」
「アマザの露骨な捨て台詞に対して、柄でもなく動揺しているってことかな?」
「う、うるさい!」
「動揺しているんだね」
「ぬっ……ドッポ!」
「ハッ……」
ジンライの指示を受け、ドッポが負傷箇所を治療する。
「くっ……」
「マタモオウキュウショチレベルデスガ……」
「構わん、動けばそれでいい、下がっていろ」
「カシコマリマシタ」
ドッポが下がるのをムラクモは黙って見つめる。
「……てっきり邪魔してくるかと思ったが」
「いいよ、別に、多少の回復くらい。ちょうど良いハンデみたいなものさ」
「ほう、大きく出たな、ムラクモ。まるで俺様が貴様に劣るとでも言いたげだ」
「言いたげじゃなくて、言いたいね」
「何だと?」
ジンライは顔をしかめる。
「実はジンライ、君のここ最近の……つまりこの地球に降り立ってからの最初の戦闘をモニタリングさせてもらっていたんだ」
「なっ 」
「同じNSPから生成されたパワードスーツの着用者として、君は一体どのような戦い方を見せてくれるのかと思ってね……しかし……」
「しかし?」
「まったくの期待外れの出来だったね……」
「ば、馬鹿な 」
「おや、不服そうだね?」
ムラクモが苦笑交じりに尋ねる。
「当然だ! 『銀河一のヴィラン』と呼ばれた俺様が着用したこのパワードスーツは非常に高い能力を備えている!」
「だから、その高い能力を全然引き出せていないんだよ」
「なっ……」
「悲しいかな、かっては『良きライバル』なんて呼ばれていた僕と君の間にも圧倒的な差がついてしまったようだね……」
ムラクモは俯きながら首を左右に振る。
「ふん、大した自信だな」
「試してみるかい?」
「貴様と戦うのは気が進まんが、帝国に仇なす存在ならば捨て置けんな」
「帝国から見切られかかっているというのに、まだ帝国に忠誠を誓うのかい?」
「黙れ! 『疾風』モード! 」
疾風迅雷の素早いパンチを天ノ叢雲はあっさり躱してみせる。
「スピードに乗った良いパンチだ……まさに疾風だね」
「か、躱した?」
「ただ、遅すぎて欠伸が出るかと思ったよ……」
「くっ! 『迅雷』モード!」
相手に接近していた疾風迅雷は鋭いかかと落としを繰り出した。
「……さっきのは多人数相手を想定したスピード特化モード、対して今のは一撃必殺に重点を置いたパワー特化モードと言ったところだね……」
「ば、馬鹿な、確実にこちらのキックが当たったはずだ……」
「受け流したんだよ……」
「受け流しただと? そんなことが……」
ジンライが戸惑う。ムラクモが剣に手を添える。
「そろそろこちらの番かな?」
「 」
ジンライが飛んで距離を取る。ムラクモが感心する。
「ほう、まだ勝負勘というのは衰えていないようだね」
「ノーマルフォームを抑えたくらいで調子に乗るなよ」
「うん?」
「知らんのか! 今の俺様には一つのフォームだけでなく複数の強力なフォームがある!」
「ほう……お手並み拝見といこうか」
「フォームチェンジ! 『バイオフォーム』!」
「色が薄緑色に変化した 」
「面食らっている暇はないぞ! 『狂犬』モード!」
四足歩行になった疾風迅雷が天ノ叢雲に襲い掛かる。
「なっ! ……って驚くと思ったかい?」
「何 」
「フォームチェンジ! 『バイオフォーム』! 『獅子』モード!」
「がはっ 」
疾風迅雷と同様にパワードスーツのカラーを変更した天ノ叢雲が四足歩行の姿勢になり、飛び掛かってきた疾風迅雷を跳ね飛ばした。横っ面を殴られた疾風迅雷は地面に転がる。
「狂犬ごときが獅子に勝てるはずもないよね……」
ノーマルフォームに戻った天ノ叢雲が疾風迅雷を見下ろす。
「き、貴様もフォームチェンジが可能に?」
「同じNSPから作り出されたパワードスーツだ。その辺りにも考えが及びそうなものだけど……まさか思考能力まで鈍っちゃったの?」
ムラクモが顎に手をやって首を傾げる。ジンライが立ち上がる。
「まだだ! 『メタルフォーム』! 『バーニングハンド』!」
「『メタルフォーム』!『フリージングハンド』!」
「炎を一瞬で凍らせた……!」
「火の用心はしっかりしないとね」
「なんの『ライトニングブレイド』!」
「『ブロウイングガン』!」
「がはっ……貴様、剣ではなく銃を……」
疾風迅雷は撃たれた右手を抑えてうずくまる。天ノ叢雲が銃を片手に笑う。
「ははっ、別に剣士を気取った覚えはないけど……このメタルフォームというのは様々なウェポンやマシンを駆使するのに長けたフォームだ。ある物を使わない手はないだろう」
「ちっ、『ジャイアントフォーム』!」
「『ジャイアントフォーム』!」
疾風迅雷と天ノ叢雲は大通公園の中央でともに数十メートルに巨大化する。
「喰らえ!」
疾風迅雷が巨大化させた木を片手に殴りかかる。
「なんとも野蛮な戦い方だね……」
天ノ叢雲が両手をかざすと、疾風迅雷の動きが止まり、苦しそうに呻く。
「! ぐっ……貴様、何を?」
「このジャイアントフォームはただ単純なパワーアップだけでなく、常識をはるかに超越した能力を発揮して戦うことが出来るんだよ……だから超能力を使ってみたよ。相手の動きを封じる念力というやつかな」
「ぐぐぐっ……ぐはっ!」
疾風迅雷はフォームを解除し、元の大きさに戻る。
「なるほど、そういう逃げ方もあるのか。それは勉強になったよ」
天ノ叢雲も元の大きさに戻る。ジンライは相手を睨みながら苦し気に呻く。
「そ、そのまま踏み潰してくるかと思ったぞ」
「そうやってしまうとちょっとつまらない。まあ、このフォームは燃費が悪いから多用したくないというのも本音だけどね」
「その余裕もここまでだ! 『カラフルフォーム』! 『ブルー』モード! ドッポ!」
「ハッ!」
ドッポがバズーカ砲に変形し、青色のスーツに身を包んだ疾風迅雷が両手でそれを持つ。
「カラフルフォーム専用のウェポンを喰らえ! 発射!」
凄まじい水の奔流が飛び出す。あまりの勢いに疾風迅雷が尻もちをつきそうになる。
「ジンライサマ、ダイジョウブデスカ?」
「思った以上の反動だったな……これで奴も吹っ飛んだか? ぐおっ 」
疾風迅雷は前方に倒れ込む。後方から攻撃を受けたからである。疾風迅雷は体勢を立て直して、振り返ると、金色のスーツを着た天ノ叢雲が立っていた。
「凄いバズーカだ、喰らったらやばかったね」
「き、貴様、それは『カラフルフォーム』か? な、なんだ、その色は?」
「ん? 見た通りに『ゴールド』モードだけど?」
「そんな色があるのか?」
「あるんだよ、誰も五色限定とは言っていないからね」
「そ、そう言われると確かに……」
「ちなみにこの色だと、第六感が引き出される……急な砲撃にも対応することが出来たよ」
「な、ならば、『クラシックフォーム』! 『ニンジャ』モード!」
「!」
忍者となった疾風迅雷が複数に分身し、天ノ叢雲に向かって、一斉に飛び掛かる。
「第六感でも分身は見極められんだろう!」
「それなら……こうするまでさ!」
「がはっ……」
「ざっと、こんなもんさ」
西部劇の登場人物のような姿になった天ノ叢雲が拳銃を連射し、忍者の分身集団を一人ずつ撃ち抜いてみせた。膝を打ち抜かれた疾風迅雷はその場にうずくまる。天ノ叢雲は銃口から出ている煙をふっと吹いた。
「そ、その姿は……?」
「『クラシックフォーム』、『ガンマン』モードさ。分身を見極めるのが難しいのならば、まとめて撃ってしまえば良い……」
「な、なるほどな……」
「さて、そろそろ終わりかな?」
「まだだ! 『マジカルフォーム』! 『テンペスタース』!」
「 」
疾風迅雷がステッキを振ると、嵐が巻き起こり、天ノ叢雲が上空に飛ばされる。
「ははっ! その勢いで飛ばされれば、着地もままなるまい! 」
「『マジカルフォーム』! 『メテオリーテース』!」
藍色のローブに身を包んだ天ノ叢雲が杖を振り下ろすと、いくつか隕石が発生し、疾風迅雷に向かって勢いよく落下していく。疾風迅雷は避けきれず、隕石を喰らってしまう。
「どはっ……」
「魔法というものにはまだ僕も慣れていないね……もっと大きな隕石も出せるはずだ……」
ムラクモがゆっくりと地上に降り立つ。
「ぐっ……」
「おっ、あの隕石を喰らっても無事とは、流石にタフだね」
「気に入らん……」
「え?」
「なんで貴様はローブで、俺様はこ、こんな恥ずかしい恰好なんだ 」
「そ、それはなんとも……製作に携わった者の趣味じゃない?」
「くっ……大二郎め、後で見ていろ……!」
「残念ながら後はないよ、ここで決まる」
「奇遇だな! 俺様もここらで決めようと思っていたのだ!」
「ボロボロの身体でよく言うよ……」
「黙れ! 『マンガフォーム』! 『アップ』モード!」
オレンジ色のスーツになった疾風迅雷は、一瞬で天ノ叢雲の背後に回る。
「 」
「もらった!」
「『コミックフォーム』! 『マーベラス』モード!」
「ぐはっ 」
強烈な重力がかかり、疾風迅雷の身体が地面にめり込む。
「マンガに対抗するなら、やはりコミックだね……」
「お、おのれ……」
疾風迅雷は抵抗する力を奪われ、仰向けに倒れ込む。天ノ叢雲が肩を抑えて呟く。
「このフォームも結構、エネルギーを食うね……今後の課題としよう。さて……」
「ぐぬ……」
「残念ながらここでお別れだ、ジンライ」
ノーマルフォームに戻ったムラクモはジンライに歩み寄り、剣を振り上げる。
「……」
「さよなら! 」
ムラクモは驚いた。自身の振り下ろした剣を3メートルほどの体長の持つロボットが受け止めていたからであり、その中心に女性が乗り込んでいたからである。
「大丈夫 ジンライ 」
「ま、舞か 」
思わぬ援軍の登場にジンライは驚きで目を見開く。
「ちっ!」
天ノ叢雲が鋭い踏み込みから剣を振るう。疾風迅雷は躱しきれず、左腕に傷を負う。
「今の程度の攻撃も躱せないなんて……鈍ったかい?」
「……」
「アマザの露骨な捨て台詞に対して、柄でもなく動揺しているってことかな?」
「う、うるさい!」
「動揺しているんだね」
「ぬっ……ドッポ!」
「ハッ……」
ジンライの指示を受け、ドッポが負傷箇所を治療する。
「くっ……」
「マタモオウキュウショチレベルデスガ……」
「構わん、動けばそれでいい、下がっていろ」
「カシコマリマシタ」
ドッポが下がるのをムラクモは黙って見つめる。
「……てっきり邪魔してくるかと思ったが」
「いいよ、別に、多少の回復くらい。ちょうど良いハンデみたいなものさ」
「ほう、大きく出たな、ムラクモ。まるで俺様が貴様に劣るとでも言いたげだ」
「言いたげじゃなくて、言いたいね」
「何だと?」
ジンライは顔をしかめる。
「実はジンライ、君のここ最近の……つまりこの地球に降り立ってからの最初の戦闘をモニタリングさせてもらっていたんだ」
「なっ 」
「同じNSPから生成されたパワードスーツの着用者として、君は一体どのような戦い方を見せてくれるのかと思ってね……しかし……」
「しかし?」
「まったくの期待外れの出来だったね……」
「ば、馬鹿な 」
「おや、不服そうだね?」
ムラクモが苦笑交じりに尋ねる。
「当然だ! 『銀河一のヴィラン』と呼ばれた俺様が着用したこのパワードスーツは非常に高い能力を備えている!」
「だから、その高い能力を全然引き出せていないんだよ」
「なっ……」
「悲しいかな、かっては『良きライバル』なんて呼ばれていた僕と君の間にも圧倒的な差がついてしまったようだね……」
ムラクモは俯きながら首を左右に振る。
「ふん、大した自信だな」
「試してみるかい?」
「貴様と戦うのは気が進まんが、帝国に仇なす存在ならば捨て置けんな」
「帝国から見切られかかっているというのに、まだ帝国に忠誠を誓うのかい?」
「黙れ! 『疾風』モード! 」
疾風迅雷の素早いパンチを天ノ叢雲はあっさり躱してみせる。
「スピードに乗った良いパンチだ……まさに疾風だね」
「か、躱した?」
「ただ、遅すぎて欠伸が出るかと思ったよ……」
「くっ! 『迅雷』モード!」
相手に接近していた疾風迅雷は鋭いかかと落としを繰り出した。
「……さっきのは多人数相手を想定したスピード特化モード、対して今のは一撃必殺に重点を置いたパワー特化モードと言ったところだね……」
「ば、馬鹿な、確実にこちらのキックが当たったはずだ……」
「受け流したんだよ……」
「受け流しただと? そんなことが……」
ジンライが戸惑う。ムラクモが剣に手を添える。
「そろそろこちらの番かな?」
「 」
ジンライが飛んで距離を取る。ムラクモが感心する。
「ほう、まだ勝負勘というのは衰えていないようだね」
「ノーマルフォームを抑えたくらいで調子に乗るなよ」
「うん?」
「知らんのか! 今の俺様には一つのフォームだけでなく複数の強力なフォームがある!」
「ほう……お手並み拝見といこうか」
「フォームチェンジ! 『バイオフォーム』!」
「色が薄緑色に変化した 」
「面食らっている暇はないぞ! 『狂犬』モード!」
四足歩行になった疾風迅雷が天ノ叢雲に襲い掛かる。
「なっ! ……って驚くと思ったかい?」
「何 」
「フォームチェンジ! 『バイオフォーム』! 『獅子』モード!」
「がはっ 」
疾風迅雷と同様にパワードスーツのカラーを変更した天ノ叢雲が四足歩行の姿勢になり、飛び掛かってきた疾風迅雷を跳ね飛ばした。横っ面を殴られた疾風迅雷は地面に転がる。
「狂犬ごときが獅子に勝てるはずもないよね……」
ノーマルフォームに戻った天ノ叢雲が疾風迅雷を見下ろす。
「き、貴様もフォームチェンジが可能に?」
「同じNSPから作り出されたパワードスーツだ。その辺りにも考えが及びそうなものだけど……まさか思考能力まで鈍っちゃったの?」
ムラクモが顎に手をやって首を傾げる。ジンライが立ち上がる。
「まだだ! 『メタルフォーム』! 『バーニングハンド』!」
「『メタルフォーム』!『フリージングハンド』!」
「炎を一瞬で凍らせた……!」
「火の用心はしっかりしないとね」
「なんの『ライトニングブレイド』!」
「『ブロウイングガン』!」
「がはっ……貴様、剣ではなく銃を……」
疾風迅雷は撃たれた右手を抑えてうずくまる。天ノ叢雲が銃を片手に笑う。
「ははっ、別に剣士を気取った覚えはないけど……このメタルフォームというのは様々なウェポンやマシンを駆使するのに長けたフォームだ。ある物を使わない手はないだろう」
「ちっ、『ジャイアントフォーム』!」
「『ジャイアントフォーム』!」
疾風迅雷と天ノ叢雲は大通公園の中央でともに数十メートルに巨大化する。
「喰らえ!」
疾風迅雷が巨大化させた木を片手に殴りかかる。
「なんとも野蛮な戦い方だね……」
天ノ叢雲が両手をかざすと、疾風迅雷の動きが止まり、苦しそうに呻く。
「! ぐっ……貴様、何を?」
「このジャイアントフォームはただ単純なパワーアップだけでなく、常識をはるかに超越した能力を発揮して戦うことが出来るんだよ……だから超能力を使ってみたよ。相手の動きを封じる念力というやつかな」
「ぐぐぐっ……ぐはっ!」
疾風迅雷はフォームを解除し、元の大きさに戻る。
「なるほど、そういう逃げ方もあるのか。それは勉強になったよ」
天ノ叢雲も元の大きさに戻る。ジンライは相手を睨みながら苦し気に呻く。
「そ、そのまま踏み潰してくるかと思ったぞ」
「そうやってしまうとちょっとつまらない。まあ、このフォームは燃費が悪いから多用したくないというのも本音だけどね」
「その余裕もここまでだ! 『カラフルフォーム』! 『ブルー』モード! ドッポ!」
「ハッ!」
ドッポがバズーカ砲に変形し、青色のスーツに身を包んだ疾風迅雷が両手でそれを持つ。
「カラフルフォーム専用のウェポンを喰らえ! 発射!」
凄まじい水の奔流が飛び出す。あまりの勢いに疾風迅雷が尻もちをつきそうになる。
「ジンライサマ、ダイジョウブデスカ?」
「思った以上の反動だったな……これで奴も吹っ飛んだか? ぐおっ 」
疾風迅雷は前方に倒れ込む。後方から攻撃を受けたからである。疾風迅雷は体勢を立て直して、振り返ると、金色のスーツを着た天ノ叢雲が立っていた。
「凄いバズーカだ、喰らったらやばかったね」
「き、貴様、それは『カラフルフォーム』か? な、なんだ、その色は?」
「ん? 見た通りに『ゴールド』モードだけど?」
「そんな色があるのか?」
「あるんだよ、誰も五色限定とは言っていないからね」
「そ、そう言われると確かに……」
「ちなみにこの色だと、第六感が引き出される……急な砲撃にも対応することが出来たよ」
「な、ならば、『クラシックフォーム』! 『ニンジャ』モード!」
「!」
忍者となった疾風迅雷が複数に分身し、天ノ叢雲に向かって、一斉に飛び掛かる。
「第六感でも分身は見極められんだろう!」
「それなら……こうするまでさ!」
「がはっ……」
「ざっと、こんなもんさ」
西部劇の登場人物のような姿になった天ノ叢雲が拳銃を連射し、忍者の分身集団を一人ずつ撃ち抜いてみせた。膝を打ち抜かれた疾風迅雷はその場にうずくまる。天ノ叢雲は銃口から出ている煙をふっと吹いた。
「そ、その姿は……?」
「『クラシックフォーム』、『ガンマン』モードさ。分身を見極めるのが難しいのならば、まとめて撃ってしまえば良い……」
「な、なるほどな……」
「さて、そろそろ終わりかな?」
「まだだ! 『マジカルフォーム』! 『テンペスタース』!」
「 」
疾風迅雷がステッキを振ると、嵐が巻き起こり、天ノ叢雲が上空に飛ばされる。
「ははっ! その勢いで飛ばされれば、着地もままなるまい! 」
「『マジカルフォーム』! 『メテオリーテース』!」
藍色のローブに身を包んだ天ノ叢雲が杖を振り下ろすと、いくつか隕石が発生し、疾風迅雷に向かって勢いよく落下していく。疾風迅雷は避けきれず、隕石を喰らってしまう。
「どはっ……」
「魔法というものにはまだ僕も慣れていないね……もっと大きな隕石も出せるはずだ……」
ムラクモがゆっくりと地上に降り立つ。
「ぐっ……」
「おっ、あの隕石を喰らっても無事とは、流石にタフだね」
「気に入らん……」
「え?」
「なんで貴様はローブで、俺様はこ、こんな恥ずかしい恰好なんだ 」
「そ、それはなんとも……製作に携わった者の趣味じゃない?」
「くっ……大二郎め、後で見ていろ……!」
「残念ながら後はないよ、ここで決まる」
「奇遇だな! 俺様もここらで決めようと思っていたのだ!」
「ボロボロの身体でよく言うよ……」
「黙れ! 『マンガフォーム』! 『アップ』モード!」
オレンジ色のスーツになった疾風迅雷は、一瞬で天ノ叢雲の背後に回る。
「 」
「もらった!」
「『コミックフォーム』! 『マーベラス』モード!」
「ぐはっ 」
強烈な重力がかかり、疾風迅雷の身体が地面にめり込む。
「マンガに対抗するなら、やはりコミックだね……」
「お、おのれ……」
疾風迅雷は抵抗する力を奪われ、仰向けに倒れ込む。天ノ叢雲が肩を抑えて呟く。
「このフォームも結構、エネルギーを食うね……今後の課題としよう。さて……」
「ぐぬ……」
「残念ながらここでお別れだ、ジンライ」
ノーマルフォームに戻ったムラクモはジンライに歩み寄り、剣を振り上げる。
「……」
「さよなら! 」
ムラクモは驚いた。自身の振り下ろした剣を3メートルほどの体長の持つロボットが受け止めていたからであり、その中心に女性が乗り込んでいたからである。
「大丈夫 ジンライ 」
「ま、舞か 」
思わぬ援軍の登場にジンライは驚きで目を見開く。
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