根っからの暗殺者、ファンタジー世界を往く【凍結】
2
エリダはおれの前に仁王立ちして渋々言った。
「約束は守るんだよ、いいね」
「わぁってるって。何回聞いたと思ってんだ。耳にタコができるっつーの!」
「たこ……? は、なんだかよく分からないけれど、何回言い聞かせても不安だから言ってるの!」
「へいへい」
こんなのは聞き流すに限る。流石のおれも定住者になってまでそこらでほいほい殺し回るリスクは理解しているのだ。ただ、苛つきが限界を超えると思わず手が出そうになるだけで。いい年になってまで短気なのは自覚のある短所だった。
「じゃあ、これ持ってくれる?」
丁寧に風呂敷で包んだ商品を受け取る。代わりに、エリダが愛用している古めかしい杖を手渡した。
「ありがとう。行こうか」
「足元、気を付けろよ!」
今度は彼女がうんざりと苦笑する番だった。
「分かってるって」
魔女の家は今の魔女がやってくる前からあったと言う。長年住人がいないまま雨風に晒され、天井はあってないようなものであったがどうにか修復して住むことにしたそうだ。今では月に一回雨漏りするかどうかといったところ。
庭には彼女の育てたハーブや薬草が所狭しと並んでいる。花の咲いているものもあるが大抵はただの緑の草で、気を付けて見なければ辺りの雑草との区別はつきそうにもない。
庭を含めた家の周囲3メートルはもう森で、洗濯物を干すときは日の傾きと木々の位置を考えないといつまで経っても湿ったままである。
そんな不便な家でも、内装は魔女の趣味で温かみのある居心地がいいものになっている。手慰みに織ったコースターやほぼインテリアになっている書物たち、左右の足の長さが違ってガタガタの椅子……。そのどれもが彼女が長い間使用しているものだから古めかしいが、材料がいいのか物持ちがいいのかまだまだ使えて、彼女の性格が窺えた。
そんな魔女は薬を売ることで生計を立てている。この山には魔女と猟師のじいさんしか家を構えていないのだが、非常に豊かな土の質をしているらしくここでしか採れない草があるのだとか。
それらを薬にして週に二度ほど麓で金にし、必要な食料や雑貨を買って帰る。
しかし、まだ暫くついて行くるなと言い渡されたのは三歳の時のことだった。当時から賢い──誰彼構わず殺すような人間でも年を食っている、と言う意味で──子どもだったけれども、エリダはおれをお世辞にも社会に適応できるような子どもではないと判断し、留守番をさせる方を選んだのだ。
結局五歳になって漸く同行許可が出た。夜にこっそり降りていたことは知られていないので、初めて村を歩いたときはあまりの落ち着きに不審がられてしまったが、元より可笑しな子どもだったから直ぐに違和感はなくなったようだった。
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「約束は守るんだよ、いいね」
「わぁってるって。何回聞いたと思ってんだ。耳にタコができるっつーの!」
「たこ……? は、なんだかよく分からないけれど、何回言い聞かせても不安だから言ってるの!」
「へいへい」
こんなのは聞き流すに限る。流石のおれも定住者になってまでそこらでほいほい殺し回るリスクは理解しているのだ。ただ、苛つきが限界を超えると思わず手が出そうになるだけで。いい年になってまで短気なのは自覚のある短所だった。
「じゃあ、これ持ってくれる?」
丁寧に風呂敷で包んだ商品を受け取る。代わりに、エリダが愛用している古めかしい杖を手渡した。
「ありがとう。行こうか」
「足元、気を付けろよ!」
今度は彼女がうんざりと苦笑する番だった。
「分かってるって」
魔女の家は今の魔女がやってくる前からあったと言う。長年住人がいないまま雨風に晒され、天井はあってないようなものであったがどうにか修復して住むことにしたそうだ。今では月に一回雨漏りするかどうかといったところ。
庭には彼女の育てたハーブや薬草が所狭しと並んでいる。花の咲いているものもあるが大抵はただの緑の草で、気を付けて見なければ辺りの雑草との区別はつきそうにもない。
庭を含めた家の周囲3メートルはもう森で、洗濯物を干すときは日の傾きと木々の位置を考えないといつまで経っても湿ったままである。
そんな不便な家でも、内装は魔女の趣味で温かみのある居心地がいいものになっている。手慰みに織ったコースターやほぼインテリアになっている書物たち、左右の足の長さが違ってガタガタの椅子……。そのどれもが彼女が長い間使用しているものだから古めかしいが、材料がいいのか物持ちがいいのかまだまだ使えて、彼女の性格が窺えた。
そんな魔女は薬を売ることで生計を立てている。この山には魔女と猟師のじいさんしか家を構えていないのだが、非常に豊かな土の質をしているらしくここでしか採れない草があるのだとか。
それらを薬にして週に二度ほど麓で金にし、必要な食料や雑貨を買って帰る。
しかし、まだ暫くついて行くるなと言い渡されたのは三歳の時のことだった。当時から賢い──誰彼構わず殺すような人間でも年を食っている、と言う意味で──子どもだったけれども、エリダはおれをお世辞にも社会に適応できるような子どもではないと判断し、留守番をさせる方を選んだのだ。
結局五歳になって漸く同行許可が出た。夜にこっそり降りていたことは知られていないので、初めて村を歩いたときはあまりの落ち着きに不審がられてしまったが、元より可笑しな子どもだったから直ぐに違和感はなくなったようだった。
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