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女の子を撮影したら、惚れされることができる能力をてにいれた件

執筆用bot E-021番 

監視

『ホントに今朝の電車で、オレのことを尾行してたヤツがいるのか?』
 家に帰って、オレはリリンにそう問い詰めた。


『なんじゃ。ワシがウソを吐いているとでも言うのかえ? っていうか、家なんじゃから、声で話せば良かろうが』


『盗撮とか盗聴とかされてるかもしれないだろ』


 もしそういう機械が仕込まれているならば、オレが学校にいっている間だ。今日より以前は、まだ特務課に目をつけらている心配はなかった。午前中。特務課に尾行されていたのだ。今日からは、家のなかでも用心もしたほうが良い。


『なんじゃ、この家のセキュリティは抜群なんじゃなかったのかえ?』


『それはそうだけど、確かめようはないからな。相手は特務課とかいう連中だし、どんなことをしてくるかわからん。意図的に停電を起こすようなヤツらなんだろ。それに父さんが特務課を招き入れた可能性もある』


 盗撮されている場合は、オレがこうしてスマホをイジっているのもバレる。
 

 さすがに盗撮カメラから、スマホの画面までは確認されないはずだ。スマホの画面には、覗き見防止アプリも入れている。


 自慢じゃないが、盗撮ならオレの得意分野だ。ソファに仰向けに寝転んでいるこの角度だったら、どこにカメラを仕掛けられていても画面のなかを覗きこまれる心配はない。


『たしかに用心するに越したことはないがな。――しかし、ワシの言葉を疑うとは、ワシらは共犯者じゃと言うたじゃろうが』


『だが、オレを尾行してる連中は確認できなかった』


 学校の目立たない女子生徒15人にチャームをかけた。そして「遠くからオレを観察して欲しい。オレのことを尾行している人間がいたら、その人間を撮影して欲しい。そして写真をオレのところに送って欲しい」と、頼んだのだ。


 その監視網を張るために、今日の昼間はチャームの能力をリリンに再確認した。


 オレは帰ってくるさいに、学校のまわりを何度か歩き回って帰宅するにいたった。


 具体的には、近くのコンビニでオニギリを買った。それを公園で食べて、露店でたこ焼きを買った。また別のベンチで、タコ焼きを食べてから、電車に乗って戻ってきた。
 オレが歩き回ってるあいだに、15人の女子生徒に、オレの周りを観察してもらっていたのだが、誰ひとりとして怪しい人物はいなかった、ということだ。


『いっきに15人もの女子生徒とは、ハーレムじゃな』


『べつにイチャイチャしたかったわけじゃない。女子学生なら特務課のそう警戒してないはずだ。学校の周りに学生がいるのは普通だしな』


 しかし――。
 尾行者はひとりも発見できなかった。


『たかが生徒では、尾行者を見つけ出すことなどムリじゃろう。相手は本職の警察官なんじゃからな』


『ンなバカな。透明人間でもないかぎり、ゼッタイにひとりぐらいは見つけられたはずだ』


『ならば午後には、尾行がなかったんじゃろう。今朝にはおったぞ。このワシの目には節穴ではないんじゃ』


『どんなヤツだ?』


『ひとりだけ知ったヤツがいた。ワシが知っているのが1人であって、他にもいたかもしれんぞ?』


『なら、そいつの特徴だけで良い』


『ブロンドの髪の女じゃ。女学生みたいな可愛らしい顔をしておるから、パッと見ただけでは特務課だとはわからんじゃろうな。向こうも警戒してサングラスをかけておったが、逆に目立っておったわ』


「くそっ」
 と、オレはちいさく声を漏らした。


 この作戦がうまくいけば、オレのことを尾行している連中の顔を、すべて確認することが出来たはずなのだ。


 顔さえ確認できれば、次の機会には心構えが出来るし、なんなら特務課相手にチャームをかけることも出来る。


『リリンの言葉を信用するなら、午後は警戒されてたってことかもしれないな』


『警戒とな?』


『特務課の連中は、ある程度チャームの能力について知ってるんだろ。しかも憑人を相手にするエキスパートだ。だったら、オレの周囲にも警戒しているのかもしれん。午後は尾行を止めた可能性がある』


 女子たちを使って尾行者の顔を確認しようとしたオレの作戦を、特務課に見抜かれたわけじゃないだろうと思う。


 見抜かれたわけじゃないとしても、オレの一枚上手を取られたような気がして、なんだか癪だった。


『ニシシ。特務課の尻尾は、そう簡単にはつかませてくれんな』


 ニシシ、というのは文字だが、笑っていることを表現しているのだろう。


『リリンの言うように、相手は本職だからな』


『怖いか?』


『怖いよ。けど、諦めるつもりもない』


 部屋に監視カメラや盗聴器が仕掛けられているんじゃないかと思うと、今も心臓が縮みあがる感触がある。
 気持ちは萎縮するが、やれるだけのことは、やってやろうと思っている。


『チッとばかり、たくましくなったではないか』


 画面に映されたその文面からは、リリンの薄ら笑いが透けて見えるかのようだった。


『カチューシャさんに、鍛えられたからな』


 肉体の話ではない。心の話じゃ――と文字が現われた。
 わかってるよ――とオレは即座に打ちかえした。


『しかし、カチューシャも意外と、頼りにならんのぉ』


 この状況は『LINE』でカチューシャさんに相談している。見つからないように尽力してくれということだった。こんなに早くオレに目がつくなんて、カチューシャさんも想定外だったらしい。


 あの「喫茶シルバー・バレット」に足を運ぶのも、しばらく控えたほうが良さそうだ。


『問題はどこから、オレが怪しまれたか――ってことなんだが。護送車急襲がキッカケとは思えない、っていうのがカチューシャさんの見解だった』


『ってことは?』


『リコかもしれん』


『あの小っちゃい幼馴染か』


『今日は尾行者を発見できなかったと言ったが、正確にはひとりだけ見つけれた。リコだ。あいつ今日はほとんどずっと付きまとって来やがる。しかもオレには気づかれないよう、後ろから付いて来てな』


 今日はまだ戻って来てない。この調子だとオレの部屋にも来そうだ。


『ならばやはりワシの言うた通り、ヤツも特務課の協力者じゃと思うたほうが良いぞ』


『ああ。わかってる』


 リコが特務課の協力者というのはショックだ。オレと敵対する存在になってしまう。


 リコは未成年だし、いくら殉職した刑事の娘でも、やってるのは情報提供ぐらいだろう。


『前にもチッと言うたがな。マズイと思うならば、あやつにもチャームをかけてやれば良い』


『いや。それは出来ないよ。チャームをかけて急に態度が変わったら、特務課の連中に変に思われるかもしれないし』


『なるほど』


『それに前にも言ったと思うけどな。オレはリコにだけはチャームを使うつもりはない』


 殉職した警察官の娘であり、オレのゆいいつの幼馴染。それだけでもチャームをかけるには、躊躇われる。


 さらに言えば、あの正義の魂を、悪魔のチカラで汚染してしまうことは、とてつもない大罪に思えるのだった。


『いちおうチャームが悪いチカラであるということは、自覚してるんじゃな』


 リリンからそう返信があったが、それは無視しておいた。


「さて――と」
 と、オレはスマホをポケットにしまいこんだ。


 もしこの部屋に監視カメラが仕掛けられているのならば、スマホを2機持っていることも悟られるのはマズイので工夫が必要だ。やれやれと思ってキッチンに立つことにした。


 何事もないように装って、オレはキッチンに立つことにした。今日は豚の角煮をつくる予定だ。


 今日は仕事がないと言っていたし、じきにミオンも帰ってくるはずだ。

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